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2022.01.12

OMOは標準化へ 包括的店舗DXソリューション「One Tempo」が実現する未来のコマースとは

国内最大級のデジタルマーケティング会社である株式会社電通デジタルは、2021年7月にCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)デザインやコマース構築を得意とする電通アイソバー株式会社と合併。高度化・大規模化するDXニーズに対応し、日本のDX推進の大きな牽引役となることを目指している。そんな電通デジタルが、店舗DXに関する包括的なソリューションとして2021年夏より提供開始したのが「One Tempo」だ。電通デジタルが今、店舗DX支援に注力する理由とは。市場における顧客行動の変化や小売企業が抱える課題、「One Tempo」で実現する未来の購買体験について同ソリューションの開発・提供に携わるふたりに話を聞いた。


CX・EXを同時に向上
事業成長に店舗DXが欠かせない理由とは

市場における競争の激化や商品のコモデティ化が進み、顧客の商品選定における価値観も大きく変化する中、ECを含めたDXによって購買体験を進化させる必要性が高まっている。しかし、DX推進に苦戦している小売企業が多いのが実情だと言う。
 
「小売企業の多くは、既存事業として実店舗を中心としたビジネスを行っており、ECを含めたデジタル事業を後から“追加した”仕組みとなっているため、企業文化に浸透するまでにかなりの時間がかかっています。しかしコロナ禍の影響もあり、デジタルの購買行動が顧客にとって当たり前になる中で、CX向上にはリアルとデジタルの顧客接点を融合した、新たな関係構築が必須だと言えます」(口脇氏)

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株式会社電通デジタル プラットフォーム&データ本部 プラットフォームコンサルティング部 
エグゼクティブプランニングディレクター 口脇啓司氏

 口脇氏は、アパレル業界で10年以上に渡りECに携わり、電通デジタルでもEC関連のコンサルテーションを実践してきた。その経験をもとに、「今後の事業成長には、実店舗のナレッジや知見をECに活用することが欠かせない」と語り、次のように続ける。
 
「DXを推進する際、同時に重視すべきはEX(従業員体験価値)の向上です。今後は、デジタルにも店舗スタッフの活躍の場を拡大していく必要があるでしょう。そしてそのためには、人材育成や組織編成、評価制度などの整備も不可欠になるため、店舗DXは現場だけではなく、企業全体の経営課題と言えます」(口脇氏)
 
 そして、かつて電通アイソバーの「nowlab」でコマース構築のみならず、VRやAI、センシングなど幅広い技術に携わり、現在は電通デジタルの店舗DXを技術面で支える柴田氏も、「顧客接点として、あらゆる場に有効なチャネルを設ける必要が生じている」と話す。
 
「物やサービスにつながるあらゆるものが“商品”となる昨今。どう選び、どう買うかという買いかたもひとつの価値になっています。そして顧客との関係構築も、デジタルテクノロジーによって常につながり続けられるようになる中、サブスクリプションや購買後のサービスなど、継続的なアプローチを実現するさまざまな仕組みやチャネルを用意しておくことが求められています」(柴田氏)
 
 こうした課題の解決策として、電通デジタルが提供するのが、店舗DXソリューション「One Tempo」だ。電通デジタルが実現すべきDX全体を見渡し、そこに必要となる先進的なマイクロサービスを組み込む形でシステム全体を構築している。
 
「テクノロジーが進化する中、部分的な店舗DXツールを提供するベンダーも増加しています。しかし前述したとおり、店舗DXは企業全体で最適化していくことが必須となります。電通デジタルでは、あらゆる分野のデジタルマーケティングに知見を有するほか、それを最大限に活かすテクノロジーに精通した技術者の存在によって、経営判断に基づく上流設計から実装、運営支援まで一気通貫で提供が可能です。こうした包括的な店舗DXソリューションを提供できる企業は、ほかにいないのではないかと自負しています」(口脇氏)

顧客の“デジタル慣れ”が加速
OMOが標準サービスになる時代へ

 店舗DXの推進が急務だと考察する電通デジタルの目には、顧客の購買行動の変化はどのように映るのだろうか。口脇氏と柴田氏はともに、コロナ禍の数年で顧客の「デジタルを活用したサービス」に対する期待値が急上昇していると指摘する。
 
