2021.07.16

顧客に喜ばれるECサイト構築に向けて 〜「システム要件の検討から始めないこと」が最適解への近道になる〜

新型コロナウイルスの影響によって、2020年の間だけでもコマースは大きく変わりました。顧客やスタッフらの安全を守るため、急いで非接触でサービスを提供すべくECサイトの構築や拡充、オンライン接客に挑戦した企業も多いはずです。

そして今日、コロナ禍が中長期に続くと見通されることから、ここまで進めてきた新しい挑戦について、「“急場の対応”ではなく、ビジネスのあり方を根本から見直し、新しい時代の様式に合わせよう」と、もう一歩踏み込んだ取り組みにしようとする企業も増えてきているようです。

しかし、いざ検討を始めると「システム要件を決めることで手一杯になり、本当に顧客が喜ぶ購買体験を提供できる環境になっているのか分からなくなってきた」との声も聞かれます。

そこで本稿では、ウェビナー「DX加速化におけるコマース事業の最適解」の内容をもとに、今求められるコマースのあり方や顧客に喜んでもらえるeコマース環境を構築する上でのポイントについて、お伝えします。

消費者が変化している今、求められるeコマースの姿とは?

顧客は今、どのように変化し、どのような購買体験を求めているのでしょうか? 

電通デジタルのビジネスディベロップメント部 エグゼクティブソリューションディレクター 船井宏樹は、自身の気づきをもとに、次の問いかけを行ないました。

  • ECは便利で心地よいものに進化しているのだろうか?
  • ECを通じて自社のファンは増やせているのだろうか?
  • 自社の提供するコマース体験は、より良いものになっているのだろうか?


確かに近年、高度化するレコメンデーション機能やパーソナライズされたコンテンツの表示、動画による商品説明やAR・VRによる体験などのほか、豊富な決済手段も続々と誕生してきました。テクノロジーはオンライン上での接客技術の向上や商品のプレゼンテーション能力、販売時のハードル引き下げに大いに貢献しています。

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しかし、「売り方ばかりが進化していて、顧客視点で『買い方/買われ方』はほとんど変化しておらず、結果としてeコマース領域の顧客体験はまだまだ発展途上だと考えられる」と、船井。「eコマースで売り上げを作ることは重要だが、CX(顧客視点、顧客体験)を忘れないようにしたい」としました。


CXを中心に、新しい購買体験を考える

では、eコマース領域の顧客体験はどのように発展する可能性があるのでしょうか?

船井は、「これまでリアルの友人に何か贈り物をする、ということはあっただろう。しかし、ソーシャルメディアの利用が日常に溶け込んでいる今日では、そこで繋がりがある人にも何かを贈りたい、というニーズが出てきても不思議ではなくなっている」と例を挙げました。

ただし現状では、後者のような人に贈り物をする場合、「相手の住所は知らない。聞きづらい」という課題に直面し、「贈り物は諦める」ということになります。

しかし、もし「贈り手が決済した後、住所の指定は贈り先が行なう」というフローが実現できれば、この課題は解決できるはずです。このように、顧客が今「できると嬉しい」と感じることを実現しようとする姿勢は、ポストコロナのコマースのあり方や自社独自の購買体験をもたらす上で重要をポイントだと言えます。

そして、そのようなCXを起点にECサイトの構築を検討したり、機能を充実させたりするにあたって、「システムでできることありきで話しを進めると、顧客が真に求めるニーズをかなえられない、優れたCXを提供できない」と分かるはずです。

むしろ、適切な顧客体験(CX)から考え始め、それが実現できるシステムを探す方がゴールに近づきやすいと考えられるでしょう。

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船井は、「システム導入で課題解決がうまくいかないケースでは、提供したい顧客体験の設計が明確でないままシステム要件を決めてしまい、後になって組織や現場、顧客らのニーズとのギャップが露見することが多い」と指摘。ECサイトやコマース全体のシステムを構築したり、見直したりする上でのポイントを次のように紹介しました。

「システム要件の前段として、顧客が望むこと、サービスを提供するための業務課題・運営体制、将来の姿などを見据えて顧客体験をデザインする必要がある」。

さらに、電通デジタルがビジネス課題や顧客体験の課題を解決するためのアプローチ方法である「4つのD(Discover、Define、Design、Deliver)」に触れた上で、「ヒアリングや行動分析、リスニング、あらゆるデータ分析のほか、顧客の観察など多角的なアプローチで徹底的にエンドユーザーのインサイトを明らかにする」というDiscoverのフェーズがシステム要件を固めることよりもまずは重要であることを、次の図を用いて紹介しました。

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OMOの環境を整えることも優れたCXをもたらすことになる

ここまで、いかにして顧客に喜ばれるeコマース環境を実現できるかについて紹介してきました。しかし、今日では、デジタル上での体験だけでなく、リアル店舗での体験も含めたビジネス(OMO:Online Merges with Offline)を構想する必要性も高まっています。

これまでリアル店舗のようなオフラインの場はデジタルとは縁遠いとされていた部分もありますが、近年では急速に店頭におけるタッチパネルやPOS、デジタルサイネージの活用幅は広がり、在庫管理のあり方についても見直しが始まっています。

このように、デジタル上での体験とリアル店舗での体験に垣根がなくなった今、検討事項なってくるのが、最適なCXに合わせて接客設計し、必要に応じて個別システムと連携するために柔軟な対応ができるシステム環境を整えることです。

その方法として、船井は、近年注目されているヘッドレスアーキテクトを挙げ、

「ヘッドレスアーキテクトは、コンテンツ管理システムや各種マーケティングツールなどのフロントエンドシステムと、基幹データベースやCRMなどのバックエンドシステムを切り離すことで、システムの制約を軽減し、柔軟性をもったシステム構築を可能にする考え方だ。これによって変化に対応するためにシステムが複雑化したとしても、スマートに管理運営ができ、最適なCXを実践できる可能性が広がる場合がある。

ただし、提供したい体験が不明瞭なままであれば、ヘッドレスアーキテクトの良さが十分に生かされない場合がありうる。eコマースに限らず、コマース事業全体を新しいデジタルの力を取り入れて最適化させるためには、実現したい購買体験や最適なCXを何より先に明確にすべきだ」

と、締めくくりました。

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電通デジタルは、クリエイティビティとテクノロジーの融合によるCXデザイン力、グローバルでのケイパビリティ、コマース構築力をはじめ、ヘッドレスコマースを支援するソリューション「Kirimori」の提供などを通して、クライアント企業の課題解決と顧客に優れたCXをもたらす取り組みを続けています。

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