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2022.04.20

日本企業に求められる、これからのグローバルCX/DX戦略

グローバル企業にとって、国ごとに合わせた良質なCXの提供が必要不可欠となっています。日本企業は、グローバルでどのようにCX/DXを進めればいいのか。本社のガバナンスを保ちつつ、国ごとにCXを最適化し、プラットフォームの整備を推進するためのポイントを、電通デジタル 菊地克彦が解説します。


コロナ禍で変化する世界のCX① 非接触な社会への対応が進む米国

全世界でコロナ禍は、CX(顧客体験)や消費行動に大きな影響を与えました。CXのデジタル化や消費行動のオンライン化が進み、以前からあったオムニチャネルという言葉が、いよいよ現実化、一般化してきたように思います。

米国では、「Buy Online, Pick up In-Store(BOPIS)」や「Curbside Pick up」という言葉が聞かれます。BOPISとは、アプリで事前に商品を購入して、お店の中で受け取れるサービスです。ロッカーに入れておいてもらい、自分で取り出す場合もあります。

Curbside Pick-upの「Curbside」は「道ばた」という意味ですが、実際にはお店の駐車場で商品を受け取ります。「駐車場に着いた」とアプリで連絡すると、店員が駐車場まで商品を持ってきてトランクに入れてくれるサービスです。どちらもまだ業界用語的な扱いですが、実際には日常的な消費行動の一部として定着しているようです。

このようなサービスは以前からありましたが、コロナ禍前の2019年に採用していたのは、米国の大手小売企業500社のうちたった4%、それが2020年には44%になりました[1]。2021年にはさらに採用が進んで、6~7割に達するのではないでしょうか。BOPISやCurbside Pick-upには、以下のようなメリットがあります。

○生活者の利便性が向上する
米国のスーパーの店舗はとても広いので、お店に行けば受け取るだけというのは、生活者にとって大きなメリットです。

○顧客情報や消費履歴のデータが取得できる
企業にとってもメリットがあります。アプリ経由なので、すべてのログがデジタルで残ります。これまで、オフラインの店舗では取得しづらかった顧客情報や消費履歴データが取得でき、CXのベースとして活用できます。

○配達の体制構築やピックアップの人員確保が不要
商品をお客様が取りに来るので、配達体制の構築や強化の必要がありません。追加の取り組みをせずにECをスケールアップできます。また、売り場から商品をピックアップするのは店舗の従業員です。大規模ECでは倉庫内で専門のピッカーと呼ばれる人たちが働いていますが、そのための追加人件費が発生しません。

こうしたメリットにより、元々は入場規制や営業時間短縮をカバーするために導入したサービスが、今では生活の一部になっています。

コロナ禍で変化する世界のCX② デジタル化の流れがより顕著に表れている中国

中国はモバイル社会、キャッシュレス社会です。インターネット利用者が10億1,074万人、日常的にECを使っているのは8億人以上といいます(2021年6月時点)[2]

そんな中で、コロナ禍をきっかけに大ブレイクしたのが「社区団購」。コミュニティ(社区)のまとめ買い(団購)のことです。大都市では大規模マンション単位、中小都市では地域のコミュニティ単位で、団長と呼ばれる人が共同購入のメンバーを募り、生鮮食品や日用雑貨をまとめ買いする仕組みです。日本だと生協が近いかもしれません。

生活者はショッピングが楽になり、まとめ買いなので割引で購入できます。団長は、取りまとめや分配の作業をする対価として、企業からコミッションを受け取ります。アプリ経由のサービスなので、企業は米国の例と同様にデータを蓄積できます。BOPISと違い企業が配達しますが、もっともコストがかかるラストワンマイルの配達費を負担しなくて良いので、配達コストが効率化できます。これらの複合的なメリットにより、ここ1年くらいは社区団購が中国でブレイクしているそうです。

他にも中国では、「ソーシャルコマース」という、ライブ配信とECが融合した世界最先端の試みも動いています。ECサイトやプラットフォームを使わず、TikTokでライブ配信し、そのまま商品を売るというモデルです。TikTokのアカウントさえ取れば始められるので、参入障壁はほぼゼロ。大規模の小売店やメーカーだけでなく、個人で参入している人も非常に多く、動画投稿やライブ配信をメインに活動するインフルエンサーのことを、中国では「網紅(ワンホン)」といいます。

