2020.08.28

サーバレスで実現する企業のデジタルトランスフォーメーション ー最高の顧客体験、従業員体験の作り方ー

新型コロナウイルス感染症への対策として外出自粛が求められて以来、私たちの生活様式は様変わりしました。例えば、実店舗への来店頻度の減少やeコマース利用機会の増加は特徴的なことだと言えるでしょう。 この変化を受けて、企業は、これまで以上にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しなければならない局面にあります。 このことは、顧客とのリアルな接点が制限される小売業のような業界では、特に強く求められていると言えるでしょう。これまでのタッチポイントにこだわらず、密なオンラインコミュニケーションを含めたダイナミックな顧客体験(CX)を新たにデザインすることは、経営課題と捉える必要があるはずです。 では、顧客は今まさに、どのようなCXを求めているのでしょうか? 2020年5月15日に開催されたウェビナー「サーバレスで実現する企業のデジタルトランスフォーメーションー最高の顧客体験、従業員体験の作り方ー」では、それを考える前提を以下のように示しました。 「顧客は、企業が提供する製品やサービスだけではなく、シームレスでシンプルなCXを求めている。顧客と企業の接点となるチャネルは多岐にわたり、営業担当者やコールセンターでの対話だけではなく、SNSやウェビナーを見たり、Webサイトに訪問したりするたびに顧客は新しいデジタル体験を得ている」。 多岐にわたるチャネルで成立する巨大なエコシステムは、顧客・企業双方にとって理想的な環境となるでしょう。しかし、そのような環境を構築するには、CX・DXいずれにも、しっかりとした戦略を策定する必要があります。 本稿では、前述のウェビナーで、日本を含む世界各地でクラウドサービスを提供するアマゾン ウェブ サービス(以下、AWS)とオープンDXPを提供するアクイア(以下、Acquia)、CXデザインファームである電通アイソバー(現 電通デジタル)の3社が語った内容をもとに、最高のCXデザイン方法と、それを叶えるためのDXを選択する際のポイントなどについてお伝えします。

最高の顧客体験(CX)は、「買う」決断を後押しする

「クリエイティビティ&テクノロジーで実現する最良のCX」と題したセッションを担当した、CXコミュニケーション部エグゼクティブテクニカルディレクター 船井 宏樹は、「CXは、顧客体験や顧客経験価値と訳されるが、具体的にはどういうことか? と感じているひともいるかもしれない」とし、自身がトランペットを購入した時のエピソードをもとにCXをより深くイメージする例を挙げました。

「まず、トランペットが欲しい、と思ってから、ネット検索をしたり有名奏者たちのブログに目を通したり、専門雑誌を読んだり、同じ趣味を持つ仲間に相談したり、YouTubeの動画を見たりもした。
その後、『良さそうだ』と思うトランペットを扱う楽器店に行き、試奏をしてみた。そこで、さらに候補が絞られたが、『お得に買いたい』とか『中古の楽器はないか?』『アフターメンテナンスのサービスはあるか?』などを調べ、最終的に納得いくものを購入し、購入後は楽器仲間にお披露目もした。
この間、FacebookやInstagramなどのSNS、ブログや雑誌、音楽教室や楽器店、楽器の公式ウェブサイト、メルカリなど、オンラインやオフラインの垣根を越えて多種多様なチャネルに触れた」と振り返り、購入先を決めるに至った理由を次のように述べました。

「様々な体験を通して、ここで買いたい、買いたくない、と感じる瞬間があった。バッドエクスペリエンスの一例としては『試奏していいか?』と尋ねるといかにも面倒だ、という反応をする店で、『ここでは買わない』と思ったほどだ。
逆に、フラッと入った楽器店で『吹き方のクセをみるとこちらの方が合っているのではないか?』とアドバイスをくれたり、そのことを含んだ手書きの手紙が届いたこともあった。これはとても気持ちの良い体験だった。最終的に私はその手紙を送ってきてくれた店舗で、そのオフラインでのコミュニケーションがきっかけとなり、購入を決めた」。

