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2021.05.19

“Brave New Normal ニューノーマルに挑む” ウェビナーレポート - Part.2 リアル空間の私たち

「Brave New Normal: Creative Trends 2021ニューノーマルに挑む」では、事例を交え、世界各国の電通のグローバルネットワーク(Isobar、dentsumcgarrybowen、360iなど)のイノベーションチームによる見地をまとめまています。またそのレポートをベースに、Dentsu Creative Global Chief Solution OfficerのPatricia McDonaldとIsober Senior Vice President, Chief Innovation OfficerのDave Meekerがプレゼンターを努めウェビナーが開催されました。本稿はウェビナーの内容を一部抜粋し、クリエイティビティとテクノロジーの未来を形作るために共存し、結合し、組み換わる5つのテーマを全5回に分けて紹介します。2020年を教訓とし2021年のニューノーマルに適応するため、果敢に業務改革を遂行し、未来に向けて前進するための着想にお役立てください。ここではその際に取り上げられた第2のテーマ「リアル空間の私たち」について掘り下げていきます。


Part.1の「バーチャルエクスペリエンス・エコノミー」でもご紹介したように、バーチャルエコノミーの出現と並行して、コンテンツのクリエイター、サプライヤー、消費者間の境界線が曖昧になっています。この「近さ」を促進している要因は以下の3つで、近い将来、これらの要因はさらに重要な役割を果たすことになるでしょう。

● クリエイターコミュニティ:新たな独立系クリエイター、新たなプラットフォーム、収益化モデルを用いたファンコミュニティ。
● 「リアルニュース」の台頭:クリエイターが「リアル」を強く希求。
● コミュニティに直結:サプライチェーンの変化。企業と消費者の間に存在する仲介者が不要に。

クリエイターコミュニティ

クリエイターコミュニティは以前から存在していましたが、規模はずっと小さなものでした。TikTok、TwitchSubStackTeachableなどの新しいツールやプラットフォームが登場し、消費者にコンテンツを届けるための一般的な方法が確立したおかげで、コミュニティ全体の規模は大幅に拡大しました。それだけでなく、クリエイターが独自の仮想通貨を作成できるプラットフォームCreator Coinや月額サブスクリプションでファンが好きなクリエイターに資金を提供できるPatreonなどの新しい収益化モデルは、クリエイターが実現しやすいビジネスチャンスになっています。こういった最近の動きにより、もともと他の目的で設計されたプラットフォームがその機能を大幅に拡張し、商業的な目的に転用される余地も生まれました。

クリエイターコミュニティの拡大は、新商品の発売手法に大きな影響を与えています。たとえば、Reebokのクラウドファンディング・イニシアチブFirstPitchでは、新しいスニーカーのデザイン案は、愛好者から一定数以上の支持が得られた場合のみ製造されます。この新しい生産モデルは、商品を製造する前にリソースをよりスマートに割り当て、最終的に廃棄処分となる余剰在庫の数を減らすことを目的としています。また、Gucciはクリエイターコミュニティの積極的な活用に乗り出しました。同社はゲーマー向けの限定版ウォッチをリリースしており、eスポーツ消費者セグメントにアピールすることで、ファッションリーダーが変化しつつあります。ニュースレターサービスSubStackは、トップクリエイターの年収は2019年時点で5万〜10万ドル、またPatronでは、2019年時点で累計400万人の支援者が10億ドル以上のコンテンツに資金を提供しているとしています。クリエイター人口は世界に5,000万人、そのうち少なくとも200万人はクリエイターとしてフルタイムで活動しており、コンテンツの需要・供給の関係から、基本的に高収益のキャリアになりつつあります。

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Copyright: Reebok First Pitch

 

「リアルニュース」の台頭

パンデミックの最中に、消費者の好むコンテンツのタイプに興味深い変化が見られました。有名人の「完璧」なファッションスタイルなどではなく、飾り気のないリアルな、等身大の生身の人間やその資質、活動などが好まれるようになったのです。たとえば、Instagramでは映画のような品質のコンテンツが重視されますが、対照的にTikTokのコンテンツは、パーフェクトさよりも、会話のネタになるトピックに焦点を当てた、より「ホームメイド」感溢れるものが中心です。この対照的なスタイルを目の当たりにして、他のプラットフォームは迅速に対応し、マーケティングの素材を発掘しました。例えば、Vogue英国版7月号の表紙を飾ったフロントラインワーカーや、Burberryの2020年クリスマスキャンペーンで殺風景な街の中が舞台となったことなどは、コンテンツをめぐってどんな変化が起き、何が脚光を浴びているのかを示す実例の一つです。これについて、Vogue英国版編集長Edward Enninfulは、「現代のヒーローは今までとは違います。誰を尊敬し、賞賛するか、大きな変化がありました。そしてこの新しいヒーローたちに脚光を当てる必要があります。彼らは英雄として、社会を支えてきました。平凡であることは、素敵。私たちは世界的な危機を経験し、ようやくそのことに気がついたのです」とコメントしています。

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Copyright: British Vogue
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Copyright: Burberry Christmas 2020

