2020.07.22

非接触型決済から非接触型事業へ:ハイタッチ産業をロータッチ体験に変換するには

人との間隔を2メートル空け、「3密」を避ける。これは新型コロナウイルス感染症の流行を収束させるために日本政府が打ち出した新たな公衆衛生に関する指針です。ほとんどの人は、この規則をしっかり守りながら生活を送っていますが、銀行や保険会社の利用客の多くはいまも窓口を利用しています。ドイツの調査会社Statistaが発表した調査報告によると、銀行の手続きについて、新型コロナウイルス流行以前は約68パーセントの人が、支店に出向いて行員と対面で行う方が良いと答えています。新型コロナウイルスが流行し始めて間もなく、政府はこの「3密」回避の方針を示していました。しかし、銀行に来店する人の減少幅は、三菱UFJフィナンシャル・グループと三井住友フィナンシャルグループの2行でそれぞれ10パーセントと15パーセントにとどまった、とジャパンタイムズが報道しています。

顧客との対面による窓口サービスは、日本のほとんどの銀行や保険会社の日常業務で欠かすことのできないものとなっています。しかし、行員や社員、来客の安全を確保するためには、新たな業務形態の取り組みを検討・導入しなければなりません。大変革を実行する上で必要なことは、多くの行員や来客が同じ空間に集まって密の状態ができてしまうということを解消することです。米国の金融サービス企業S&Pグローバルによると、日本の金融機関の多くがデジタル技術の導入が他国に比べて遅れている理由は 利用者に高齢者が多いなどさまざまな要因が考えられますが、コロナ禍により金融機関は今後、益々、非接触型の取引方法を検討せざるを得ない状況になっています。

変革を進めるにあたって、事業目標や業務を精査することが重要です。今後の非接触型業務の可能性を検討するため、当社に寄せられるよくある質問やその解決策の分析結果を一部ご紹介いたします。質の高いサービスを維持しながら安全を確保するための参考にしていただければ幸いです。

CXストラテジー本部付
シニアエグゼクティブストラテジープランニングディレクター

カーダー ジェネッサ

※所属・役職は記事公開当時のものです。

現在の業務を維持しながら来店者数を管理するには

限られた営業時間の中では、同じ時間帯に多くの人が来店し、時には係員が応対できずに利用客を待たせてしまうこともあります。コロナ禍の新しい時代に密閉空間で人を待たせるということは、不必要に不特定多数の人と接触するリスクを利用客に負わせることになります。銀行の担当者が利用客に応対できるスケジュールを予測し、正確な面会時間を通知することができれば、利用客が他人との接触リスクをなくすことができるかもしれません。医療現場で活用されている人工知能(AI)技術を駆使して患者のスケジュールをデジタル管理するNavimizeというシステムは、この問題を解決するのにまさにうってつけです。AIが自動的に病院のスケジュールを調整し、診察時間に遅れが生じる場合は、何時に来院したらいいのか最新のスケジュールを患者に通知してくれます。銀行の場合では、自社のウェブサイトや携帯アプリにスケジュール調整機能をインストールするか、Navimize社のAI機能を利用することで簡単にこの技術を導入することができます。


対面でのコミュニケーションは安全で生産性が高いか?

日本では少し前からカフェやショッピングモール、さらには一部の銀行でもロボットが受付係として活用されています。一番人気のロボットはペッパーです。ロビーで客に基本的な情報やゲームを提供するロボットとして、2015年に株式会社みずほ銀行で導入されました。ペッパーはIBM Watsonの AI技術を装備した人型ロボットですが、できることは主に質疑応答と簡単な会話に限定されています。これと同じコンセプトがファーストフード店のKFCコーポレーション(KFC)でも導入されており、AI技術を同社のオーダープラットフォームに統合しています。日本でのペッパーの活用は主に客の質問に答えることに重点が置かれていますが、KFCのロボットは業務処理能力を備えているため、もっと幅広いサービスを行うことができます。KFCのロボットは、複数の方言や言語に対応できるよう開発された音声認識技術を介してさまざまな客に応対することもできます。支店の業務を代行できるように訓練された音声作動式ロボットを活用すれば、業務の機能が高まり、旅行客や外国人客の応対にも大いに役立つでしょう。


