2020.06.26

コロナ禍で生まれた新時代のコマース パート1: 顧客体験

ブランドは生活を送る上で重要な要素です。ブランドのおかげで、人々は信頼できる物は何なのか見極めることができ、また、欲しい商品を簡単に手に入れることができるようになります。消費者として、私たちはブランドに大きな期待を寄せています。ブランドは常に人々の暮らしに付加価値を与えなければならない、そうしないと必要とされなくなります。また消費者にとって利用しやすく、いつでも目に止まるような存在でいなければならず、そうしなければ忘れ去られてしまいます。コロナ禍の最中、ほとんどの小売ブランドはこの2つの原則に苦労してきました。しかし、イノベーションを起こすことで成功した企業もいくつかあります。事業規模の大きさや事業内容にかかわらず、こういった成功事例からヒントを得ることができます。


バーチャル体験を作る

過去の世界で起きた出来事とは異なり、今、世界中で起きていることは、人々をこれまで慣れ親しんできたことへ固執させるようになりました。つまり、普段の生活を自宅で再現したいという欲求です。小売業者は通常のコマース体験を超えたデジタル店舗を構築することで対応しています。このデジタル店舗はより没入感のある、高度にキュレーションされた商品体験の提供を目的としています。まるで博物館のように、キュレーションされた体験が提供されるため、オンラインコマースにありがちな選択のパラドックス(多すぎる選択肢があると選べない)を回避するのに役立ちます。eコマース体験は、顧客が夢中になって楽しく買い物ができる環境というよりは、数ページにわたってさまざまな項目が用意され、それをいちいちクリックさせられるという作りになっているものがほとんどです。最近開発されたデジタル店舗は、没入型のショッピング環境で買い物客が楽しめる空間を提供することに重点を置いています。その結果、ブランドストーリーに価値を置き、実店舗でブランド価値をどのように伝えるかを重視している企業がデジタル店舗を立ち上げています。過去にはこうした体験は、例えば2018年にValentinoが中国大手小売りオンラインショッピングモールTmallに旗艦店をオープンした際のように、キャンペーンとして実施されていましたが、最近では常設のeコマース体験として提供されています。最先端の取り組みを進めているのはChristian Diorのような高級店や米国の小売り美容大手Ultaのようなキュレーションされた体験を重視するブランドです。日本の三越伊勢丹HDはVR技術を応用して似たような体験を開発しました。他の例とは異なり、この体験はバーチャル製品にフォーカスしています。

上述の例からも分かるように、バーチャルショッピング体験はシンプルな写真やバーチャル表現を使ったものなど、いくつかの方法で開発することができます。ほとんどのブランドは最も手軽な方法である、写真の上にハイパーリンクやインタラクションゾーンを重ねて表示する方法を選択しています。インタラクションゾーンでは、顧客は商品を動かしてみたり、写真に埋め込まれているビデオやその他のコンテンツを閲覧したりすることができます。このような体験の構築は難しいと思われがちですが電通アイソバー(現 電通デジタル)はクライアントが同様の体験を開発するのを支援してきた実績があり、多くの場合で、クライアントにはすぐにでも始められる前提条件がそろっていることが分かっています。

eコマース機能は持っていないけれど楽天のようなエコシステム上で商品を販売しているようなブランドは、独自のソリューションを開発する代わりにStreetifyというスタートアップ企業と提携することができます。Googleストリートビュー使って実際の通りを見て回るのと同じ感覚で、この企業のサイトでは、顧客がロンドンのオックスフォード・ストリートのようなバーチャル空間にある通りをぶらぶら歩き、バーチャル店舗に入ることができます。表参道や銀座などですでに実店舗を営業している小売業者の場合、このソリューションを使えばバーチャル空間で店が実在する場所にデジタル上の店を迅速に開店することができます。


商品を吟味する方法を開発

顧客が実店舗で買い物をしたい理由の1つが商品を実際に触って、感触を確かめ、吟味することで、自分が選んだものが正しいかどうかを確認できるという点です。最近までは、これがデジタル上でのショッピングにとって一番のネックでした。体形や肌の色、生地の肌触りなどを考慮しなければならないファッションブランドとは違い、美容用品やパーソナルケア用品、アクセサリー、靴などを取り扱うブランドは、主力商品に関してバーチャル試着体験ができるシステムを組み入れる企業が登場しています。美容用品やパーソナルケア用品、靴などのブランドは、バーチャル空間に出ている商品を顔や体に合わせて形状認識をするだけで良いからです。デスクトップパソコン上でこういった体験を提供するブランドもありますが、例えばGucciのスニーカーの試着機能はモバイルアプリに統合されており、米国の眼鏡ブランドWarby Parkerは自社のモバイルアプリやモバイルウェブサイトで顧客が眼鏡をかけた時の顔の感じを見ることができるシステムを構築するなど、バーチャル試着システムを組み込んでいるブランドのほとんどがモバイル用にシステムを最適化しています。

上記で紹介した例は、単一商品のバーチャル試着体験をeコマースに結びつけている例ですが、拡張現実機能を活用しているブランドは他にもあります。FacebookとGoogleはいずれも拡張現実用の開発キットを開発し、拡張現実技術を使ったバーチャル試着体験のシステムを自社の広告ネットワークに統合しています。従って、じっくりと吟味する必要のある製品を販売する小売業者はどんな製品でも、たとえそれが車であってもオンライン上で没入型体験を作り出すことが可能になります。


