2020.12.03

ヘッドレスコマースをCX基点で実践するための新サービス「Kirimori」 〜顧客をがっかりさせないeコマース体験を提供するために〜

コロナ禍によって私たちの消費行動は大きく変化しました。その代表例として挙げられるのが、eコマース利用機会の拡大でしょう。それに伴い、流通小売業の各企業は「実店舗の補完的存在」として捉える傾向にあったeコマースの強化を進めたり、新たにeコマースを始める企業も増えるようになりました。

しかし、電通アイソバー(現 電通デジタル)、「eコマースに注力する傾向はコロナ禍の影響とは関係なく、昨年あたりから始まっていた」と考えています。そうした企業の中には、電通アイソバー(現 電通デジタル)をパートナーとして取り組みを推進する例も。

□ 参考記事
電通アイソバー(現 電通デジタル)、2020 60th ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSにおいて「デザイン部門 シルバー」、「マーケティング・エフェクティブネス部門 ブロンズ」を受賞!
電通アイソバー(現 電通デジタル)によるeコマースのニューノーマルに関するインサイト記事一覧

そのようなニーズを受けて、電通アイソバー(現 電通デジタル)は「CX Design Firm」として、デジタル上での顧客体験をより充実したものにすべく、企業ごとに「どのようにすれば、その企業と顧客にとってより心地よい関係づくりができるか?」を考え、CX基点のeコマース体験を提案・実践してきました。

企業ごとに理想の顧客体験(CX)を設計したあと、実際にその設計にのっとって顧客と企業の理想的な関係性を構築する上で欠かせないもののひとつはデジタル上の仕組みであることは言うまでもありません。
今日、「ヘッドレスアーキテクト」という言葉が徐々に注目されるようになってきましたが、このテクノロジーをどのようにストラテジーに組み込めば良質なCXを実現できるのか、考えた結果として電通アイソバー(現 電通デジタル)が打ち出したのが体験先行型ヘッドレスソリューション「Kirimori」です。

本稿では、「Kirimori」のエバンジェリストである電通アイソバー(現 電通デジタル)株式会社 ビジネスディベロップメント部 エグゼクティブソリューションディレクター船井宏樹と、同部のプランニングディレクター門別諭の発言から、顧客にとって心地よいeコマース体験のあり方やそれを叶える存在としての「Kirimori」の可能性などについてご紹介します。

顧客が希望する購買体験に合わせてECツールは変化できているか?

さて、今日のeコマースを支えるシステムに欠けている発想や機能があるとしたら、どんなことが思い浮かぶでしょうか? 

これについて門別は、「今日、国内外を問わずECツールはたくさん存在している。それらは昔に比べて出品の仕方が楽だったり、利用料が手頃だったり、上手くデザインして見栄え良く商品を見せられるようにはなっているが、決済や購入までのフロー自体は変わらない。つまり、基本的な機能は昔からほとんど何も変わっていないと言える」と指摘します。

続けて、「今日、顧客側のニーズは非常に多様化している。例えば、ソーシャルメディア上で友だちになった人に何かギフトを贈りたい、という考え方は今の時代らしい人間関係からくる自然なニーズだと言える。だが、実際に贈ろうとなると、色々と手間をかけたり手を尽くさなければならないのが現状だ。これは企業にとっても同じことで、プレゼントをしたいと思っても住所を知っている相手にしか贈れないからギフティやLINEギフトを利用してでもプレゼントするか、施策を諦めるか、の選択をすることになってしまう」と述べました。

門別の指摘から考えを広げてみると、顧客本位の考えで実現できていない施策は他にも考えられるでしょう。

例えば、ECサイトに来訪してから購入までのフローについては、顧客が商品を閲覧しようとするとカタログでしか見せられない状態になっていたり、商品は既製のものだけでカスタマイズが効かなかったり、商品を注文する人と代金を支払う人を別にすることはできなかったり、といったことが挙げられます。

さらに、コロナ禍によって消費行動は急激に変わり、対面で店舗スタッフが接客していたのがVRを活用した接客体験に変わったり、ソーシャルメディア上でショッピングを楽しんだり、声で注文したり、webで注文して店舗で受け取る「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」のニーズが高まるなど、様々な購買体験のバリエーションも考えられるようになってきています。しかし、「ECサイトと店頭側のシステムが連携していないため、そのような施策は展開できない」という壁に突き当たってしまうケースが現状では少なくありません。