データ処理の間違いを減らし、処理時間を短縮しながらペーパーワークの量を削減できる

OCR(光学的文字認識)として知られる画像認識は何も今に始まったものではありません。実は、この技術が発明されたのは1920年代のことです。現在では、この技術は紙面上の情報を読み取り、理解し、その内容をデジタル処理できるよう整理するためにATM(現金自動預け払い機)に広く利用されています。レシートを読み取り、管理・分類するExpensify のような個人向けの金融資産管理アプリにも同じ技術が使われており、リテールバンクが既存の銀行アプリにFINANTEQ社製ソフトウェア開発キットを統合するような用途で利用することができます。

これと似たような画像認識技術の応用が、保険領域でも利用されています。自動車保険を扱う東京海上日動火災保険株式会社は、コロナ禍以前より事故や災害の損害査定の専門業者Tractableの画像認識機能を導入しています。交通事故に遭遇した保険加入者に事故現場の写真を撮影、送信してもらい、AI技術を駆使した分析を行うことで、東京海上日動の社員は現場に足を運ぶことなく査定をすることができます。この技術を導入することでデータ処理が迅速に行えるようになり、最終的に保険金が加入者に支払われるまでの時間が短縮されました。

データ処理を確実に成功させるには、技術の導入だけでは十分とは言えません。現在のワークフローや業務プロセスを評価することも必要です。電子商取引(EC)でのプレゼンスを確立している多くの小売企業は、ウェブサイトの立ち上げに際し、コンテンツの制作プロセスや社内ワークフローについて分析する必要があるため、こうした評価を実施した経験がおありだと思います。山と積みあがった紙の書類の承認作業も、デジタル化することで、ワークフロー管理ソフトや業務プロセス管理ソフトなど多くの有名なツールが利用できることがわかるでしょう。ソフトウェア企業のTemplafyによると、このソリューションを使用しない場合、社内の15パーセントの書類を紛失したり、乱雑な書類の山から社員がデータを探すのに2時間も時間を費やしたりする可能性があります。


顧客の本人確認を電子的に行い、ハンコリレーにさよなら

テレワークやデジタル化への障害で大きいのは、印鑑での押印で署名を行う従来型の本人確認のプロセスです。2000年、日本では企業が電子署名を用いることを認めた電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)が成立しました。これにより、利用者はリテールバンクの口座の開設や公証人を必要としない銀行取引をネット経由で行うことができるようになりました。Nippon.comの記事によると、電子署名を推進するクラウドサインの事業運営者は、「およそ6万5000社がこのサービスを利用しており、利用者の大半が中小企業で、大企業との契約に利用している」と言っています。

ある調査結果によると、米国人利用者のうち71.2パーセントがパスワード認証プロセスに満足しているということが明らかになっています。これに加えて、デジタル空間における承認プロセスとして生体認証を取り入れることも可能です。近年、日本ではATMに生体認証技術を導入する銀行が登場しています。生体認証機能を利用することで行員は利用客との接触を避け、スクリーンを操作する手間を省くことができます。セブン銀行はNECと共同開発した生体認証機能付きATMを秋から導入・入替をすることを発表しました。一方、新型コロナウイルス感染症が流行する中、みずほ銀行はグーグル・クラウド・ジャパン、大日本印刷、野村総合研究所と共同で高額取引の処理を可能にする顔認証システムを活用した試験プログラムを構築しました。


自分の会社に合った方法で

デジタル変革に乗り出す企業はそれぞれ違う取り組みをしていますが、あなたの会社が顧客に提供した体験がどんなものであれ、それはご自身の会社を映し出すものになります。対面型のハイタッチサービスを行う産業では、サービスの質や信頼性を担保するためにこうした業態を取っているのです。自社の営業を非対面型のロータッチ形態に変える場合でも、顧客体験の質を落とさないことを常に念頭に置く必要があります。電通アイソバー(現 電通デジタル)は独自の方法で、あらゆる規模の企業が新たなソリューションを開発し、関連する技術パートナーを精査し、新しい顧客体験を迅速に展開させ、顧客体験を核とした企業変革をもたらします。当社が提案させていただくすべてのロータッチソリューションは、新たな顧客体験を提供し、ハイタッチな品質を保証します。

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