2020.06.08

中国における最先端の技術レポートとアフターコロナの動向

COVID-19 は私達の生活を大きく変えました。消費生活のパターンだけでなく、清潔さ、ソーシャルディスタンス、健康を保つことに対するケアといった精神面も重要になりました。アフターコロナでは、消費者や利用者の意識が大きく変わるため、ビジネスモデルや製品、サービスにも変化が求められます。 昨年の2019年に中国の深センを訪問した際に、成長著しい中国のITサービスやOMOについて、調査を行いました。今回は、深センにおいて、IT技術がどのように使われているか、新しいサービスが次々と生まれてくる理由は何か、現在の中国のアフターコロナにおけるイノベーションやサービスについて、紹介します。

キャッシュレス社会

深センでは、地下鉄、自動販売機、タクシー、ホテル、レストラン、屋台、ゲームセンター、1人カラオケに至るまで、ありとあらゆるサービスがモバイル決済を前提に設計されていました。現地で現金を持ち歩いている人はほとんどいません。先進国の中でもキャッシュレスの普及率は、60%と世界で一番普及しています。(図1)
余談にはなりますが、私は日本からのビジネス出張のため、モバイル決済ができなく(現地銀行の口座が必要)、現金NGのところも多く、VISAなどのクレジットカード(銀聯カードは可)が利用できるところもホテルなどに限られており、肩身の狭い思いをしました。

では、なぜ中国においてキャッシュレス(モバイル決済)が浸透したのでしょうか?中国のモバイル決済は2013年を機に右肩上がりで急激に普及しています。(図2)これは、中国において格安スマホが普及したことと、利便性の高いアプリが登場したことが要因になっています。それまでは、AlipayやWeChat payなどの第三者決済サービスがモバイル決済対応をしていましたが、利用者の大半がPCで利用していたため、普及には至りませんでした。格安スマホの普及とともに、アプリ自体を決済だけでなく、スーパーやコンビニ、百貨店でも利用できるようにし、消費者の生活に密着した便利で分かりやすい金融サービスに切り替えたことから、利便性が格段にあがり、取引額も増え、生活に深く浸透していきました。


深センで体験した最先端のサービス

深センは、中国のIT特区として始まり、スマート交通やモバイル決済、顔認証による無人店舗から、インキュベーション、VC(ベンチャーキャピタル)によるサポートまで、今や世界の最先端技術とイノベーションを提供しているスマートシティへと成長しています。

モバイル決済の普及と利便性の向上により決済手段がQRコードとなり、さまざまなサービスやイノベーションが生まれるようになりました。例えば、シェアリングエコノミーやOMOサービスとしてよく事例に挙げられているフーマーフレッシュがあります。
中国でも、ライドシェアや自転車シェアリングの普及によって、国民の間にシェアリング(共享)という考え方が、浸透しています。下記の図3は、中国で展開しているシェアサービスの種類です。業界問わず幅広く、激しい競争で淘汰が行われています。

ニューリテールの代表的なビジネスモデルであるフーマーフレッシュはアリババが提供する成城岩井や紀伊國屋のような高級スーパーで、生鮮品の宅配を行っています。 深セン市内であれば注文してから30分以内に届けるサービスとフードコートは生簀の魚を即調理し、屋台のようなライブ感が味わえるような店舗作りが特徴です。特に宅配はスーパーに陳列してある商品を店頭在庫にみたてて、注文が入ってから店員が商品をピックアップして、天井にピックアップされた商品がクレーンで吊り下げられて、バックヤードに運ばれるのが印象的でした。

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フードコートではQRコードを使って店内のどこでも商品の支払いが可能で、ストレスなく購入できる形になっています。 また、スーパーの商品は、すべてセルフレジでスムースに決済ができるため、レジ待ちは発生しません。 テイクアウトはアプリで事前に注文しておき、店内のサイネージに注文番号が表示されるのを確認してからアプリの画面を見せて、ピックアップする流れになっていました。

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フーマーフレッシュでは、店内の全ての取引がキャッシュレスで行うことができ、オンラインの選択とオフラインの行動をうまく融合させてサービスを設計している感じでした。ただし、全ての世代でこの店舗スタイルが受け入れられるかはむずかしい印象を受けました。スマホを使いこなせない世代にとっては厳しいと感じました。そのため、アリババも展開戦略として深センや上海などの都市部の若い世代向けにフーマーフレッシュを出店しています。

他にも深セン市内にはモバイル決済を前提としたサービスが随所にありました。

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中国で新しい技術やサービスが次々に生まれる理由

以上のように、モバイル決済を起点とし、様々なサービスがうまれています。新しいサービスは、激しい競争により優れたサービスだけが残り、かつオンラインとオフラインのデータがデータベースに蓄積されます。このデータを分析し、更に良いサービスのアイデアがうまれます。そして、企業はベンチャーファンドにより資金を調達し、資金が集まれ人材を集めることができます。人材が集まれば新しいイノベーションがうまれます。
深センにおいて、上記のようなサイクルがたくさん起きており、アジアのシリコンバレーと呼ばれるくらいの大都市に成長しています。

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アフターコロナにおける中国のサービスについて

コロナ禍において、他人と接触する機会を減らすことが最も得策な回避手段であることは明白になりました。自宅に居ながらにして、衣食、健康、教育の分野で利用できるサービスが今後たくさん生まれる可能性が高いと考えています。 
中国でも日本と同じく生活圏内でのデリバリーやスーパーの需要が高まっています。
デロイト及び中国チェーンストアフランチャイズアソシエーションのレポートでは、スーパーマーケットやコンビニにおけるO2Oやコミュニティベースのビジネスの急速な成長が起こることを予測しています。具体的には、フーマーフレッシュのようなフルカテゴリー(店舗にある在庫をオンラインで販売)のオンラインサービスを積極的に構築し、ストアのデジタル改革を加速するとのことです。
オフライン中心の企業は、デジタルを活用することで、他人と接触することなく、衣服を受け取る、教育を受けられる、医療を受けられる、生鮮品を受け取れるといったサービスに対して重点的に投資していくことが予想されます。中国においては、モバイル決済がイノベーションの起点でした。アフターコロナにおいても、モバイル決済を中心としたサービスの提供がより一層加速していくことでしょう。

参照元:德勤&中国连锁经营协会:新冠肺炎疫情对中国零售行业影响调研报告, Sina Finance Mobile Version,

 

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