メインコンテンツに移動

2022.06.23

KADOKAWA、TVer、Snowflake、電通の各氏に聞く データを活用し新規ビジネスを創出するために必要なこと

2022年4月に開催された「Snowflake Media Data Cloud Summit」から、メディアビジネスにおけるデータ活用について、有識者の方々に集っていただき行ったパネルディスカッションを採録し、再構成してお届けします。


w-i-t-t-l-d-a-c-n-b_01

デジタルシフトがもたらすメディアの変化

ファシリテーター・KT氏(Snowflake株式会社 シニアプロダクトマーケティングマネージャー兼エヴァンジェリスト。以下、KT):最初に、皆様が感じる近年のメディア業界の変化を教えてください。

塚本圭一郎氏(株式会社KADOKAWA Connected Chief Data Officer。以下、塚本):KADOKAWAグループでは、出版事業が紙から電子書籍、電子プラットフォームへとデジタル化を積極的に進めています。他方、デジタルで出発したニコニコ動画事業は、2012年から始めた「ニコニコ超会議」[注1]が定着するなど、デジタルからリアルへの展開や、デジタルとリアルが交錯するミックスメディアへと進んでいます。

布瀬川平氏(株式会社電通 ラジオテレビビジネスプロデュース局 エグゼクティブ・プロジェクト・ディレクター。以下、布瀬川):私の専門である広告ビジネスでは、広告を出稿したメディアからフィードバックデータを得たいという、広告主からの期待が大きくなっています。例えば、マスメディアの広告を見たユーザーは、SNSでどのようなリアクションやアクションを起こしたのか。どうすればコンバージョンする確率が上がるのか。考えるためのデータが欲しいといったことです。

蜷川新治郎氏(株式会社TVer 取締役。以下、蜷川):テレビは、4大マスメディアのうち、登場時の形態で続いている唯一のメディアです。テレビの本質は「チャンネルを変えれば次々と番組が映る」ことと、「どこでもいつでも楽しめるエンターテインメント性と気軽さ」。ただ、視聴率に固執しているのは時代遅れではないか、と感じています。
TVerでは、2022年4月、民放5系列揃ってのリアルタイム配信が始まりました[1]。今後は、同時配信+オンデマンド視聴で、好きな時間に好きな番組を好きな場所で観られるようにテレビも変わっていきます。そのため、従来のTVCMとTVerの広告とでは、ユーザーの態度変容にどのような違いがあるのかなど、データをしっかりと示していかなければならないと思っています。

東條英俊氏(Snowflake株式会社 社長執行役員。以下、東條):動画配信サービスのDisney+は、Snowflakeのデータクラウドを使っています[2]。ウォルト・ディズニー・カンパニーは非常にデータドリブンな企業で、Cookieレスの手法を積極的に実践しています。
例えば、データシェアリングやデータクリーンルームを使ってデータを掛け合わせ、効率的にユーザーのエンゲージメントを高めて収益を上げています。
また、視聴データや顧客データと広告主の持つデータを掛け合わせて精密なターゲティングやレコメンデーションを実践し、広告効果を高めることでメディア価値を高めています。Warner Music GroupNBC Universalなど、米国メディアでは同様な取り組みが広がっており、日本でも今後トレンドになりそうです。

重要度を増すビジネスとデータの関係

KT:メディアが変化し、デジタルとリアルが融合しつつある世界で、ビジネスとデータの関係はどう変化していますか?

布瀬川:広告のデジタルシフトは、インタラクティブ性を高め、データフィードバックを可能にしました。その結果、改善点が具体的に分かるようになったのは、ビジネスにおける大きな変化です。
もうひとつは、データシェアリング。これによって複数企業が1人のお客さまに向き合うということが可能になります。もともとテレビやラジオは、複数の広告主で1個のコンテンツをお客さまに提供してきました。データシェアリングは、さらに有意義なメディアサービスを提供できる大きなチャンスと捉えています。