このような状態を総括して、門別は、「顧客が求める購買体験のあり様は多様化しているが、それをかなえる仕組みがないので結果として顧客に仕組みに合わせるよう強いている状態が続いている。これでは良質なCXを提供できているとは言えないのではないか?
中には、『そもそもECツールでそうした柔軟な対応はできない』という先入観もあるかもしれない。しかし、その壁を超える考え方としてヘッドレスアーキテクトの発想が出てきた。特に、今回提案する『Kirimori』は、ヘッドレスアーキテクトの中でもフロント部分を柔軟にし、リアルもバーチャルも含めて顧客とのタッチポイントすべてで行なわれるCXを最適化するためのものだ」と、「Kirimori」がコマースにおける良質なCXを実現する可能性を高める点を解説しました。


CX基点で考えた結果としてヘッドレスアーキテクト・ヘッドレスコマースを選択する、という発想を

一方で船井は、「eコマースに注力したいという企業からの要望は、『今のECシステムが老朽化しているからリプレイスしたい』という内容が多いように感じる。そうした相談に対し、『せっかくシステムを整えるなら、CXを基点に企業と顧客がより良い関係性を構築できるようにイチから考えてみては?』と提案し、CX基点のeコマースの実践を一緒に実現するようプロジェクトを進めている。単純にEC要件を詰めるのではなく、ブランドごとに『どんなサイトを構えるべきか? 販売形態は? 等を整理してeコマースを始めよう』というわけだ。
そうしてeコマース体験をはじめコマース全体の体験についてあるべき絵を描くという提案ができるのが電通アイソバー(現 電通デジタル)の強みであり、それを実現するためのアーキテクトが『Kirimori』だ」と述べました。

冒頭でも示した通り、「ヘッドレスアーキテクト」や「ヘッドレスコマース」という言葉は大きく注目を集めるようになっています。確かに、フロントエンドとバックエンドが柔軟になることで、様々な技術的な可能性は広がることでしょう。

しかし、そこに「自社の顧客のために何ができるか? どんな体験をしてもらいたいか? どんなサービスを提供できるか?」という発想がなければ、せっかくの柔軟なシステムも十分には活用しきれないかもしれません。顧客が購買体験そのものにも価値を見出しはじめた今日だからこそ、eコマースの“裏側”だけでなく全体を理想形にするという発想が必要だ、というわけです。


「人気だから、注目されているからサイトが落ちても仕方がない」で本当にいいのか?

企業にとってCXを考えることは「企業やブランドが顧客にどう向き合うか?」を改めて問うこととほとんど同じことだと言えます。そのため、「考えるべきことが広範囲にわたるので、どこから手をつけたらいいのか目星がつけられない。どのように考えを進めたらいいのかいまいちピンとこない」という声も聞かれます。これに対し、より想像しやすく、CXを考えるきっかけになりそうな例がコロナ禍のeコマース事情から垣間見られます。

例えば、発売前から注目されていた商品が発売された当日や、TVで取り上げられた商品があったとしましょう。すると、サイトにアクセスが殺到してしまい「サイトが見られなくなる」という現象が起きることが多々あります。

顧客としては、「今すぐ欲しいのに、いつになったら買えるようになるのか。」と、イライラしてしまうものですし、「実店舗であればどれだけ人が集まっているか分かるので並んで待つか諦めるかを判断しやすいのに」と、eコマースの“不便さ”を感じたり、その企業やブランドに対してネガティブな印象を抱きかねない状態にもなるものです。

一方、サイトにアクセスが集中してエラー画面が表示されるような事態になれば、企業内では情報システム部門が緊急対応をしたり、マーケティングチームがヤキモキしたり、チームワークで乗り切れそうにない雰囲気になることも少なくありません。

こうしたシチュエーションに対し、「『顧客サービスとは何か?』にフォーカスするともっと違うアクションができるはずだ」と門別。サイトに来訪した顧客に見せる画面がエラー画面で本当にいいのか? をCX視点で考える必要があるとし、次のように提案しました。

「例えば、今は時間がないからサイトを閉じるという顧客に、『今回はこのようなことになってしまいましたが、今後もぜひご愛顧ください!』という気持ちを込めて10%オフクーポン出す、といった次も来訪してもらうための施策を素早く打てるようにしておけば、『あの企業・ブランドは顧客サービスが行き届いているよね』と思ってもらえるだろう。それが企業のブランディングにもつながるはずだ。

