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2021.11.26

もっと、ファンを育む顧客体験変革を。徹底的にファンを知ることからはじめる「Fan Farming CX」のすゝめ

既存顧客のLTV(ライフタイムバリュー)向上の重要度が高まる昨今、電通デジタルでは、究極の顧客である“ファン”の育成に照準を当てた顧客体験設計のコンサルティングを強化しています。

本稿では、電通デジタル CX戦略プランニング事業部 シニアプランナー 廣田明子と同CX戦略プランニング事業部 事業部長 田川絵理に加え、株式会社電通マクロミルインサイト ビジネス開発部 第3グループ グループ長 東田雄大 氏が、「Fan Farming」とはどのような考え方なのか、そして、「Fan Farming CX」において極めて重要な“初手”となる「徹底的にファンを知るためのノウハウ」と「ファン育成戦略策定のコツ」とはどのようなものか、紹介します。

本稿は2021年9月6日から4日間にわたって開催された「電通デジタルCXトランスフォーメーションウェビナーWeek」のセッションの採録記事です。


“脱・ファンの自然栽培”⇒“意思を持ったファンの育み”へ。

冒頭、廣田は、アイドルグループの候補生たちのファンが自分の「推し」を正式メンバーに加えようと自費で広告出稿するなど、率先して応援する様子が“社会現象化”している現状を例に挙げ、「自発的な応援・布教・擁護をしてくれるようなファン基盤があることは、これからの企業・ブランドにとって心強く感じる重要な要素。こうした動きが自社や自社の製品・サービスに対して起こって欲しいと願う企業や担当者は多いだろう」と提起し、「近年、海外のD2Cブランドを学ぶ形で、究極の顧客とも言える“ファン”を 育む仕組みを持つことがデフォルト化しつつあり、ファンを競争力の源泉にしようとする企業は増えている」としました。

実際に、コロナ禍において大きな打撃を受けた飲食店や生産者が生活者向けの販売を新たに始めたり、クラウドファウンディングに挑戦したりする様子を目にし、「応援消費をする」というケースは多く見られました。これはまさに、ファン基盤による企業へのサポートの好例だと言えるでしょう。

これまでのマーケティングではファンの獲得フェーズへの投資が“常識”となっていたことから、「マーケティングプラン検討時にファン育成構想が抜け落ちがち。コミュニケーション予算の多くが購買(トライアル)までの投資に偏りがちだった」といった反省点が挙げられもしました。これに対し、「顧客育成フェーズへの投資強化をはかることで、LTVに軸足を置き、使い続けてもらうための顧客との関係性を育成することを重視する方が持続可能性の高い取り組みになるのではないか?」という考えが広がってきている、といいます。

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上述を踏まえ、「これまで、ファンは自然発生的に生まれ、ブランドやサービスを支えてくれていた。しかし、これからは意思を持ってファンを育む時代になっていると考えられ、“ファン”を競争力の源泉と捉え、躍進する企業・ブランドが散見されるようにもなっている。コロナ禍の『応援消費』からもわかる通り、ピンチを救ってくれるのは、やはりファン。“レジリエンス(適応力)” のある企業・ブランドになっていくためにもファンの存在は重要だ」との意見を改めて共有した3人の登壇者たち。
そんな時代背景を踏まえ、「今こそ、“ファンを自然栽培”するのではなく、”意思を持って育んでいく”。そんな意識チェンジが、私たちには求められている」と結論づけました。

提唱するFan Farming CXとは?

前述の、意思をもってファンを育むとはどういうことなのか? 

