2020.06.19

ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジーズサミット レポート

今年2月、電通アイソバー(現 電通デジタル)東京で開催された「ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジーズサミット」に参加しました。当サミット内のセッション“苦境を乗り切るカスタマー・エクスペリエンス・リーダーの心得”の中でガートナーは、「86%の企業が今後2年の内にカスタマー・エクスペリエンスを巡って競うようになる」と報告しました。 現在、新型コロナウイルスの影響によって、CXを巡るこのような傾向は加速化しています。

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ガートナー社によると、カスタマー・エクスペリエンスとは「サプライヤーの従業員、システム、チャネル、プロダクトとのインタラクションから生まれる、単発かつ累積的な結果に基づいた顧客の認識とそれに付随した感情」を意味します (*1 Gartner, IT Glossary, “Customer Experience”, https://www.gartner.com/en/information-technology/glossary/customer-experience)

電通アイソバー(現 電通デジタル)取締役 田中信哉は、セッションの中でCXについて、「良質なCXをデザインするということは、テクノロジーをどう使うか、どのようにしてお客様に違和感を与えずに目的地までエスコートするかを慎重に考えるということ」と説明しました。

世界的なパンデミックが引き起こした経済状況の変化によって、この短期間での企業と顧客とのインタラクションは益々重要となってくる可能性があります。電通イージス・ネットワーク社の調査によれば、香港の小売売上高が25%減少した一方で、良い成果を上げている業界では、この時期の顧客を支援するためのオンラインエコシステムを構築しています。 日本のその他レポートでも同様に、銀座付近の店舗での来客数の減少が示されています。

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本来、これらの業界が提供するカスタマー・エクスペリエンスとは、利便性の高いサービスを提供することで顧客に価値をもたらすか、または顧客がデジタルの力でニュー・ノーマルを実行できるよう支援するといったものです。また、ガートナーは、多くの日本企業(約30%)にとって、デジタルでビジネスを行うことには文化的な障壁があると報告しています。

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また、ガートナーは「日本企業の約64%はCXプロジェクトに着手しておらず、計画すらしていない」と報告しています。多くの日本企業はこういった目標を実現するための十分なデジタル・トランスフォーメーションおよびシステムを備えていません。例えば、CXの設計にあたっては、プロジェクトを横断的に進めていくことが不可欠となりますが、それを実行する権限を持つ役員やビジネス・マネージャーが不在なため、各担当部署間での連携が困難となっています。連携体制を構築しようとしても、組織、専門知識、文化およびKPIが異なることが原因で、組織間で分裂が生じてしまうのです。

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電通アイソバー(現 電通デジタル) 田中信哉は、CXを二つの矢印に分けて説明しています。下記はフォッグ式消費者行動モデルに基づいています。

1.→:モチベーション

この矢印は目標に向かうために心を動かす力を指します。 クリエイティビティとアイデアはモチベーションの原動力となります。これらの領域こそ、まさにクリエイティブおよびマーケティング部門が得意とする分野と言えます。

2.↓:障壁をなくす

この矢印は、障壁を最小限に抑えて目標達成への障害を排除する力を表します。テクノロジーとデータを活用することで、優れたCXを実現します。主にITおよび取引データ分析の領域です。

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上述した二つの矢印が重なり合うことで、優れたカスタマー・エクスペリエンスとなるのです。

CXが企業にとって今後重要となってくることを考えると、CXへの取り組みを始めることは非常に困難に感じられるかもしれません。しかし、貴社はCX開始にあたって利用可能なツールを既にいくつか備えているかもしれません。つまり、デジタル・カスタマー・エクスペリエンスを進化させるため、今日からでも段階的に始めることができる状態なのです。

