2021.05.26

“Brave New Normal ニューノーマルに挑む” ウェビナーレポート - Part.3 非接触型

Brave New Normal: Creative Trends 2021ニューノーマルに挑む」では、事例を交え、世界各国の電通のグローバルネットワーク(Isobar、dentsumcgarrybowen、360iなど)のイノベーションチームによる見地をまとめまています。またそのレポートをベースに、Dentsu Creative Global Chief Solution OfficerのPatricia McDonaldとIsober Senior Vice President, Chief Innovation OfficerのDave Meekerがプレゼンターを努めウェビナーが開催されました。本稿はウェビナーの内容を一部抜粋し、クリエイティビティとテクノロジーの未来を形作るために共存し、結合し、組み換わる5つのテーマを全5回に分けて紹介します。2020年を教訓とし2021年のニューノーマルに適応するため、果敢に業務改革を遂行し、未来に向けて前進するための着想にお役立てください。ここではその際に取り上げられた第3のテーマ「非接触型」について、引き続き掘り下げていきます。

昨年、世界中でコロナ禍に対応した行動様式の変化が生じました。状況が違っていたら、こうした変化は消費者には、あまり受け入れられなかったでしょう。しかし、安全な日常生活には不可欠で、「当たり前」のものとなりました。安全を確かなものにするために設けられた「ルール」は、成長をもたらす可能性のある革新的な技術アプローチを導入する機会も生みました。

無人サービス:感染の恐怖に際し、ブランドは非接触型のテクノロジーとリモートサービスを採用

さらなる感染拡大の恐怖から、ブランドは直ちに商取引の中核を非接触型にとする技術を導入するようになりました。スターバックスやバーガーキングなどの米国のファーストフードレストランは、完全な非接触型ドライブスルーの開発を競い合いました。一方、小売世界最大手のWalmartの新しいコンセプトストアは、店内でのカスタマージャーニーを促し、接触を最小限に抑えることを目的としています。顧客と従業員の安全は、今や非接触型のカスタマー・エクスペリエンス(CX)設計の核心となっています。商品の配置も変更し、顧客が店内を楽に移動できるようになりました。Walmartはアプリを使って、実店舗とデジタル店舗をシームレスに統合し、2021年末までに800店舗とする予定です。

Isobarはコロナの大流行が始まった際、米国のレンタカー大手Enterprise Rent-A-Carに対して、いち早く顧客のエクスペリエンスから接触を減らすことをサポートしました。車での送迎サービスや、その他のサービスを導入する必要に駆られ、新しいアイデアと戦略を次々と展開、通常は数か月かかるところ、わずか6週間で顧客との接触が元々少ないサービスを完全に接触ゼロのサービスに変え、顧客の安全を確保しました。デンマークのチボリ公園は欧州でも最も古く、人気のある遊園地のひとつです。Isobarは、コロナ禍でも人々がこの美しい遊園地を楽しめるようにするため、デジタルエコシステムを構築しました。チボリ公園は、以前からすでに、ロイヤルティプログラム「Lux」と、アプリを使ったメンバーシップ・サブスクリプション・モデルを立ち上げて、来客対応のデジタル化を進めていました。また、ハロウィンなど季節の催しでは、インタラクティブなARコンテンツを作成し、デジタルライド写真やレストランの予約などの機能を提供していました。パンデミック時にはこのデジタルエコシステムを利用してコロナ禍に対応したサービスを強化しました。人気のアトラクションに行列ができるのを回避するため、予約したライドの時間になると客に通知するシステムなど、ソーシャルディスタンス対策を迅速に導入しました。