塚本:ニコニコ動画は、プレミアム会員(月額550円税込。2022年5月時点)をなるべく長く続けていただくビジネスモデルです。LTV(顧客生涯価値)を上げるために、データは絶対的に欠かせません。一方、新規ユーザーの獲得手法や広告の表示方法は、状況の変化によって新しい課題も出てきています。

蜷川:TVerは4月に、TVer IDの提供を開始しました[3]。ユーザーと広告主へのメリットは大きいですが、一方で、ユーザーにとってはデメリットもあります。なぜIDを導入しデータを取得するのか、ユーザーにとってのメリットは何かなどをお客さまにきちんと伝えるコミュニケーションをとっていくことが、今後の課題です。

東條:データの所有者が安心してデータを預け、管理できる環境を作り、理解を促進することは、ビジネスにおいて重要さを増しています。
今は1stパーティの個人情報は社外に出せません。とはいえ掛け合わせるデータがないことには、優れたインサイトを得ることが難しくなります。Cookieレスの解決候補となるのが、テクノロジーで乗り越える方法。例えば、「個人情報を秘匿化する」「IDをマスキングする」などです。現在は、データの閲覧アクセス権設定などを、データベースのレコード単位で細かく設定できるようになっています。データ利用には制約もありますが、他方で、このように利便性を追求するテクノロジーも出てきているということをお伝えしたいです。

改正個人情報保護にどう対応するか

KT:日本では2022年4月1日に改正個人情報保護法が施行されました。この改正にはどのように対応すれば良いでしょうか?

布瀬川:とにかく法律を守ればいいという感じになりがちですが、まず議論すべきは、サービスを通じてお客さまに何を提供したいのか。そこから必要なデータを決め、関連する法律に対応する、というように、考える順番を意識すべきです。

塚本:改正に対応するためには、ツールやサーバーの選定も確かに大事ですが、いきなり「何を使うか」ではなく、お客さまに提供するサービスをデータドリブンに突き詰めたうえで、決めていくのがいいと思いますね。

東條:お二人と同意見です。「サービスとして何を提供したいのか」がスタート地点で、その次に「どのツールを使うか」「何のデータを取るか」の議論だと思います。現状、必要なデータが自社で取れない場合は、ツール導入で解決できることもあります。他社と連携したりデータ共有したりすることも検討すべきです。データの制約を乗り越えて良いビジネスを形作るには、事業者のクリエイティビティが占める部分も大きいと思っています。

データを活用して新規ビジネスを生み出すには

KT:データを活用した新規ビジネスは、どのようにすれば生み出せるのでしょうか?

布瀬川:一般的には新規ビジネスは既存ビジネスの延長から生まれますが、データを活用したDXであれば、それまでに蓄積した自社のアセットを違う形に転換して新規ビジネスを生み出すことも可能です。その時は「何を変えるか/変えないか」「どう変わるのか」といった価値の変革が問われます。

蜷川:DXはビジネススキームの変換に近いと思いますね。例えば、複数人が各自スマホを操作しながら一緒にテレビを視聴している場合、どのようなデータを使い、どのデバイスに何の広告を出すと、どのような効果があるのか、という手法はまだ完成していません。テクノロジーの進化によって生まれた新たな場所や媒体の広告価値を考えるのは、データを活用したDXによる新規ビジネスにつながるという感じがします。

塚本:テレビを一緒に視聴するのとは真逆のケースで、ニコニコ動画では、1人が複数アカウントを持っていることも多いです。せっかく本人がペルソナを分けているのに、サービス側で統合したらおかしなことになってしまいますよね。サービス側はデータ統合をした方がいい場合、すべきでない場合という見方も持っておかないとなりません。

東條:新規ビジネスを育むには、企業文化や環境も特に大事です。大きな会社で資金があっても、社内プロセスが新規ビジネス創出に向かない環境もあります。そういう場合、新規ビジネス事業室を作ってみたり、社長直轄にしてみたりということもありますね。