「購買行動における、認知・興味・検討・購買といった一連のフェーズで、デジタルの顧客接点が設けられるようになり、もはやその状態がスタンダードとなりました。単にECで購買の間口を広げるといった、部分的な対応では決して十分ではない状況になりつつあります」(口脇氏)
 
 たとえば、SNSで認知した商品をECで検討・購買するだけでなく、これまで実店舗でしかできなかった接客体験が、ライブ配信やビデオ接客などでも担保できるようになりつつある。顧客は、一度体験した快適な体験を手放すことが難しいため、今までにないほどにデジタルへの親和性が高まっているというわけだ。こうした背景の中、柴田氏は「それでも顧客が実店舗に訪れる理由を的確に把握しつつ、デジタル慣れした顧客に最適な体験を提供することが大切」だと語る。
 
「従来、実店舗とECは融合が難しいとされ、システムやデータを別々に管理する小売企業も少なくありませんでした。しかし、今後は両者のシナジーを発揮しなければ、顧客の支持を獲得することは難しくなっています。かつて、ECもアプリも黎明期には『なかなか浸透しないのではないか』と言われていました。現在では、ショールーミングやOMO型店舗などにそうした意識を持つ人も一定数存在するかと思いますが、新しいテクノロジーの浸透スピードは日々加速しており、新たな店舗形態を標準サービスとしてとらえる顧客も増加しています。顧客に古い印象を与えないためにも、OMO実現に向けた店舗DXにいち早く取り組むべきだと考えています」(柴田氏)

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株式会社電通デジタル エクスペリエンスデザイン本部 クリエーティブ部 ユニット2
クリエーティブテクノロジスト 柴田耕次氏

 それでは、店舗DXは具体的にどのように進めていけば良いのだろうか。前出したように、EX向上を意識しつつ、経営層が率先して取り組むことが大切だとした上で、口脇氏は「実効性を持ったソリューションの導入も有効な手段」だと言う。
 
「経営層が声がけするなど、全社的にOMO実現への意識強化を図ることは重要ですが、人の行動や意識はなかなか変えることができないケースも往々にして存在します。そこで、店舗DXで導入したソリューションを通じて、自然と実店舗とECの垣根を取り払い、オンラインとオフラインの融合を推進できるのが理想的な姿ではないかと感じています。こうした点でも経営意識と現場課題、両方に並行してアプローチできる『One Tempo』が、OMO実現に効果的なソリューションだと言えるでしょう」(口脇氏)

事業構造を改革する「One Tempo」
実店舗の購買体験をデジタルで拡張しLTV向上を

 さらに口脇氏は、「One Tempo」が目的としているのは「DXソリューションの導入だけではない」と語る。先が読めない時代の変化に、柔軟に対応し得る事業構造の構築こそ、同ソリューションが目指す支援の姿だ。
 
「VUCAという言葉にも象徴されるように、変動し続けて先が見えない状態が現代の特徴だと言えます。業界外からデジタルディスラプターが突然現れたり、コロナ禍のような予想もしないパラメータが発生したりと、市場の予測が困難になる中、それを受け入れて事業構造や戦略を柔軟に組み直していくことも大切です。たとえば、商品やサービス開発で言えば、長期間かけて準備したものが実際にリリースされた際、準備期間に市場のニーズが変化している可能性があります。であれば一度リリースした商品やサービスを、ニーズに適合するように調整していくほうが賢明だと言えるのではないでしょうか」(口脇氏)
 
「とくに不可逆的に進化していくデジタル分野においては、挑戦するリスクよりも、しないリスクのほうが高いと言えます。その意識の違いによって勝ち組と取り残される組で、大きな格差が生じるのは間違いないでしょう。早くから取り組めば知見もデータも溜まります。また、たとえ失敗したとしてもゼロではなく、アドバンテージとして残り、次の施策に活用できるチャンスが広がります。これまで日本企業は、準備万端に計画して着実に実現するという形で成功してきたところが多いため、意識改革が難しい部分もあるかと思いますが、今後はこうした姿勢を持つ重要性がより高まっていくと考えられます」(柴田氏)
 