米国も中国も、地域の特性に合わせてオンラインとオフラインをシームレスに統合するオムニチャネルが広がっていると感じます。これには、デジタル側のローカル対応も必要になってくるでしょう。

日本企業がグローバルCX/DX推進で直面している課題

グローバルでCXのデジタル化が進む中、「日本の競争力が下がっている」とさまざまな調査で指摘されています。IMD「世界競争力年鑑2021」によると、日本の世界競争力総合順位は31位(64カ国・地域中)と低迷しています[3]。日本企業にはもっと強い競争力があっていいはずです。なぜこのような状況になっているのでしょうか? 課題は以下の3つのキーワードにまとめられます。

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ここ数年、競争激化、顧客ニーズや接点の多様化、デジタルテクノロジーの高度化によって、CXの重要性が増しています。しかしながら、日本企業のCXプロジェクトの進捗状況は芳しくありません。

ガートナーの調査によれば、CXの取り組み状況は「必要だが未検討/進捗が遅い」が約3割、「必要なし」「知らない/分からない」を含めると全体の8割弱を占めます。ガートナーのアナリスト川辺謙介氏は、「CXプロジェクトは多くの部門が関係する。明確で強力なリーダーシップがないと進まない」と指摘しています[4]

以下の図は、当社のクライアント企業にヒアリングした結果、挙がってきたコメントです。さまざまな業界の、さまざまな役割の方にお話を伺いました。共通点は、「日本企業の本社所属」「海外マーケット向けの業務、現地法人の支援に携わっている」という点です。

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これを見ると、本社と事業部との関係性、現地法人との関係性、現地法人の中にも事業規模や体制の違いがあることなどが、課題として挙がっています。また、日本本社と現地でブランドイメージが異なるとき、どのようにメッセージの統一性を出すのか。CXを統一したいが、現地の体制やスキルセットを考えると、どう進めていいか分からないといった課題があります。

グローバルでCX/DXを推進するためのポイント

電通デジタルのクライアント企業で、グローバルにCX/DXを推進できているブランドや企業が大事にしていることは、以下の3点です。

①Digital First(デジタルファースト)
②CX Consistency(一貫したCX)
③Local Relevance(文化・環境最適性)

これまで欧米のグローバル企業では、本社がすべての方針を決め、どの国でもそれをそのまま導入する、というのが一般的でした。ただ、ここ1年くらい、現地の生活者の行動変容を起こすために、現地のオフィスを巻き込んでチューンナップしようというLocal Relevanceを重視する流れが出てきています。コロナ禍やオムニチャネルの動きと無関係ではありません。このような傾向は、日本企業がこれから大いに学ぶべきところでしょう。

先ほど、日本企業のグローバル担当者が感じている課題として、「本社リーダーシップとガバナンス」「CXの設計と最適化」「DXの推進」の3つのキーワードを挙げました。これをもう少し掘り下げたのが以下の図です。日本企業はこの3つの視点で課題を整理し、CX/DXを推進すべきです。我々もこの3つの軸で日本企業を支援しています。


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○グローバル・ガバナンスモデル
ガバナンスについては、まずCoE(Center of Excellence)をどこに置くべきかという問題があります[注1]。我々の経験では、グローバルでのCX/DX立ち上げ期や推進期においては日本本社にCoEを持ち、権限も集中すべきです。CoEを設置する際に注意すべき点を3つ挙げます。

・人材、スキル、予算をしっかり置く
・ビジネスチームとインサイドセールス(IS)チームの両方から人材を集める
・CX推進チームのリーダーは兼務ではなく、専任でアサインする

また、実際のプロジェクトでは、以下の点に注意します。

・CXのストラテジーをしっかり描く
・ストラテジーが絵に描いた餅にならないように、ツールやプラットフォームを構築する
・ローカルマーケットごとにプラットフォームをチューニングし、予算もつける
・CX/DXの予算は、一度CoEに集約する

もう1つ、成功に向けて必要なものは、強いリーダーシップです。リーダーに対しては、マネジメントからのコミットメントやサポートも必須です。また、日本でCoEだけが動くのではなく、各リージョンやマーケットごとにカウンターパートとなるチームが必要で、各マーケットへ十分に説明し、十分な理解を得ることが重要です。