Copyright: Tivoli Gardens

2020年のデータにおける無人サービスの伸長はめざましいものでした: Mastercardは、非接触型決済が今年の第1四半期に前年比で40%増加したと発表。また英国の調査会社Juniper Researchは、世界の非接触型決済は2020年の2兆ドルから2024年には6兆ドル近くに達すると予測しています。特に米国ではOEMの決済ソリューションや非接触型カードの取引額の大幅な増加がこの増加の主な要因になると思われます。また、スターバックスは、米国での支払いのほぼ4分の1がモバイルアプリを介して行われていると報告しています。日本でも非接触型決済の導入への取り組みが進んでいます。近年、LINE Pay、PayPayなどのQRコードベースのサービスまたはApple PayなどのICベースのテクノロジーを使用して、モバイルPOS(point-of-sales)の採用を強化するために多額の投資を行っています。LINEリサーチによる世論調査では、現金からモバイルPOSへの移行は、人口の21.5%にまで増大すると推定されました。これは、コロナ流行による非接触型決済の増加によるところが大きいようです。


リモート接客:オンライン相談とデータ駆動型のパーソナライズの相乗的な加速

パンデミックと感染の恐怖を受け入れることを余儀なくされた企業は、時代の変化に対処しようと、これまでにない意欲を示してきました。コロナ以前のCXは、現在、人工知能(AI)と拡張現実(AR)を使用した接客・パーソナライズツールに置き換わり、ユーザーの操作で「バーチャル試着」が可能になっています。この1対1のエクスペリエンスは、リアルタイムデータを使用しリモートによって消費者をサポートすることで、消費者との距離を近づけようとしています。たとえば、フィットネスブランドのLululemonは、2020年にホーム・フィットネスのスタートアップMirrorを5億ドルで買収し、同社の開発したカメラとスピーカー機能付きの鏡を使用することで、より豊かでパーソナライズされたエクスペリエンスを提供し、顧客が自宅でライブフィットネスのクラスに参加できるようにしました。化粧品最大手のL’orealは、「バーチャルお試し」用のプラットフォームを立ち上げました。Burberryは、商品展示で実験的にARを導入しています。他の類似のツールも、各種Webブラウザに完全対応されたことで、はるかに使いやすくなり、アプリの動作にはつきものだったフリクションが軽減されました。

Copyright: Mirror
Copyright: Burberry

リモートコンサルティングはこれから進化を遂げるでしょう。Gartnerの早期予測は、2020年末までに1億人の買い物客がARを使用して購入2020年には10人中4人が顔認識技術を使用、CMO(最高マーケティング責任者)の28%がVRを、27%がARを採用するとしています。1,350人以上のグローバルCMOを対象に、コロナ時代におけるCX(顧客体験)についてのIsobarの調査レポートによると、日本のCMOが最も一般的に使用している先端技術はAI(33%)で、VR(25%)とAR(25%)がそれに続きます。テクノロジーが進化し続け、クリエイティビティが優れたエクスペリエンスを実現するにつれて、日本のマーケッターの42%は、パートナーの代理店には優れたCX戦略のためにイノベーション能力を活用してほしいと回答、40%は、新商品とサービスの開発のためイノベーション能力が必要であると回答しています。つまり、ニューノーマルの基準に合致し、多種多様にパーソナライズされた、非接触型のリッチなエクスペリエンスの登場は、今始まったばかりということです。これらの数値は、より高速でスムーズなエクスペリエンスのための新しいハードウェアが利用可能になるにつれ、増加するでしょう。Isobarなどの電通インターナショナルブランドは、美容、ヘアケア、スキンケアブランドのために、お客様のニーズに合わせて進化し、自宅から商品との安全なインタラクションを再構築する革新的なアプローチを取り入れています。


「ショッパブル」機能:リアルでの接触が制限されているため、ブランドは新しい方法による人とのつながりを模索

ショッパブル機能については、Instagramのライブストリーミングが世界で最も優れた例の1つです。このコンセプトは、中国では類似のプラットフォームですでに成功していましたが、2020年には他の国々でも急激な追い上げを見せました。実店舗でのソーシャルエクスペリエンスが減り、オンラインでのソーシャルコマースが増大したことに対応して、2020年、Instagramはショッピングと動画を中核に最初の大々的なホーム画面のアップデートを開始しました。消費者とのつながりが求められる中、今日、多くのプラットフォームには、消費者を商品や商取引の体験に向かわせる既存のコンテンツがあります。新商品の独占発売や、商品開発にまつわる裏話やニュースにアクセスするための革新的な方法が提供されるようになったのです。たとえば、米小売最大手Walmartは、ライブストリームの利便性に着目し、TikTokなどミレニアル世代に人気があるプラットフォームのインフルエンサーを取り上げました。