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このエピソードを披露した締めくくりとして、船井は「テクノロジーやデータを用いたマーケティングを担当する人は、顧客体験を考える上で、ウェブ上での顧客の体験だけでなく、オフラインでの体験も重要だと頭に入れておいてほしい」とし、「顧客は“自分にとって”パーソナライズされた体験を求めているし、そのためにうまくデータを活用してほしい、と考える傾向が見られる」と、CXデザインの勘所を示しました。

この内容は、 Acquia が発表した「期待されるCXの提供:CXトレンド・レポート2020」からも読み取れます。

例えば、調査対象の90%が「オンラインでブランドを選ぶとき、便利で気の利いた体験を期待している」としており、80%の消費者が「ブランド側が自分の探しているものをサジェストしたり、自分の趣味を理解してくれているとよりロイヤルティを感じる」とし、82%が「オンラインでのブランド体験をテクノロジーを使って改善すべきだ」と回答しているとのこと。

この結果を見る限り、顧客は顧客データを有効に活用し、パーソナライズされた顧客体験が提供される方が良い、と考えていると推察されます。

一方で、60%が「自分の嗜好をもっと理解していてもいいはずのブランドが自分を理解してくれていないと感じる」とし、同じく60%が「ブランドは消費者ニーズを予測するなどのより良いことに、個人のデータを使いこなせていない」との回答も得られています。

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これらのことから、企業の目下の課題は、顧客のデータ等をCXの向上に使うようDXを進め、顧客が想像する以上のすばらしい体験をもたらす努力をする必要がある、ということだと言えます。


最高のCXを叶えるために、DXは欠かせない

前述を受け、これまで蓄積してきた顧客データを用いてパーソナライズされたアプローチを展開するには、当然ながら、デジタル領域への「ヒト・モノ・コスト」の投資を手厚くする必要があるでしょう。

例えば、チャネルが増加したことで爆発的にコンテンツのニーズは拡大すると考えられますが、制作・管理だけでなく、顧客データをスマートに活用し、顧客それぞれに最もふさわしいコンテンツを出し分ける戦略を立て、実践するには、“人海戦術”では限界があるのは明らかです。

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船井は、「施策の“打率”は3割程度と言われている。実施した施策の反応が鈍ければ、すぐに別の施策を展開できるようマーケティング体制を確立しておくことが大事だ。 圧倒的なスピード感で施策を展開するためには、データとコンテンツが有機的につながっていなければならない。未来志向で考えると、柔軟にマーケティング施策を打てるような仕組みを基盤として持つことが不可欠だ」と指摘。このように必要性を感じた時、自社のDXが目指す先とそこに至るまでの優先順位が見えてくる、としました。


改めてDXを考える

本稿でもメイントピックとして挙げる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」。昨今、この言葉を聞かない日はありません。しかし、「IT化を推進すればいいのだろう」「MAやCMSのようなツールを導入することだろう」など、限定的に捉える向きもあるようです。

アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社の岡﨑貴紀氏は、これに対し、「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォームを利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立することを指す」と、IDCにおけるDXの定義を示した上で、「ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図る、というところを強調している。CXの重要性を指摘していると言える」と述べ、DX本来の意味やCXとの強い関係性を紹介しました。

他方、同社にとってDXは、「ビルダー(実現したいことを迅速に行う体制と人)が牽引し、実験を繰り返し失敗を許容する文化が基礎」であり、DXの実現を支えるプラットフォームとしてAWSがある、と位置付けられているようです。

もともとアマゾンを支えるサービスとして生まれ、現在では、世界中の数百万を超えるお客様にご利用いただいている、常に進化し続けているクラウドサービスAWS。 これを活用してDXを推進する利点について、岡﨑氏は、「クラウドのインパクトは、使った分だけ課金される点にある。ITサービスが高価なものではなく、誰でも使いたい分だけ使えるようになっている、というわけだ。これによって、様々なトライ・アンド・エラーが試せるようになったと言えるだろう」とし、「どういうビジョンで施策等を展開していくか考えることに注力し、それを試する場を簡単に調達できるのがクラウドの柔軟性だ」と述べました。


