2021.12.03

コロナ禍を越えて店舗の在り方はどう変わるのか? 〜店舗DXの最前線~

売場に客足が戻るものの、コロナ前に比べると人々の意識には確実な変化が生じています。今「リアル店舗」には何が求められ、期待に応えるためにはどんな「ソリューション」の活用を検討するべきか?そして、リアル店舗の在り方を今後どう規定していく必要があるか?解説します。

本稿は2021年9月6日から4日間にわたって開催された「電通デジタルCXトランスフォーメーションウェビナーWeek」のセッションの採録記事です。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

CX/UXデザイン事業部シニアコンサルタント

岡本 静華

店舗DXの最前線 ニューノーマル時代の店舗の在り方を考える

コロナ禍に端を発し、あらゆる場面で変革が起きています。その中でも、最も大きな“波”に直面しているのが店舗だと言えるでしょう。では、今後を考える上で最良のアプローチ法とはどのようなものでしょうか?

岡本は、「リアル店舗を取り巻く市場背景は複雑だと言える。まず、人口減少などによる国内需要の伸び悩みや人手不足に加え、新型コロナウイルス感染症の影響で生活者の消費・購買行動が様変わりし、さらに、eコマースの攻勢によって大きな変化に直面している。実際に店舗を運営されている方やそうした企業を支援されている方は、『ニューノーマル時代に店舗はどうあるべきなのか』と、頭を悩まされていることだろう。
そこでまずはアンケート結果から紐解いた『リアル店舗』に求める要件、実際に利用・提供されている『ソリューション』を紹介し、次にリアル店舗の在り方をどのように規定していくべきなのか、エッセンスを紹介する」と述べ、次の内容を示しました。


リアル店舗の要件

実体験からも類推される通り、コロナ禍以降、生活者がリアル店舗に足を向ける回数は減少傾向にあります。

そのような現象を詳しく見ると、生活必需品等を購入することが多いコンビニやドラッグストア、スーパーは他の業態に比べて来店回数が減った割合は低い一方、飲食店での喫食や百貨店での嗜好品の購買といった生活にうるおいを得る機会を提供するような業態については来店回数が大きく減少している、ということが分かります。

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岡本は、「コンビニは週に2〜3回、ドラッグストアは月に2〜3回、スーパーは週に2〜3回、外食は月に2回、百貨店や銀行は3カ月以上訪れていないと答えている生活者の割合が最も高く、決済単価は異なるものの、来店する人数も減り、来店する回数も減った百貨店は大打撃を受けたと見て取れる」と指摘。「この減った来店客はどこに向かったか?」について話を進めました。

調査によると、“減った来店客”は次の3つのパターンに行動変容したとのこと。

“まとめ買い”スタイルに変更
来店頻度は減ったが総利用金額は減っていない。ドラッグストア、スーパーを利用していたお客様がこのような行動変容をしたと考えられる。このスタイルに変更したお客様にとって1回ごとの店舗体験の重要度はこれまでに比べて増すと想定される。

別の店舗(リアル店舗)で購買
いままでいろいろな業態をめぐって消費行動をしていたけれども、なるべくまとめて1カ所(お気に入りの場所)で購入するようになった。例えば、◯◯はコンビニで、△△はドラッグストアで、という購買行動だった人が、◯◯も△△もドラッグストア(あるいはコンビニ)で、というように行動変容したと考えられる。

別の店舗(オンライン店舗)で購入
商品名や型番が分かっているからオンラインでも買い間違いがないと考えられる。日時を指定して運んでくれるならオンラインの方が重い荷物を運ぶことも、面倒な移動も一切不要になるため便利で、さらに価格がおトクであると知り、オンライン購買に切り替えたと考えられる。

こうした変化に対し、岡本は、「今日、コロナ禍によって生活者の行動は制限・抑制されている。“ムダ”な行動や消費の見直しが消費スタイルに影響を及ぼし、店舗での体験に求める事柄も変化するようになったと想像できるだろう。
そうした生活者のニーズに応えるため、店舗はリアル/デジタルの枠を超えて、顧客にどんな理想の体験をもたらすか、検討して具現化する必要がある」と述べました。


生活者がリアル店舗に求めていることは?

消費ニーズそのものが消えたわけではなく、ニューノーマル時代の新しい消費スタイルにあわせた店舗体験をユーザは求めているとするなら、それはどのようなものなのでしょうか?