Copyright: Walmart

TikTokとInstagramはこの分野の主要なプレーヤーですが、彼らだけではありません。米アパレル大手Foot Locker、米映画大手Warner Brothers、コンサート検索エンジンLive Nationからの投資で立ち上げたライブコマースアプリ、NTWRKは、「文化となりうるスピードでのショッピング」を提供し、ミレニアル世代向けのライブショッピングイベント、バーチャルフェスティバル、限定商品の紹介などを行っています。モバイルファースト、クリエイター主導のショッピング体験の潮流は止む気配がありません。市場調査会社のGlobal Web Indexによる最近のレポートでは、消費者の29%が、エンターテイメント性のあるショッピング体験は購入の可能性が高くなると述べており、24%は、商品のライブデモを見ることが購入決定に役立つと感じています。NTWRKでは、日本人の現代アーティスト村上隆がわずか10分で130万ドル以上を売り上げ、中国では、「独身の日」に、ネット通販の淘宝網(タオバオ)で最初の30分間に75億件の予約注文が殺到しました。


ブランドへの影響

コロナ禍にあって、提供可能なすべてのサービスが大規模に常時提供されていることを、今まで以上に強調すべき時です。もはやブランドは物理的な面で制約を受けることはなく、また顧客と1対1の接客が安全ではないため、距離を保ちつつエクスペリエンスを提供する方法を工夫する必要があります。非接触型決済の場合と同様に、新しいハードウェアが物理的なスペースを「拡張」し、デジタルを組み込むことでカスタマーサービスのスケーラビリティが可能になります。ブランドは、顧客それぞれのあらゆる行動と関心事を正確に特定するために、実際のカスタマージャーニーを詳細にマッピングし、テクノロジーをいつどこに導入するべきかを知る必要があります。適切なタイミングで的確に導入できれば、コロナ禍を乗り越えたあとでも、大規模で卓越したカスタマーサービスの新たな基準を設定することが可能です。
実店舗は今やオンライン消費者への商品のデモや情報を提供するハブであり、スタジオのような役割を果たす様になりました。動画コマースの人気が高まるにつれ、小売業の非接触型化が進み、実店舗はスタジオとしての役割を、スタッフは知識豊富なプレゼンターとしての役割を果たすようになりました。従業員の役割の焦点が商品の専門家に移っていく中で、ブランドは従業員の教育訓練についても考え直す必要があります。店舗スタッフはエバンジェリストとしての重要な役割があり、その目的のために用意されたスペースで、サービスを提供するブランドのインフルエンサーとして成長する必要があります。適切な従業員のトレーニングとサポートの評価が重要であり、デジタルテクノロジーとアンバサダー制度により保証されていなければなりません。評価にサポートが必要な場合、電通アイソバー(現 電通デジタル)は幅広い業界のトレーニングプログラム作成の経験があり、多様なニーズに全力で応えることができます。
リアル空間でバーチャルプロダクトの試着がもっとできるようになると、消費者はより多くの商品知識を得られるようになり、ブランドは消費者からより高いレベルの信頼が得られます。近い将来、パーソナライズされたホストを使用したライブストリーミングコマースが席巻し、よりスマートで、よりパーソナライズされたエクスペリエンスが実現するでしょう。ARがアプリからブラウザへと移行し、消費者側のフリクションを減らして標準的になり、また次世代のウェアラブルが進化し続ければ、より高度なエクスペリエンスが可能になるでしょう。IsobarのイノベーションアクセラレーターNowLabは、ブランドがテクノロジーをブランド固有のニーズに合わせて大規模に実装できるようにサポートします。ニューノーマル時代、そしてその先の未来に向け、ビジネスとブランドを進化させる方法についてのご質問やご相談は、ぜひ弊社までお問い合わせください。

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