2022.05.13

アプリグロースに欠かせない2つのSDK「AppsFlyer」と「Amplitude」最適な使い分けと基礎知識

アプリのSDK(Software Development Kit)には様々な種類・機能・役割があります。各SDKの特性を把握し、目的に合わせて正しく使用することで、コスト最適化や施策効率の向上を狙うことができます。本記事では、アプリマーケティングにSDKが必要な理由に加え、代表的なSDKであるAppsFlyerとAmplitudeの基礎知識と活用例を解説します。

※この記事は、2022年3月に開催したウェビナーを採録し、再構成したものです。

アプリマーケティングにSDKが必要な理由

電通デジタル 松原匠(以下、松原): SDKは、スマートフォンアプリ(以下、アプリ)を開発していくためのプログラムなどをまとめたツールキットのことです。

アプリマーケティングのための広告効果分析やプロダクト分析を行うには、アプリにSDKを搭載する必要があります。SDKを搭載していないと外部データが取得できず、ユーザーがアプリをダウンロードする前後でセッションが途切れてしまいます。

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セッションが途切れると、例えばアプリストアへの流入経路が広告なのか、オーガニック(広告以外からの自然流入)なのかを把握できません。さらに、流入経路ごとのインストール後のイベント(課金や申し込み)到達率の把握、アプリ内のユーザー行動分析もできません。データに基づいたCRM施策もできないので、ログインしないユーザーへのプッシュ通知、新商品のプッシュ通知などもできなくなります。これらのマーケティング施策を可能にするものがSDKなのです。

アプリのSDKにはさまざまな種類があり、SDKごとに強みを持つ領域が異なります。本記事では広告効果計測の代表的なSDKである「AppsFlyer」と、プロダクト分析のSDKである「Amplitude」について、AppsFlyer Japan株式会社 渡辺エリナ氏とAmplitude, Inc. 米田匡克氏に解説していただきます。


広告効果計測・分析に強いSDK「AppsFlyer」

AppsFlyer Japan 渡辺エリナ氏 : AppsFlyerはアトリビューション分析のためのSDKとしてグローバルシェア70%を誇り、100%完全独立・公平性のあるSDKです。

アトリビューション測定はなぜ重要か?

アプリのユーザー獲得のためには、デジタル広告、インフルエンサー、自社のSNS、オウンドサイト、テレビCM、屋外広告、店頭といったオンライン、オフラインのプロモーション施策があります。アトリビューション(attribution)とは「帰属・起因」という意味で、どの施策がどれぐらいユーザー獲得に貢献したのか、その貢献度合いを示します。

アトリビューション分析がなければ、どの流入経路のどの施策がユーザー獲得に効果があったのか判断できません。施策の成果を正しく判断できなければ、次の施策でどの流入経路への投資を強化すべきかを見極められずに、非効率的な投資になりかねません。

アトリビューション計測・分析用SDKを使うと、流入経路ごとのインストール数や、その後、課金などの収益につながる行動をしたユーザー数が明らかになります。

アトリビューション計測・分析のSDKを選定するときのポイント

アトリビューション計測・分析用SDKは、AppsFlyer以外にも選択肢があります。選定する際には、次の4点を検討してください。AppsFlyerの特長も併記します。

・正確で公平な計測か

・外部ツールと連携できるか

・サーバーの安定性はどうか

・セキュリティ、プライバシーは強固か

まず、正確で公平な計測データを提供できる体制と技術力があるかどうか。アプリの技術は進化が激しく、正確にデータを計測し続けるには、進化を採り入れ開発する技術力が必要です。またアトリビューションの計測において、公平に評価しているかどうかが重要です。AppsFlyerは前述のとおり、広告媒体となるメディア企業から独立しており、公平な判断ができます。

外部ツールとの連携という点では、AppsFlyerは250社以上のBIツール、MA(マーケティングオートメーション)ツール、データ分析ツール、テレビCM分析ツール、CDP、クラウドパートナーなどと連携しています。