蜷川:私は、新規ビジネスのトライアルでも、ある程度の規模でやるべきだと思います。地上波のテレビ番組をYouTubeに配信したのは、私が以前在籍したテレビ東京が初めてでした。当時、局内では「配信するなら目立たない番組で」と言われました。そこを「ド真ん中の番組を配信しないと意味がない」と押し切ったところ、結果的に大変話題になり、会社も積極的に配信する方向に変わりました。新規ビジネスには、リスクを許容しながら、試させる懐の大きさが欠かせません。

布瀬川:リスクテイクしないと新しいものは生まれません。既存ビジネスの視点からリスク回避を重視する人もいますが、それでばかりではデータからビジネスを生む文化自体が消えてしまいます。

塚本:新規ビジネスにおいて今後、データ活用は絶対に必要になります。環境面では、人材やチームを社内に置くべきです。
Snowflakeなりデータの基盤システムなり、社内にデータを取得するノウハウを蓄積した部署をしっかり持つこと。どんな新規事業を始めるときも、「この部署に行けば必要なデータが探せますよ」という体制にすべきです。その体制で事業を進めれば、事業が増えるたびにデータと経験値が社内に蓄積されていきます。
逆にデータを取ったり取らなかったり、データがサイロ化していたりでは、ノウハウもデータも永遠に蓄積できません。その点、まさにSnowflakeはスモールスタートで始められるデータ活用基盤として最適。データを活用して新規ビジネスを立ち上げたい企業は早急に導入しておくべきです。

KT:KADOKAWAグループでSnowflakeを採用した際の評価ポイントはなんでしょうか?

塚本:KADOKAWAグループは、組織変更や会社の分割・統合が頻繁にあるため、クラウド環境、ツール、サービスが組織ごとにバラバラです。グループ全体でのデータ共有を考えたとき、どんなツールや環境にも柔軟に対応でき、かつ容易にデータを統合・共有・分析できることを重視しました。そこで星取表を作って製品を評価し、一番多くマッチしたのがSnowflakeだったのです。

KT:Snowflakeは、どのようなクラウド、どこのリージョンともつながるネットワークを標榜していますので、そこを評価いただいて大変うれしいです。

2022年をデータビジネス元年に

KT:最後に、皆さんが今後挑戦してみたいこと、展望などお聞かせください。

布瀬川:私はテレビやラジオがデジタル化される時代にも、引き続き優れたコンテンツを作り続けられる環境の構築に取り組みたいです。

蜷川:テレビコンテンツをより多くの人に見ていただくことを使命と考えて、さまざまな可能性を実現していきたいと思います。TVerアプリをさらに改善し、テレビコンテンツの価値が維持できるようにがんばっていきたいです。

塚本:私たちはニコニコ動画を運営しながらYouTubeも活用しています。お客さまのサービス体験に必要であれば、プラットフォームも横断し、どんどんビジネスパートナーシップを組んでデータを共有していきたいです。お客さまにとってうれしい世界を作ることが競争優位性につながると思っています。皆様の話を伺い、あらためて安心できるパートナーシップとデータシェアをする重要性を感じました。

東條:2022年はデータビジネスの元年だと皆さんにお話ししています。さまざまな業種のさまざまな企業がデータを外部と共有したり、そこから収益化したりといったデータコラボレーションの世界が日本で本格的に始まる時代の幕開けになると考えています。
Snowflakeはデータの共有を促し、データの流通をもっともっと進めていくために、さらにデータがオープンで共有しやすい環境づくりに邁進していきます。

脚注

注釈
1. ^ ニコニコ超会議(ニコニコちょうかいぎ)は、ニコニコ動画の「会議」を自称した参加型複合イベント。毎年4月下旬に、幕張メッセを中心に開催されている。

出典
1.^ "民放テレビの地上波リアルタイム配信が TVerに勢ぞろい!". Tver(2022年4月8日)2022年5月12日閲覧。

2. ^ "Disney Streamingによる、データクラウドを活用したデータガバナンスとデータシェアリング". Snowflake(2021年10月11日)2022年5月12日閲覧。

3.^ "テレビコンテンツの視聴体験や広告体験の向上を目指す 「TVer ID」の提供を開始" . TVer(2022年4月4日)2022年5月12日閲覧。

CX UPDATES TOP