ヘッドレスアーキテクトはフロント側とバックエンドを切り分けてシステム側の体制を整えるものだ、というふうに受け止められることが多いようだが、そうではなく、CXを充実するための考え方と捉えるべきだろう。これまで、インフラ的にムリだから、世の中に理想を叶えるソリューションがないから、と考えていたことにメスを入れ、リアルでやってることをバーチャルに置き換えるには何が必要なのか? という発想にまで立ち戻ってeコマースをCX視点で戦略を考え、仕組みを検討し、運用する時代になっている」。

もしフロント側での柔軟さが実現できるなら、マーケターはサイトに不具合が起きている間、ブランディングや顧客とのエンゲージメント向上に資する施策を展開できるかもしれません。例えば、人気アーティストのチケット販売が開始されるとサイトにアクセスが集中して数十分以上待たされる、ということが話題になりますが、待っている間に限定ムービーが見られるような施策が打てるなら、待ち時間すら楽しみになることでしょう。

これに限らず、これまで「絶対に避けたい事態」と考えられてきた場面が、別の価値を持つようになるのがヘッドレスアーキテクトを活用する最大の利点であり、それをサポートするのが「Kirimori」です。

船井も、「eコマースに限らず、システムをどれだけ堅牢にしても瞬間的にアクセスが集中し、インフラが耐え切れずにコンテンツが表示できなくなることがある。『欲しい!』と思った時にどうにもならない、という事態は顧客にとっては残念な体験であることは確かだ」とし、次のように続けました。

「今日、デジタルサイネージやネットで予約して実店舗で試着するといった体験など、デジタルを利用して実店舗のCXはどんどん向上している。それにもかかわらず、eコマースは昔と比べて何か画期的に変わったかというと、根本としては大きく変わっていない。そこに変化を及ぼすのが『Kirimori』だと言える。
webサイトにエラー画面が表示される事態になってもすぐに『自社のブランドをどう見てもらうか? そのためには何をするのか?』を考えて施策が打てるとしたら、それはマーケターの腕の見せ所になるだろう。マーケターにとって新しい選択肢が増えるということだ」。

CX全体をイチから考えたり、ECシステムをどう最適化するかを考えることはハードルが高いことかもしれません。しかし、「人気があるからエラー画面が出ても仕方ない、という考え方が本当にCXなのか?」というところから考え始めてみる価値は大いにあるのではないでしょうか。


ヘッドレスアーキテクトの詳細を知るより、何ができるかをイメージできれば「自社はこう使う」というアイデアは湧いてくる

最後に船井は、「Kirimori」の名前の由来とそれが目指す姿について次のように語りました。

「我々が『Kirimori』を活用して目指すのは、eコマースを支えるシステムと接客する面であるECサイトという裏側と表側を柔軟につなぎながらその顧客に最良のCXを提供していくことだ。その議論をしている中で、これの機能はまるで旅館の女将さんが裏方のスタッフ達と顧客とを上手にキリモリしている姿のようだ、という感想が社内から出てきたのが名前の由来になった。
多くの人にとって、システムアーキテクトの話は取っ付きにくいものだと思うが、技術の難しさを意識させず、名称から何となく『何ができるか』を想像できることはそれを自然に活用するきっかけになると考えている。徐々に良さや考え方そのものが浸透し、多くの人が『何だか便利で心地よい』と受け入れてもらえればと思う」。

また、門別も、「顧客に対してしっかりとCXを提供できているか? から考え、理想のCXを実現するために『Kirimori』を選んでもらうことで、副次的効果として、情報システム部門のようなECサイトを支えるインフラ担当者の運用がよりスマートになったり、マーケティング担当者が顧客とのエンゲージメントを高める機会を増やせたら、と考えている」と、締め括りました。

顧客の価値基準が「体験(experience)」中心へと変わった今、いかに上質な体験を提供できるかが企業の持続可能性を左右するようになっています。CX Design Firmである電通アイソバー(現 電通デジタル)は、クライアント企業とともに、ブランドと一人ひとりの顧客が永く繋がり続けるための“特別な関係性”を生み出す最良のCXを提供しています。

https://di.dentsudigital.co.jp/services/headless_kirimori/

 

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