DXを推進する際に突き当たる課題

「良い製品を売る会社が勝つのではなく、いい体験提供が差別化となる」時代において、冒頭でも触れた通り、最高のCXをもたらすことは経営の重要課題になっていると考えられます。

これをより洗練させるためには、チャネルが増えて顧客のタッチポイントが増えたとしても、統一感のあるブランドメッセージを伝える必要があるでしょう。だからこそ、先述の岡﨑氏の言葉にもある通り、それをより効率的に行なえる場(プラットフォームやソリューション)が欠かせない、と言えます。

しかし、今日の日本企業は、効率的で統制の取れたプラットフォームやソリューションを有していないケースが多いとされています。

アクイアジャパン合同会社リージョナルパートナーマネージャーの小坂慎吾氏は、「『2025年の崖問題(経済産業省)』に代表されるように、レガシーなテクノロジーをメンテナンスしながら利用しているので、新しいソリューションを組み込みづらい、という問題や、安定稼働のために過度に時間や心理的エネルギーを投下しすぎている、といった指摘はよく聞かれる」と指摘します。

加えて、せっかく顧客データや購買データなどの“素材”があったとしても、別々に管理されており、APIがないので実際には活用できない、といった課題も挙げられます。

このような課題を克服するためにも、コストを最適化しつつ、構築・運用・保守管理のいずれの面でも柔軟で使い勝手の良いプラットフォームやソリューションを導入するなどしてDXを推進することは、最高のCXを叶えるための必須条件と言えそうです。


CXとDXを同時に推進し、最高のエクスペリエンスを顧客に

最高のCXについて、電通アイソバー(現 電通デジタル)は、「優れたCXはいつも2つの矢印でできている」とし、人の心を動かすMotivationと、何かゴールに向かう時に障壁となることをなくすFrictionlessが同時に達成されることが欠かせない、と考えています。

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また、その考えのもと、クリエイティビティとアイデアをCXの原動力とし、テクノロジーとデータでCXをドライブさせるべく、CXストラテジーとマーケティング&コミュニケーション、プラットフォーム&コマースがそれぞれの領域のベストプラクティスを提供し、クライアント企業のビジネスやブランドの課題の解決に向けて取り組んでいます。

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その際、最初に取り組むのが、「4Dアプローチ」です。 現状を知る「Discover」、ターゲットの再定義や戦略・施策の方向性、ロードマップを策定する「Define」、どういう課題解決が必要かを見定め施策のアイデアやコミュニケーション戦略を検討する「Design」、実際にプロジェクトを動かしてレポートを分析しPDCAを回す「Deliver」という4つのアプローチを行なうことは、必要な解決策を見出し、持続的にゴールへと進むうえで、非常に重要です。

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このアプローチを通して、CXデザインのなかで最も重要な3つの要素のうち、企業にとってどこが不足していて、何から着手すべきか、可視化し整理するというわけです。

【 CXを実現するための3つの要素 】

●TOUCHPOINTS
顧客行動が複雑になり、企業はオムニチャネルでの体験を最適化するため、各タッチポイントを結び付ける必要ある
●PLATFORMS
データに基づいて顧客に適切な体験を提供するには、プラットフォームを適切に使用することが不可欠となる
●DATA
各タッチポイントをつなぎ合わせ、最適な顧客体験を提供するために顧客のデータは無くてはならない

特に、「顧客は顧客データを有効に活用し、パーソナライズされた顧客体験ができる方が良い、と考えている」と推察される今日においては、上記を満たす最適なプラットフォームの構築やソリューションの連携が極めて重要であると言えるでしょう。

このような企業の課題に対し、あらゆる領域を繋ぎ、最高のエクスペリエンスを顧客に提供することで価値を最大化させるために、電通アイソバー(現 電通デジタル)は国内外の知見をもとに企業の課題解決のサポートを続けています。

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