 そして、実際に施策を考案する際には、「デジタルを活用してLTV(顧客生涯価値)向上を目指すこと」が重要だと柴田氏は続ける。たとえば、実店舗でコーヒーを飲み、気に入った顧客が同商品をECで定期購入できる環境を構築。さらに、リアルの「コーヒーの入れかた教室」を開催し、動画でも配信を行うなど、リアルとデジタルをまたいだ購買体験の最適化によって企業への愛着を高めていく。こうして実店舗で一度コーヒーを飲んだ購買体験をデジタルで拡張することで、結果としてLTV向上につなげることが可能となる。
 
「顧客接点をデジタルによって持ち続けることは、購買体験価値の向上だけでなく、商品開発においても大きなアドバンテージとなります。『良い商品を作れば売れる』とはいえ、そこにデータの収集や分析など、デジタル活用があるかどうかで、ローンチの速度や品質も大幅に変わる可能性があります。また、店舗スタッフの効率的な配置や評価など、実店舗の最適化にも大いに貢献するでしょう」(口脇氏)

API連携でVUCA時代に随時最適化
「One Tempo」が持つ6つの機能

 いわば店舗DXは、小売企業が時代の変化に合わせて柔軟に対応していくために必要な、情報戦略の一端を担うとも言える。それだけに、導入するソリューションの選定が重要だ。「One Tempo」では、あらゆる小売企業における顧客の購買行動を網羅する6つの機能を提供するほか、各機能を組み合わせて新たな購買体験を創出することも可能だと言う。

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 同ソリューションが有する機能は、「オンライン接客」「ライブコマース」や実店舗でデジタルレコメンドを行う「AI診断」のほか、バーチャル店舗を実現する「3D空間ストア」、実店舗の壁をバーチャルの商品棚にする「サイネージコマース」、ロイヤル顧客に専任スタッフを設ける「パーソナルコンシェルジュ」となっており、各機能にAIやAR・VRなどの最新テクノロジーが組み込まれている。さらに直近では、イベントなどのリアルで商品を体験して欲しい気持ちが高まった瞬間にECでシームレスな購入を可能にする「体験連動コマース」をリリースした。柴田氏は、「One Tempo」の機能について、「このように現状がすべてではなく、ニーズに合わせて常に拡充・進化を続けていく」と話す。
 
 また、「One Tempo」ではVUCAの時代に対応すべく、通常ではビジョン設定や調査分析を行ってからプランニングするところ、ソリューションの開発・導入から開始することも可能となっている。
 
「前述したように変化が激しい時代に、店舗DXのビジョンにまとめ上げるのは相当の労力が必要です。時間とコストがかかることを懸念して断念する企業も少なくありません。そこで、準備部分の負担を軽減し、まずは店舗DXを実現する基盤を整えてから、企業内の合意形成や参加意識を醸成することも有効な手段のひとつだと考えています」(口脇氏)
 
 こうしたソリューション先行型で店舗DXを成功させるには、まずは小さな成果を出すことが重要だと言う。そして、取得したデータを分析し顧客や店舗スタッフに還元。段階的に最適化を進めていく。
 
「店舗DXソリューションを導入しても、実際に活用されるかどうかは提供価値によるところが大きいでしょう。だからこそ、導入効果をデータ活用という形で、店舗スタッフや顧客に還元することが重要となります。『One Tempo』では、顧客満足度や店舗スタッフの貢献度などもダッシュボードで可視化できるため、スムーズに導入効果を実感することができます。さらにデータの利活用を活性化するために、Salesforce Commerce CloudやAdobe Commerce、Shopifyなど外部システムとのAPI連携も柔軟に行うことができる設計になっています」(柴田氏)