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○CXのグローカリゼーション
グローバルにガバナンスを効かせつつも、最終的にはCXをローカルに合わせてチューンナップします。プラットフォームが統一されていない、存在していないという場合は、統一プラットフォームを導入するところから始めます。

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○マーケットを横断したDXプラットフォーム
プラットフォームの構築は戦略ありきです。まずはグローバルな「CXマスターモデル」を作り、その後にローカライズします。ローカルの要件をしっかり聞いて、ローカルロールアウトを進めます。

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従来は、Local Relevanceをあまり考えずに、グローバルで共通のCXを導入するというケースが多々ありました。しかし、はじめに紹介した米国のBOPISや中国の社区団購を見ると分かるように、同じECでも購入後のアクションが国によって異なります。日本企業がグローバルでECを展開するなら、ローカル固有の事情にどこまで合わせるのか、どのようにグローカリゼーションするのかが課題になります。

電通デジタルが支援できること

最後に、上記3点について、電通デジタルがどのように支援できるかを紹介します。

まず「グローバル・ガバナンスモデル」ですが、CX/DX立ち上げ期・推進期の日本企業は、CoEを日本に持つべきです。その場合、日本にプロジェクトマネジメントオフィス(PMO)を設置する方が良く、それを支援するパートナーも日本企業が望ましいでしょう。

ただし、グローバルオーディエンスを前提としたCX/DXなので、日本人だけのチームで実行するのは無理です。グローバル人材を集めてチームを作り、現地法人をサポートするのが1つの方法です。電通デジタルにはグローバル社員が多く在籍していますので、グローバルで支援できる体制が作れます。


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「CXのグローカリゼーション」については、電通デジタルは源流が日本最大手の広告会社・電通です。他のコンサルティングファームやSIerと比べて、マーケットや生活者についてしっかり理解できている自負があります。また、電通インターナショナルネットワークでは、世界の145の国と地域で6万人以上のスタッフがCX領域に従事しており、地域ごとのチューンナップには強みを持っています。もちろん、電通グループとして日系のグローバルネットワークであることも強みの1つです。

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「DXプラットフォーム」については、我々はベンダーフリー・ツールフリーの立場で、CXマスターモデルを実現するために最適なソリューションを選定・構築します。もちろん、本社の視点だけでなく、ローカルで運用する側の視点も考慮し、最適なツールやプラットフォームを提案します。

電通デジタルは「スケール」「リソース」「グローバルの知見」を組み合わせ、グローバル市場におけるクライアント企業のCX/DXを支援します。ベストプラクティスを基盤としたグローバルプロジェクト推進の実績も豊富で、日本本社のCoEを支援するプロジェクト推進体制も整っています。ぜひご活用ください。

●脚注
○注釈
1.^ CoEとは、組織横断型の特定課題に専門特化し、高度な研究・開発活動を行う集団・拠点のことを指します。
○出典
1.^ "Five Things Businesses Should Know About BOPIS". Forbes(2021年5月11日)2022年3月25日閲覧。
2.^ "インターネット利用者数は10億人超えに". 日本貿易振興機構(2021年9月16日)2022年3月12日閲覧。
3.^ "IMD「世界競争力年鑑2021」からみる日本の競争力 第1回:結果概観". 三菱総合研究所(2021年10月7日)2022/03/12閲覧。
4.^ "ガートナー、日本企業のカスタマー・エクスペリエンスへの取り組みに関する調査結果を発表". ガートナー(2021年6月7日)2022/03/13閲覧。

菊地 克彦 Katsuhiko Kikuchi

マネージングディレクター
日系電機メーカーにてキャリアを開始後、外資系マーケティングエージェンシーへ転職。FMCG(日用消費財)、B2B、デジタル統合マーケティングなど幅広い領域にて多くのクライアント企業を支援。2016年に電通アイソバーに入社、2021年7月の電通デジタルとの合併に伴い、現在は電通デジタルにてグローバルビジネスを担務とする。内外企業のグローバルプラットフォーム構築・運用案件でのPMO支援経験を有す。

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