岡本は、「今日の生活者は、ヒトやモノとの直接的な接触を避けられる非接触、かつ、ストレスフリーな店舗体験を求めている」とし、リアル店舗に求める5つの項目を次のように挙げました。

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これらをまとめると、「入店から退店まで、不用意にヒトやモノと接触することなく目的の商品を購入することができ、その一連の流れがストレスフリーで行えることを前提に、①いつもの購買に加え、自分自身では選ぶことがない商品や思いがけない出会いによって自分の世界が拡がること。②事前の情報収集から購入する商品の目安をつけた上でも、実際にモノを見て試して類似製品と比較して確信をもって購入できること。③不慣れな選択や、高額な消費は専門知識をもったプロフェッショナルの知見やおすすめを知った上で安心して決断できること。④楽しさとして、購買体験そのものが楽しくなるギミックや造りこまれた店舗設計によって商品+αの体験が得られること。⑤コミュニティを形成できること。この5つが重要だと分かる」と、岡本。

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このうち非接触や出会い、確信を得られるような店舗体験について、岡本は、「決済周りを中心に様々なソリューションが急速に普及し始めている。経験後の満足度は高く、店舗運営者としてやらない手はない」と、以下の5つを挙げました。

  1. セルフレジ        専用端末にバーコードを読ませて顧客が自ら会計をする
  2. モバイルオーダー    リアル店舗で商品を見て、モバイルで注文
  3. バーチャル接客    リアル店舗にいる店員にデジタル越しで接客してもらう
  4. バーチャルフィッティング    試着することなくデジタル上で試着体験を行なう
  5. BOPISモデル    Webで購入し店舗で受け取る。Buy Online Pick-up In Store

一方、オンラインとリアルの店舗体験を享受できるソリューションとして挙げられるのは、ライブ・コマースとオンライン接客です。「利用経験率は低いが、継続利用意向率の高さからサービスへの高い満足度を感じられる」との調査結果も。

これらを踏まえ、岡本は、「事業者にとっては、ここまで述べた要件やサービスを導入すれば来店客は戻ってくるのか? と気になるはずだ。それについて調査結果を見ると、55%は『コロナ禍が収束したのちにはリアル店舗を再び利用したい』と考えていると出ており、前述の取り組みはそれを+α押し上げることになると考えられる」と、まとめました。


リアル店舗の潮流

では、今後のリアル店舗の潮流はどのようなものになるのでしょうか? そのカギになるひとつ目の言葉が、「リテールテイメント」です。リテールとエンターテイメントを足した造語で、楽しさや出会い、ロイヤリティ醸成、LTV最大化といった効果が見通されると期待されています。

一方、実店舗で商品を手に取って確認し、購入はECで行なう購入手法「ショールーミング」もまた、注目すべき言葉です。店舗側は商品の在庫負担が小さく、売り場面積を最大限活用することができ、顧客側は荷物の持ち帰りが少なく済むという双方へのメリットが見込まれます。

岡本は、いくつかの例を挙げ、「情報に敏感で消費意欲が高いミレニアル世代はコト消費を重視する傾向がある。また、コト消費は、リテールテイメントやショールーミングとの相性がいいと考えられる」と、今後のリアル店舗の進化に前述の2つが欠かせないものになるとしました。

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また、非接触についても、例えばアプリや専門端末でバーコードをスキャンすれば購入・決済も非接触で行なえるスーパーマーケットの取り組みや、顔と決済手段を設定すると退店時に決済ができる無人店舗などの例を挙げ、各社による顧客体験の充実とテクノロジーの活用を両立させた例を示しました。


リアル店舗の在り方

前述のように目を引く最新事例は多々出てくる今日ではありますが、「導入はまだまだ本格的には進んでおらず、手探りの状態だと見られる」と、岡本。これからのリアル店舗のあり方について、次のような見方を示しました。

「注目すべきワードは、『エンドレスアイル』だ。これまでは店舗とはモノを買う場所であり、購買の前後の体験との連続性まで考えを広げることがなかったと言えるだろう。しかし、それをひとつの通過点として捉え、来店はもちろん店舗での購入後のことも含めてひとつの道のように捉えて施策等を考える必要がある」。

前述の通り、エンドレスアイルを実現するには、購買体験全体を考える必要があります。その際、注目したいのが、「自社の資産と顧客の声、社会の変化がかけ合わさったところだ」と岡本。「理想の顧客体験は、今の理想と未来の理想の間に存在する」としました。

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さらに、「顧客体験は『従業員体験(EX)』と『データ』によって研ぎ澄まされる」と、強調。従業員体験(EX)の向上によって洗練された業務オペレーションは、顧客体験を向上させる原動力となり、そうした良い体験がデータとして蓄積され、より良い体験を検討・提供できれば、リアル店舗やブランドの価値は向上し新たなビジネスチャンスも見込めるかもしれません。

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最後に岡本は、「電通デジタルでは、まずは以下のような店舗DX診断シートで自社の店舗や顧客体験をチェックして改善点を見つけるところから始めてみることをご提案している」とし、「電通デジタルのリテールDX専門チームは、高い専門性をもった各社と協業することで、顧客体験を起点に企画から実装・運用まで一気通貫で支援し、リテール企業のビジネスを加速させる体制を組んでいる」としました。

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電通デジタルでは、電通テックやアドインテといったリテールDXの各領域において高い専門性をもった各社と、リテールDX専門チーム「Retail-Xing」を結成するなど、顧客体験を起点に企画から実装・運用まで一気通貫で支援し、リテール企業のビジネスを加速する取り組みを始めています。

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