「意思を持って育もうとすると、投資ターゲットや訴求点・シーン、ブランドの価値規定が変わる。どこを見るべきか、こちらの意思も変わるので、ファンと向き合うことで得られる可能性は大きい」と廣田。


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そうした上で、「Fan Farming CX」という提唱概念について説明しました。
「Fan Farming CX」とは、「今いるファンとの関係性を育むことはもちろん、ポテンシャルファン(種)を見つけ、新たに関係性を育み(耕)、共に事業・ブランドを成長(開花)させる“仲間”を増やしていくためのブランド戦略・マーケティング戦略・CXを紡ぎ直そう」という考え方を指すとし、「Fan Farming CX」の考え方の真髄は、 “既存ファン” に加え、“ポテンシャルファン” もファンに含む点である、と強調しました。

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注意!ファンの育みをスタックさせやすい“つまづきポイント”

企業や担当者にとっては、「既存ファンはもちろん、ポテンシャルファンこそ今後のビジネスの可能性を広げるためにもアプローチしたい相手だ!」と、感じるものでしょう。しかし廣田と田川は、これまでの経験から、「ファンづくりに急に取り組むと、息切れ感や成果を出せないなど、何かしらのつまづきが起こってしまう」と注意を促します。

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その原因は、ファンとの関係性育成に向けた羅針盤となる基本戦略の欠如や、ファンの個性(影響力や推奨力、実行力をもつファンもいれば、静かに「ファン活」している人もいる)への配慮不足が挙げられるとのこと。

望まぬつまづきを生まないためにも、「共通意識や温度感・目的を共有し、どんなファンとどう結びついていくかを考え、それを羅針盤として取り組みを進める必要がある」との考えを示しました。


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羅針盤をつくる際、つまり、戦略策定フェーズで主に討論すべきなのは以下の3つと整理。
1. どんなゴール設定をするか?
2. 必要なジャーニーはどのようなものか?
3. 必要な体験刺激とはどのようなものか?
4. ターゲットは誰なのか?

これを深く考察することを、Fan Farmingの表現で置き換えると、次のようなイメージになります。

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ファンのことを、徹底的に知る。一緒に知る。

戦略策定フェーズで上記の4点を議論するために、把握すべき情報について、まず2つのポイントを示唆しました。

Point 1 リサーチ進行スタイル
1つめは、「Co-Fanリサーチ」という、進行スタイルへの工夫です。

ファンの育みは、部署横断の取り組みが必須となります。そのためリサーチ段階においても、「単に知るのではなく、みんなで知る」ことを鍵とし、社内の関係各所とファン育成戦略に対する認識の土台を一致させられるプロジェクトデザインを進めることが重要です。具体的には、単にリサーチ結果をレポートするだけでなく、リサーチ結果を踏まえた集中議論ワークショップを行うことを推奨しました。

また、「みんなで知る」行為は、「改めて自社のファンがどのような過程でファンになったのか?」を知る機会を通して、企業側も再びブランド愛や誇りを取り戻す、“愛の再着火”機会にもなるとメリットを示しました。

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Point 2 リサーチ設計の必要視点
こちらの方法では、以下の3つ視点を前提に、6つの事柄を把握していきます。
① ファンの定義は一様ではない。NPSによる定義“一本足打法”からの脱却を
② ファンの中にもロールがある。期待するロールごとの育みが必要
③ 既存ファンにもヒントがある。これを理解してポテンシャルファンを見出す

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【一緒に知るべき6つの事柄】
①ファンパワー(量・質)の現在地点の把握
現状どの程度のファン/ファンレベル層を保有しているか? どのようなロールを担うファンを保有しているか?

②ファンタイプ/ファンレベル高層の特徴の把握
ファンの中でもどんなタイプ分類が存在するか? 当該ブランドにおいてファンレベルが高い層は、どんな特徴・プロファイルを持っているか?

③ファン化のトリガーの把握
ブランドの原体験・好意を持ちだした契機・ファン化の契機には、どのような“ナラティブ(物語)”が存在し何がトリガーとなっていたか?

④ファンライフサイクルの把握
ファンのファンサイクル*がどうなっているか?(*ファンエントリー期・ファン活動熱心期・ファン疎遠期・ファン復活期)それぞれの期に必要な刺激は?

⑤育みに有効な体験の把握
各育みフェーズでどんな体験が有効か。コミュニティ関与を活性化するために、どのような携わり方オプションを用意しておくべきか。

⑥求心力エンジンの把握
既存ファン/ポテンシャルファンの求心力を高めるミッション・テーマ・パーパスとは? 期待されるコミュニティパーソナリティは?

