2022.06.24

Cookieレス時代のマーケティングにData Clean Roomが有効な理由

世界的にプライバシー保護を重視する動きが強まっています。Cookieの利用制限も進む中、マーケターは顧客のプライバシーに配慮しながら、ニーズに対応したマーケティングを実行する必要があります。

そうした状況で重要性が高まっているのが、継続的なマーケティングのPDCAを実現するデータ基盤「Data Clean Room」です。本稿では、電通デジタル プラットフォーム部門 荒川拓と五十嵐祐介がData Clean Roomの魅力や活用事例を紹介します。

※この記事は、2022年4月に開催された「Snowflake Media Data Cloud Summit」のセッションを採録し、再構成したものです。

Data Clean Roomとは何か

電通デジタル・荒川 拓(以下、荒川): 現状のデジタルマーケティングにおいては、顧客のプライバシーに配慮したうえで、セキュアにデータを活用していくことが求められています。

Data Clean Roomが生まれた背景の一つとしてCookieレスの動きがあります。

Cookieについては、Apple社がSafariに搭載する「ITP(Intelligent Tracking Prevention)」などのトラッキング防止機能を皮切りに、すでに影響が出始めています。スマートフォンごとに固有のオプトアウト可能な広告識別子についても同様です。iOS端末に付与される「IDFA(Identifier for Advertisers)」についても規制が始まり、Android端末に付与される「AAID(Google Advertising ID)」についても今後利用方法が変わる可能性があります。

グローバルに目を向けると、GDPR(EU一般データ保護規則)や、カリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)などのような個人データ保護強化の法的枠組みが整備されています。日本でも2022年4月1日に改正個人情報保護法が施行されました。

こうした流れもあって、1stパーティデータ(自社の顧客や自社サイト訪問者から同意を得たうえで収集・保有しているデータ)の活用が重要になっています。その際に、1stパーティデータのセキュアな分析、活用を支援するプラットフォームがData Clean Roomです。「Clean Room」とは「無菌室」「防塵室」などの意味。データの統合や分析といった特定の目的のために、限られた人がアクセスできる環境を指します。

大手広告プラットフォームは、個人にかかわるデータを事業会社や広告会社に直接提供することが難しくなっています。そこで、Data Clean Roomを整備することによって、広告プラットフォームやメディアが、クライアントごとにセキュアな環境にデータを置き、事業会社や広告会社が間接的にアクセスできるようになります。

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ポイントはセキュアにデータを連携・分析できる点です。Data Clean Roomでは、基本的に分析の集計結果しか取り出せません。ルールに従った限定的な環境で、個人データのプライバシーを保護しつつ連携することで、自由に分析を行うことができます。

これにより、企業は自社で保有する1stパーティデータに加え、プラットフォームやメディアが保有する2ndパーティデータ、あるいは電通グループが保有するデータを活用することが可能になります。

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Data Clean Room活用の3つのメリット

Data Clean Roomのメリットは、次の3点にまとめられます。

1つ目は「IDの名寄せ」[注1]が大規模にできるという点です。従来の限られた分析環境では、特定のWebサイトや、特定のコンテンツにアクセスした人しか名寄せできないという制限がありました。Data Clean Roomでは、マルチスクリーン、クロスデバイスといった広範囲にわたり大規模な名寄せを行うことができます。

2つ目は、メディア側の属性が活用可能になったことです。3rdパーティCookieを使用していたDMP(Data Management Platform)のような環境では、推計、あるいは欠測のある情報が多くありました。Data Clean Roomではプラットフォーム側の属性がしっかり分析に適用できるようになっています。

3つ目は、データを蓄積して活用できることです。プラットフォーム側のIDを使えること、複数回のキャンペーンデータを蓄積し、時系列で分析することも可能なケースが多いです。

電通デジタルを含めた電通グループでは、長年Data Clean Roomに関する取り組みを進めており、すでに450案件以上の実績を有しています。Data Clean Roomを活用した分析事例として、3つの事例を紹介します。


プラットフォームデータを活用した分析事例

電通デジタル・五十嵐 祐介: 1つ目は、プラットフォーム/メディアの属性データを活用し、詳細なユーザー像の分析を行った事例です。

ユーザーIDに紐づいたデモグラフィックデータ、行動データ、機械学習などで推計したオーディエンス拡張データといった、プラットフォーム/メディアの属性データを活用して、ユーザー像の分析を行います。

例えば、あるサービスの新規ユーザーと既存ユーザーで、興味・関心の違いや行動の違いを比較します。これにより、新規ユーザーの属性はどのような特徴があったか、どういうメッセージが効果を上げたか、といった分析ができ、次の施策への示唆を得ることができます。

ユーザー像の分析は、媒体資料や広告レポート、Web解析ツールなどでも可能です。Data Clean Roomの特徴は、より柔軟に、かつセキュアに分析できる点です。

実際に、あるクライアントの事例では、広告出稿に対し、広告の接触者と非接触者で、属性の違い、効果の違いをリアルタイムでダッシュボードに可視化し、すばやい意思決定が下せるように支援しました。