社内にある既存のツール、データ、インフラストラクチャーを使用して、それらを元にCXを確立させるためにできることがあります。下記にてご紹介します。

1. 顧客と接する従業員の意見を聞く

サービス重視の文化を持つ日本では、大多数の従業員は顧客の考えをよく理解しています。ビジネスの他領域でオペレーションを担う従業員とは異なり、彼らは日常的に直接顧客とコミュニケーションを取っています。また、顧客接点のある従業員のツール、カスタマーレビュー、ヘルプセンターおよびよくある質問集を参照することで、顧客との摩擦を取り除くために必要な貴重な洞察を得ることができます。
顧客対応を担う従業員とツールの知見を応用することで、カスタマー・エクスペリエンス委員会の結成が可能となります。この委員会主導で、カスタマージャーニーの中で顧客に生じるさまざまなニーズを把握し、また顧客と会社間のインタラクションを把握することができるようになります。顧客ロイヤリティ、アドボカシー、解約などの観点からどこが最も重要か評価することは、社内のどの分野へ優先的に注力していくべきかを顧客目線で決定する際に役立ちます。

2. メトリクスを用いて重要な顧客ニーズを把握する

大半の企業は、解約、取引情報、および顧客満足度のレベルを測るためのメトリクスを既に設定しています。これらの基準は、最もサポートを必要とするカスタマー・エクスペリエンスは何か、判断するのに有益です。しかし、顧客体験を向上させるには、これらのメトリクスの裏にあるモチベーションを理解することが鍵となります。IsobarにはMindsightというデジタルツールがあり、カスタマー・エクスペリエンスのあらゆるポイントで顧客の感情的な動機を測定することが可能であり、日本を含む世界中での利用を想定して最適化がなされています。
ソーシャルリスニングと検索データをもとに、感情的動機をマッピングするのも一案です。香港からの電通イージスによるCovid-19レポートを分析した結果、この時期の顧客の検索パターンはMindsightの感情的なモチベーションと非常に関連性の高いことが分かりました。

  • セキュリティまたは安心感を得るためか、ビタミン関連の検索が59%も増加していました。
  • エンパワーメント、もしくは何らかの達成感を味わうためか、eラーニングに関連したウエブ関連の照会は90%増加し、YouTubeでは在宅ワークアウトが250%増加しました。
  • 一体感や連帯感を感じたい、あるいは見逃したくないという気持ちもあってか、映画の検索は178%も増えました。
  • 愛情をこめて面倒を見る、また世話をされる実感を得たいためか、レシピのウエブ検索は61%増加しました。

3. 顧客のニーズを理解するだけでは不十分であり、企業は行動しなければならない

ガートナー カスタマー・エクスペリエンス&テクノロジサミットでは、「Start Before You’re Ready - 準備が整う前に開始する」ことが重要であると述べられました。
重要なのは、データを網羅的に取得したりまたそれらを正しく処理したりすることではなく、そもそも必要なものが揃い、開始にあたっての準備ができているかという点です。まず、企業はビジネスの原動力である顧客について再考していきます。特に、日本企業としては、生きがいとされる信条または会社としての目標を真摯に受け止めることが不可欠です。会社がなんらかの方法で顧客に積極的にサービスを提供しなければ、その会社は一旦何を目指して存続しているのでしょうか。

 

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電通アイソバー(現 電通デジタル)は、「CXとは、お客様の心を動かすクリエイティビティのあるCXを提供すること。言い換えれば、ユーザーやお客様が先導されているという意識なく、上手にエスコートされていると感じるようなエクスペリエンスを生み出すこと」と考えています。


今、CXが必要とされる理由とは?

企業のポジショニングは刻々と変化しています。例えば自動車メーカーは、顧客の生活において、オーナーシップとレンタルという2つの主要な役割を担っており、両分野で事業を行っています。 またUberは、プロダクトとしてのサービスに焦点を当てることで、カスタマー・エクスペリエンスのシンボルとなっていきました。

今は「サービスとしてのプロダクト」の時代です。こういった変化に伴い、企業は顧客価値主導の世界で自社の価値を再検討するよう迫られています。企業は、顧客の生活にシームレスに溶け込む価値を提供しなくてはいけません。企業が顧客価値の提供を目指し、変革する手段を講じない場合、消費の新たな潮流に取り残されてしまうかもしれません。

この変化の激しい時代の中で、CXに基づいた将来ビジョンを構築するためには、これまでの物の見方を変えることの重要性を理解し、またそれに適応するために利用可能なツールを今すぐ使い始める必要があります。

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