サーバーの安定性を評価する必要があるのは、サーバー停止による計測漏れを防ぐためです。AppsFlyerはAWSを利用しており、過去に大規模なサーバー障害を起こしたことはありません。

そしてデータを扱う機関として、セキュリティとプライバシーは重要です。AppsFlyerはアプリ業界で最も強固なプライバシーとセキュリティの認証を有しています。

AppsFlyerの活用例

AppsFlyerの活用例を次の3つの視点から紹介します。

・オフラインとアプリの連携

・Webサイトとアプリの連携

・顧客IDの統合

これらを可能にするのがAppsFlyerの「OneLink」です。OneLinkは、ユーザー端末のOSを自動的に判別して、適切なOSのアプリストアへリダイレクトする技術です。

まず、オフラインとアプリの連携例です。2022年2月14日に行われたスーパーボウルのTV中継番組内で、暗号資産事業を手がける「Coinbase」が、画面にQRコードが浮遊する90秒CMを流しました。

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QRコードをスマホで読み込むと、プロモーションサイトに遷移します。サイト上にあるボタンがAppsFlyerのOneLinkです。iPhoneユーザーならApp Storeに、AndroidユーザーならGoogle Playに遷移して、アプリをインストールできます。オフライン(TV)広告からアプリへスムーズに誘導する点で、非常に優れた広告手法として注目を集めました。

次に、Webサイトとアプリの連携例です。OneLinkには、Webサイトとアプリの連携をしやすくする「ディープリンク」という機能もあります。Webサイトから特定のアプリ内ページに誘導する機能で、期間限定のキャンペーンなどを実施するときに便利です。

例えば、あるホテルが限定キャンペーンを実施したとします。OneLinkのディープリンクを使うと、ユーザーはWebサイトの広告をクリックするだけで、アプリ内のキャンペーンページを表示できます。これにより、アプリ内のキャンペーンページがどこにあるのか分からず離脱するユーザーを減らすことができます。

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最後に顧客IDの統合です。通常、ユーザーは1人でも、アプリ、Webサイト、店頭など複数のタッチポイントごとに、エンゲージメントは個別に計測されます。しかし、SDKで会員IDを割り振れば、すべてのエンゲージメントを1人のユーザーとして管理できます。例えば店頭のPOSデータに会員IDが含まれていれば、顧客IDを統合して、1つのつながったジャーニーとして分析できます。

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最後に顧客IDの統合です。通常、ユーザーは1人でも、アプリ、Webサイト、店頭など複数のタッチポイントごとに、エンゲージメントは個別に計測されます。しかし、SDKで会員IDを割り振れば、すべてのエンゲージメントを1人のユーザーとして管理できます。例えば店頭のPOSデータに会員IDが含まれていれば、顧客IDを統合して、1つのつながったジャーニーとして分析できます。


プロダクト分析に強いSDK「Amplitude」

Amplitude, Inc. 米田匡克氏 : 続いて紹介するのは「Amplitude」です。Amplitudeは、ユーザーインサイトを把握できるSDKであり、ユーザーがアプリをどう使っているのか、プロダクトのどこを伸ばすべきかを分析できます。用途としては、広告の効果測定、UX改善、マルチプラットフォーム計測などで利用できます。

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Amplitudeは、ユーザーのデータポイントが多いほどユーザーの行動を把握しやすくなるため、外部の様々なサービスと連携しています。AppsFlyerとも連携し、多くの広告データを取得しています。

広告計測の活用例

まず、広告計測における活用について紹介します。Amplitudeの計測例として、例えばユーザーが広告キャンペーンに接触する前の2週間、接触した後の2週間といった形で購買のコンバージョンの変動を見ることができます。