特別なイベントを開催する

新型コロナウイルスが流行する前にすでに中国の大手オンライン通販サイトAlibabaはライブストリーミングイベントの威力を巧みに証明し、11月11日を「買い物デー」と定め、大きな話題を呼びました。この日、ブランドは他では見られない特別な10時間のショッピングイベントで新商品を発売するため、ショッピングサイトと手を組み、趣向を凝らしたコンテンツを用意します。2019年はライブストリーミングの視聴者数が2018年と比較して36倍に増加しています。新型コロナウイルスの騒動が始まった初期には、Alibabaがこの経験を生かして、売上促進のためのライブストリーミングイベントを取り仕切り、中小規模のブランドがライブストリーミングの開催スキルを磨く後押しをしました。マーケットプレイス側が企業を指導するための講習会を開き、その結果、百貨店や家具店、書店、農家の人までもがプラットフォーム上でライブストリーミング配信をするようになりました。

小売店の販売員や従業員は商品と同じくらい大事な存在であり、顧客が店舗を訪れるもう1つの理由でもあります。従来のeコマースでは、対面のやり取りをするという機会はチャットボット以外ではほとんどありませんでした。コロナ禍の期間は店舗が休業し、専門知識を持った店員からアドバイスを得る機会が失われてしまいました。ライブストリーミングイベントがあると、ショッピングが特別なものになり、買い物客はそこでしか味わえない体験をすることができます。イベントを通じてブランドの専門知識を紹介することができ、個人的なつながりも生まれます。FacebookをはじめInstagram、YouTube、Twitter、TikTok(フォロワー数1,000人を超えるアカウントのみ)やLINE(グループメッセージ内)にいたるまで、今ではほとんどの主要ソーシャルネットワークがライブストリーミング機能を備えているので、事業規模にかかわらずどんな企業でもライブストリーミング機能を簡単に立ち上げることができます。InstagramやYouTubeで配信されるストリーミング動画は、アーカイブに保管され、ハッシュタグを付けることができるので、新商品の認知度を上げたい中小のブランドは、こういったチャネルを使ったライブストリーミング配信が非常に効果的です。ハッシュタグや動画説明があるとコンテンツが見つけやすくなります。つまり、表に出ていないコンテンツ、すなわち、すぐに他のコンテンツの陰に隠れてしまうようなものでも、他のプラットフォームと比べて関連あるコンテンツあれば、アルゴリズムによって自ずと表に出されてユーザーの目に触れるようにしてくれる仕組みです。

ライブストリーミングの他に、顧客に販売員と直接やりとりできる場を提供するためにバーチャル空間で面会できるような仕組みを打ち立てた小売りブランドがあります。米国のジュエリーブランドKendra Scottは、オンライン上で20分間、スタイリストと話ができる機能を立ち上げました。面会の予約を受け付ける際に店側がスタイリストから話を聞きたい内容についていくつか事前に質問を行い、スタイリストはその内容に基づき準備をします。このようなオンライン上のスケジュール調整機能は、企業間の取引や店内で販売する際にはこれまでも広く活用されてきましたが、個人客向けのネットショッピングではあまり目にすることはありませんでした。CalendySimplyBook.meなどのツールを使えば、こういったスケジュール調整機能を簡単に立ち上げることができます。


分析ツールを利用する

実店舗の良いところは、商品の選択肢は限られているけれど多くの情報が得られ有意義な買い物体験をすることができるという点です。オンライン事業へ移行すると顧客に提供できる商品の選択肢は大きく広がります。皮肉にも、こうなると最終的にどの商品を選んだらいいのか、決めるのが困難になります。選択肢があまりにも多いと買い物客はどれを選べばいいのか分からなくなってしまいます。どれだけスクロールしても何度クリックしても延々とページが続くようでは、見る側は疲れ果ててしまいます。コロナ騒動の最中、実店舗がやっているようなこと、つまり、キュレーション機能をネットショップでも実現しようと、スタートアップ企業が事業を立ち上げました。eコマースの利点は顧客情報を取得し、その場で生かすことができるということです。The Yesという会社はサイトを訪れた客にクイズ形式で質問をします。それに基づき、各ユーザーの好みに合う商品をサイトが厳選してくれるという仕組みです。デジタル体験に質問を組み入れることで、店で店員に相談に乗ってもらっているのと同じような体験を簡単に再現することができ、その上、非常に有益な顧客層別の情報を得ることもできます。

現在、世界は大きな転換期を迎えています。これまでとは全く違う新しいビジネス手法の習得を余儀なくされ、顧客も同様に転換期の真っただ中にいます。幸いなことに、電通アイソバー(現 電通デジタル)は顧客体験の変革のエキスパートです。新型コロナウイルス感染症の流行が起きるよりも以前から小売業の変革を手掛けてきました。私たちはeコマースや事業変革に関するコンサルティング業務において豊富な実績があり、企業が今後すべきことや、ブランドの事業をデジタル空間で行うビジネスにどうやって変換すればいいのか、どうすれば前述のツールを効果的に活用できるかといったことを明確にするご支援をさせていただきます。

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