 

コミュニティに直結

消費者の好みだけでなく、サプライチェーンもパンデミックの間に劇的な変化を遂げました。そして消費者と生産者の間に、以前は不可能だったような、より直接的な関係が築かれるようになりました。地元の書店を応援するためのサイトBookshop.orgでは、地元の独立系書店がそれぞれのバーチャル店舗を出店・管理し、お薦めの本を紹介し、売り上げの配当を得ます。フィンランドのスーパー(チェーン店)Alepaでは、消費者がチャットボット機能を利用し、直接各店舗に入荷して欲しい商品をリクエストできるようになりました。地域社会との有意義なコミュニケーションを通じ、地元のニーズを満たすことが、ビジネスではより重要になってきています。消費者と生産者の関係はより深くなり、よりパーソナライズされるようになってきました。この分野に関連して電通グループの360iはSpotifyの「オフライン・プレイリスト」の作成に関わりました。米国ニューオーリンズ市の要請に応じ、同市のリスナーの好みに関する数年分のデータから街のサウンドに相応しい曲を選曲し、リスト化しました。その後「オフライン・プレイリスト」に入った曲は、ニューオーリンズを象徴するジャズの殿堂「プリザベーション・ホール」ですべて収録されました。


Alepa’s Block Wish Campaign by Carat Finland


地元に着目することが、消費者に対する新たなストーリーテリングになりました。観光業界では旅行が制限されたことを受け、遠く離れた目的地ではなく、近場でのエクスペリエンスの発見に消費者を誘導する傾向がはっきりと見られました。2020年9月のフォーブスの記事は、「航空会社では多くの便が欠航し、各国の旅行制限が未だ解除されていない中で、多くのアメリカ人は、他者との交流を最小限に控え、地元に目を向け探索するようになった」と報じています。2020年4月の調査によると、消費者の80%は、コロナ以降、地元のコミュニティに親しみを感じているとしており、88%はロックダウンが解除された後もそれが続くと考えています。これは消費者にとって「リアル」な地元のコミュニティがいかに身近に感じられるようになったか、そして同時に、仮想世界でどれだけの時間を費やしているかを反映してもいます。これは今まで見られなかった二面性です。

ブランドへの影響

「中身が大事」に:パンデミックにより、私たちは自分の「行動」の本質的な価値について考えさせられました。最高峰のプレミアム・ブランドや出版物であっても在宅勤務に適応することを余儀なくされ、コンテンツ用に新たな、より厳格でない視覚言語を作成するようになりました。また、コンテンツのプラニングの手法をアップデートし、コロナ以前のメッセージングを段階的に廃止し、今日の世界状況にさまざまな配慮を怠らないようになりました。

熱心なファンとのパートナーシップ:ブランドが適切なプラットフォームを通じてブランドを愛するコミュニティとパートナーシップを組み、ともに価値を創造するための絶好の機会が生まれました。Patreon、Twitch、SubStackなどには多くの固定客を生み出すだけでなく、彼らの信頼を育み関係性を深めることができます。クリエイティビティの「民主化」が、今日のクリエイターを支援すると同時に、明日のクリエイターにも参画を促すようになったのです。

ビッグデータが地元の「個性」を浮き彫りに:ビッグデータは、エクスペリエンスを標準化するだけでなく、地元のコミュニティとの絆を形成し、コンテンツを有効化し、有意義な対応をするためにも使用できます。

クリエイター主導のプロジェクトが台頭し、またそれに投資したい人が増えていることから、それらは合理的な投資先となっています。クリエイターエコノミー向けに特化した金融商品やサービス、ジャストインタイム生産方式なども共に考案され、価値を最大化し、環境への影響を最小限に抑えることができます。インフルエンサーやクリエイターコミュニティを通じた電通アイソバー(現 電通デジタル)のソーシャルメディア・プラクティスやエクスペリエンスは、プラットフォームの種類を問わず、ファッション、ビューティー、ファイナンス、ヘルスケアなどさまざまな業界向けのコンテンツ作成で市場をリードしています。その中で2020年には、消費者と経済の変化を反映した製品とサービスの開発、ブランドの価値の最大化、ビジネスを成長させるためのパートナーとしての専門知識が認められ、電通アイソバー(現 電通デジタル)は、アジア最大の広告専門誌『Campaign Asia』が主催するアワード「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2020」にて、「ソーシャル・メディア・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」金賞を受賞致しました。ローカリゼーション、クリエイター戦略、またクリエイターエクスペリエンスなどの効果的なプランニングは、弊社にお問い合わせください。

 

カーダー ジェネッサ Jenessa Carder

CXストラテジー本部付 シニアエグゼクティブストラテジープランニングディレクター
電通アイソバーにて、消費者体験(CX)戦略担当バイスプレジデント。美容、CPG、ハイテク、ヘルスケア、フィットネスなど様々な業界の世界中のクライアントに対して、キャンペーン、製品発売、デジタルエクスペリエンス、トランスフォーメーションプロジェクトにおいて10年以上のコンサルティング経験を持つ。

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