EC購入率30%UPを実現
機能の“融合”で未来のコマースを創出

 柴田氏は「One Tempo」の導入事例として、「AI診断」機能を活用して商品の購入率を向上したバッグブランドを紹介した。同ブランドでは、ポップアップイベントで店頭に「AI診断」を搭載したサイネージを設置。顧客がサイネージの前に立つとその姿がAIカメラで解析され、各人に合わせたお薦めの商品を表示する仕組みとなっている。商品の詳細は二次元コードを介してECと連携し、購入までの導線を構築。同経路でECにアクセスした顧客は、通常の購入率を大幅に上回り、イベント期間中のECサイト売上が38.3%アップしたと言う。
 
 また、バーチャル店舗「3D空間ストア」についても、都市部にしか実店舗がなく、地方の顧客がなかなか来店できない小売企業において、顧客の課題解決や新たな価値提供などが期待される。3D空間でバーチャル店舗内を散策できるだけでなく、「オンライン接客」やチャット機能などを活用することで、商品を見て質問したり、情報を確認したりといった「手に取る以外」の体験をすべて提供できるようになると言う。さらに、「ライブコマース」や「パーソナルコンシェルジュ」などの機能を足し合わせ、購買体験をよりリッチにしていくことも可能となる。
 
「これまでデジタルの購買体験は、検索やレコメンドがメインでした。しかし今後は、オンラインでも接客を受けてセレンディピティ(商品との偶然の出会い)を創出する購買体験が一般化していきます。たとえば、『One Tempo』では、『ライブコマース』機能で1:N(1人から不特定多数へ)の接客も可能ですが、さらに詳しく説明を受けたい顧客は、『パーソナルコンシェルジュ』機能で1:1(1人対1人)の個別相談へシームレスにつなげることもできます。他社のソリューションでもライブコマースは実施できますが、複数の機能を包括的に揃える同ソリューションでは、各ソリューションや機能の組み合わせで、より快適な購買体験を実現することができます」(口脇氏)
 
 さらに今後「One Tempo」では、AIカメラを活用して実店舗における顧客の導線計測や情報の出し分けなど、リアル店舗のテクノロジー活用も予定。実店舗とECの融合によるCX、およびEXをより進化させていく。最後に両氏は、「One Tempo」を介して小売企業に伝えたいメッセージを次にように語り、インタビューを締めくくった。
 
「今後は、店舗ビジネスを主とする企業もデジタルネイティブな企業になることが必要です。それは単純にソリューションを導入するだけではなく、企業文化や組織構造ビジネスモデルの改革が欠かせません。電通デジタルは『One Tempo』を通じて、DXによるビジネス変革はもとより、企業が自発的にDXを推進できる体制構築を伴走支援します」(口脇氏)
 
「改革は一度起こせば良いわけではなく、イノベーティブな状態を継続するからこそ価値が生まれます。今後も多くの小売企業が柔軟に変化し続けられるよう、電通デジタルとして何ができるのか、常に考えながら『One Tempo』を進化させていきます」(柴田氏)
 


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●資料ダウンロードのご案内
本記事でご紹介した「One Tempo」の資料をダウンロードいただけます。資料ダウンロードページにアクセスのうえ、必要情報をご入力ください。

※この記事は2021年12月23日にECZineに掲載された記事を転載しております。
https://eczine.jp/article/detail/10580

口脇 啓司 Keishi Kuchiwaki

コマースデザイン事業部エグゼクティブプランニングディレクター
アパレル企業で、ECビジネス、オムニチャネル戦略やデジタルトランスフォーメーションプロジェクトなどデジタルに関する全社プロジェクトを責任者として推進。2019年7月より現職。

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柴田 耕次 Koji Shibata

エクスペリエンスデザイン本部 / クリエーティブ部 クリエーティブテクノロジスト
フリーランスのwebデザイナーとしてキャリアをスタートし、その後クライアントワークとして多くのサービスプロトタイプ開発に関わる。アイソバーでは、AIを用いた案件に多く関わってきており、最近は店舗DXソリューションを主に手掛けている。アイソバーが世界各国で展開するテクノロジーラボnowlabのメンバーとしてテクノロジーとクリエティブの架け橋を担う。
JDLA(日本ディープラーニング協会) E資格取得
山脇美術専門学校 非常勤講師

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