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1stパーティデータを連携した分析事例

2つ目は、クライアントの1stパーティデータをData Clean Roomに連携して分析した事例です。

自社アプリのインストールデータや、会員登録データといった1stパーティデータと、サイト来訪やコンバージョンといったデータをData Clean Roomに連携し、広告プラットフォーム/メディアの接触データを掛け合わせて分析を行うことで、より深い分析が可能になります。

例えば、あるクライアントでは、1stパーティデータとして、アプリのインストールデータをData Clean Roomに連携しました。これにより、プラットフォーム全体のユーザー像と比較して、どういうユーザーがアプリを利用しているかというのを、興味・関心の項目などを使って明らかにしました。

アプリのユーザーはテクノロジー領域や自動車など、メカニカルな領域の興味・関心が高く、家庭的な領域での興味・関心が低いということがわかりました。また、有料/無料会員別にどういう興味・関心があるのか属性分析も実施。自社ビジネスのKPIに応じて分析しています。

以上はターゲット分析の事例ですが、効果検証のためにも使うことができます。メディアのコンテンツ接触や広告接触が、会員登録や購買にどういう効果を果たしたのかを分析した実績も豊富にあります。

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外部データと連携した分析事例

3つ目は、外部の購買データやテレビの視聴データ、位置情報データと連携した分析や効果測定の事例です。

1stパーティデータだけでは効果測定に少しデータが足りないというときに、Data Clean Roomに外部データを連携することで、より幅広いKPIに対応した分析が可能になります。電通デジタルが提供可能な外部データには、購買データ、テレビの視聴データ、位置情報データなどがあります。

例えば、購買データではスーパーやコンビニの購買情報が取得できます。それらを連携すれば、自社コンテンツと実際の購買がどのように関係しているかを分析できます。

また、テレビの視聴データについては、統合マーケティングプラットフォーム「STADIA(スタジア)」[1]を通じてデータが取得できます。CM接触者がどのような購買行動をとったかなどの分析が可能です。

そして、位置情報データとして、GroundTruth社の位置情報を用いることで、実際にそのサービスに接触した人が来店したかどうかということを計測可能です[2]

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クラウド型データウェアハウス「Snowflake」との連携をワンストップに支援

荒川: Data Clean Roomを使って以上のような分析を行うには、大きく2つのパターンがあります。プラットフォーム事業者のData Clean Roomと連携するためのデータ分析基盤を用意するか、データ分析基盤それ自体をData Clean Roomのように扱えるようにすることです。後者においては、データ分析基盤自体にプライバシーフィルター機能など、Data Clean Roomの要件を満たす機能が搭載されている必要があります。いずれにおいても、1stパーティデータが格納されたデータウェアハウスとデータ分析基盤の連携は不可欠です。

Data Clean Room導入や活用を考えた際にはさまざまな選択肢がありますが、一つの選択肢が、Snowflake(スノーフレイク)です。

Snowflakeは、2012年にシリコンバレーで設立されたSnowflake社が提供するクラウド型データウェアハウスです。クラウドテクノロジーをベースに設計されたデータウェアハウスであるSnowflakeを導入すれば、企業が保有する膨大な1stパーティデータを低コストかつ無制限のクラウドストレージで一元管理できます。加えて、別のSnowflakeとセキュアに連携できる独自の機能を有することで、現在、プラットフォーム事業者が提供しているData Clean Roomに近い機能を提供することが可能になります。

電通デジタルでは、Snowflakeの導入、活用、運用に必要なあらゆるソリューションをご用意しています。例えば、どのようなデータを取得するかというデータ戦略から、データの「抽出(Extract)」「変換(Transform)」「書き出し(Load)」を担う「ETL」と呼ばれるツールを連携し、Snowflakeを活用したデータ分析環境の構築まで、ワンストップで支援することが可能です。

そして、BI(ビジネスインテリジェンス)のダッシュボードのような可視化ツールと連携し、意思決定を支援することや、AI/機械学習と連携した顧客分析、あるいは新しいサービスや商品の開発への活用も可能です。もちろん、直近のビジネスのボトルネックを探すといった特定の目的の分析に活用することもできます。

さらに、データ分析基盤構築の先にある、データ分析・活用、顧客への価値還元、顧客体験の最適化といったテーマについても、電通デジタルは豊富なノウハウ、実績を有しています。

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マーケティングにおけるデータ活用に課題を感じている担当者の方は、お気軽に電通デジタルまでお声がけください。


脚注

注釈
1. ^ 名寄せとは、複数のデータベースに存在する重複した顧客データを、氏名・住所・電話番号などの情報を手がかりに、1人につき1つの顧客データとして統合する作業のこと。

出典
1.^ "電通、統合マーケティングプラットフォーム「STADIA」の正式版を4月から提供開始" . 電通(2017年3月31日)2022年5月14日閲覧。

2. ^ "電通デジタルと電通、デジタル広告によるGroundTruth特許技術を活用した実店舗への来訪効果を 正確に評価するソリューション「True Store Visit™」を開発・提供". GroundTruth(2018年12月13日)2022年5月14日閲覧。

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