上記の6つの情報を携えてワークショッププログラムを実施し、ファン育成の羅針盤戦略を煮詰めていき、最終アウトプットについては「合意内容をファン育成羅針盤戦略バイブルとして集約する」としました。

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ファンの育まれ度のチェック

ここまでで示した通り、ポテンシャルファンをファンへと育成していくために、今度はPDCAをどう回すか? が重要な論点になっていくと考えられます。

これについて、東田氏は、「ポテンシャルファンからファン化するまでの1stジャーニーと、ファン化したあとの2ndジャーニーを一貫したものとして考える『Fan Farmingデュアルジャーニー』に沿って、KPI指標を設定し、トラッキング。メイン指標に加え、各ジャーニーステップ間でも“中間指標”を設定しておくことで、伸び悩みポイントを把握しやすくし、次期戦略の組み立てに役立てる」としました。


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KPIの設定はもちろん、達成度合いの確認は、企業にとって重要ではあるものの高い専門性が必要な部分もあり、十分に手が回らない領域と言えるかもしれません。こうした点まで含めたサポートは、外部専門家というリソースを頼るのもひとつの方法だと考えられそうです。

さあ、育むべきファンを知る幸せな旅へ

最後にFan Farmingを行なう過程で得られる価値について、廣田と田川は次のように述べました。

「ポテンシャルファンの姿を明らかにする際、すでにファンになった人たちからエピソードを聞くが、どの内容も外部の人間である私たちも胸を熱くするようなものが多い。これを企業の担当者やステークホルダーが目にすれば、改めて自分たちのブランドの良さや存在意義、愛情を再確認する機会になるのは当然のことだろう。そして、担当者でありながら一ファンとしての目線で、他のファンをどう喜ばせるか? という気持ちに立って今後の施策を考えられるように意識が変わると感じる」

「ブランドの一番のファンは本来であれば従業員であるはず。その人たちの気持ちを奮い立たせることは、持続的成長をファンと続けるアプローチとして価値があるはずだ」

こうした体験談を聞くと、Fan Farmingは、顧客との直接の接点が持ちづらいこのコロナ禍において、顧客の満足度の向上だけでなく、従業員のモチベーションを高める取り組みにもなると考えられます。そしてそれは、ビジネス成長の可能性の拡大、といった意味でも有益な取り組みになると考えられるでしょう。

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お問合せ先:fan_farming_cx@group.dentsu.co.jp

■ 登壇者
株式会社電通デジタル  
CX戦略プランニング事業部  シニアプランナー
廣田 明子

株式会社電通デジタル  
CX戦略プランニング事業部  事業部長
田川 絵理

● 協業パートナー
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株式会社電通マクロミルインサイト
ビジネス開発部 第3グループ グループ長
東田 雄大
2008年入社。電通グループのプランナーとともに、ブランド規定のための調査、顧客体験設計のための調査を多数実施。定量/定性/ログデータ/バイタルデータ等、様々なデータから顧客体験を視覚化する方法を模索。調査プロデュ―ス本数は年間200本を超える。

廣田 明子 Akiko Hirota

CX戦略プランニング事業部  シニアプランナー
2011年に電通に入社。ブランド開発・商品開発から統合コミュニケーションまで、幅広い領域で戦略プランナーを担当。複数のヒット商品開発にも携わる。2020年より電通デジタルに出向。『Fan Farming CX』を発案・提唱し、ファンを育む顧客体験構築に向けた支援を体系化。また、Fu-man insight lab®代表として、社会的不満探索支援情報ツール「Social Pain Compass」を開発。パーパスのあるDX・CX変革の推進を支援。

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田川 絵理 Eri Tagawa

CX戦略プランニング事業部  事業部長
NTTを経て電通に入社。戦略プランナーとして、商品・サービス開発支援~コミュニケーションデザインを中心にマーケティング戦略策定に従事。2016年電通デジタルに出向後、ファンベース・マーケティングの体系化~導入を推進。現在は「顧客体験(CX)の変革を起点にしたDX推進」をミッションとし『Fan Farming CX』思想の提唱・導入等、企業様のマーケティングの高度化・変革を支援。

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