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上記の図の例では、広告キャンペーン接触前は平均1.16回ぐらいでコンバージョンしていたところ、キャンペーン初接触で一気に上がり、その後2週間の間にコンバージョンが平均1.66回といった形で、1.4倍向上していることがわかります。クーポンを配布した後1回だけの購買では利益率が下がりますが、その後の継続的な購買につながれば将来的にLTVを上げられます。

そのLTVについては、約1年と長期にわたる測定ができるので、真に効果がある施策を見極めることが可能です。

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上記のキャンペーン青とキャンペーン赤を比較した場合、時系列とともにLTVがどのように変わるかが分かります。39日目までは、キャンペーン青のLTVが高いですが、その後を見るとキャンペーン赤が逆転しており、長い目で見るとキャンペーン赤のほうが効果が高いことが分かり、マーケティングの予算をどちらに投資するべきかが判断できます。

さらに、キャンペーンごとにリテンション効果の測定ができます。

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左図は単一キャンペーンのリテンションですが、どのキャンペーンが最も効果があるのかわかりづらいです。リテンションの比較もAmplitudeでグラフ化できるので、どのキャンペーンが効果があったのかすぐに分かります。

ユーザー行動からUX改善を行う

獲得した後のユーザーの行動を計測し、サービス改善やUX改善に活かした事例として、「2回目以降の購買ユーザーのコンバージョンを上げたい」という命題に対して、Amplitudeでどのように解決策を導いたかを紹介します。

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まず、ユーザーの行動からクラスタモデリング(自動)をします。その中で、2回以上の購買をしているユーザーの含有率が高い「クラスタ4」に注目しました。クラスタの特徴量を比較してみたところ、「閲覧履歴を見る」行動は全体平均1.38回だったのに対し、クラスタ4は平均9.14回となっており、平均に比べて7倍以上閲覧履歴を見ていることが分かりました。

さらにこのクラスタのカスタマージャーニーを調べました。Amplitudeでは、購買からさかのぼって、アプリ、Web、オフラインを含めてどのような回遊をしたのかを見ることができます。ここからマイクロコンバージョンを調べてみると、約50%が「閲覧履歴」から購買に至っていました。

そこで、「閲覧履歴をアクセスしやすいところに配置すればコンバージョンが上がる」という仮説を立てました。アプリのボトムメニューに対して、ファネル分析をしてどれが最もコンバージョン率が高いのかを分析したところ、やはり閲覧履歴のコンバージョン率が高いことが分かりました。そして、メニュー内の「お気に入り」を「閲覧履歴」に置き換えて、アクセスしやすくしたのです。

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A/Bテストを行った結果、カート投入率、コンバージョン率と利用率の重要指標すべてが改善したことが分かり、売り上げ向上に貢献しました。


誰でもデータ分析ができるように

紹介した例のように、正しくトラッキングして統計分析すると、改善ポイントが簡単に導き出せます。Amplitudeの目標は、SQLを使わず、ノーコードで誰もがデータ分析官になれることです。導入したクライアント企業では、データサイエンティストやエンジニアだけでなく、SQLを書けないマーケターや営業の方もデータ分析に取り組めるようになっています。

今回は一部の機能を紹介しましたが、他にも様々な機能があります。複雑なデジタル環境において、ユーザーのインサイトを把握することはなにより重要で、プロダクト分析が役立ちます。


アプリマーケティングのフェーズとSDK

松原 : アプリマーケティングには、ユーザー獲得、利用開始、継続利用という3つのフェーズがあります。今回紹介した内容を参考にしながら、AppsFlyerとAmplitudeは次のように使い分けると良いでしょう。

・ユーザー獲得:AppsFlyer
・利用開始(チュートリアル突破、会員登録):Amplitude
・継続利用:Amplitude、AppsFlyer

SDKを適切に活用し、データ取得とデータ分析をすることで、アプリの継続的な成長につなげることができます。SDKの得意領域、フェーズを正しく把握し、目的に合わせて複数のSDKを組み合わせて活用しましょう。

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