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2022.04.08

CMS導入で実現する医療機器・製薬会社のDX 6つの施策と3つのステップ

コロナ禍の影響により、医療機器・製薬会社でもDXが進んでいます。オンライン顧客接点を整備し、MR活動と連携するマーケティングサイクルを構築するには、何から始めれば良いのか? DXを実現する6つの施策と、導入の3ステップを、アカウントイノベーション部門 アカウントディベロップメント部 髙田 拓之が解説します。

※この記事は、2021年11月24日~26日に開催した「DX Conference Vol.1 by Dentsu DX Ground」のセッションを採録し、再構成したものです。


コロナ禍でリアルの顧客接点が激減

コロナ禍以降、医療機器・製薬業界全体ではリアルの顧客接点が減っており、オンラインに移行せざるをえない状況にあります。とはいえ、オンライン接点をコンバージョンにつなげていくという視点が欠落していては、セールスを着実に伸ばすことはできません。DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは急務だが、医療機器・製薬業界向けのベストプラクティスが見つかりづらい。そのように感じている方が多いのではないでしょうか。

医療機器・製薬業界がDXで目指すべき方向は、「医療」と「デジタル」が融合したサービス提供です。そこへ向かう前に、医療機器・製薬業界のDX課題から考えていきましょう。

医療機器・製薬業界におけるDX課題

近年、医療機器・製薬業界は、3つの課題を抱えています。

①コンプライアンス強化で顧客接点が減少
コンプライアンスの強化によって、講演会費や接待交際費の利用を控え、接待や会合が原則禁止となった企業が多くなりました。その結果、これまでのリアル接点がなくなり、顧客(医療従事者や研究者など)との関係維持が難しくなっています。

②病院側による訪問規制
コロナ禍において、MRの訪問を規制する病院、診療所、クリニックが増えています。実際に訪問できる場合も完全予約制で、「こまめに立ち寄る」ことは難しい状況です。

③患者のより客観的な情報ニーズ
ネット検索やセカンドオピニオンが当たり前になったことで、患者は、より透明性の高い正しい情報を求めるようになりました。企業が自社に有利な情報だけを提供していたとしても、副作用や比較情報など、より客観的な情報を求めるニーズが高まっています。

これらの課題に対応するには、やはりデジタルチャネルを駆使したアプローチを開拓していくことが一番効果的なのですが、顧客の状況変化にも目を向けておく必要があります。

顧客コミュニケーションはオンラインにシフト

医療機器・製薬業界を含むBtoB全般に言えることですが、製品の検討から商談・契約まで、全てオンラインで完結するケースが増えています。オンライン化によって起きた一番大きな変化は、顧客が主体的に検討するようになったことです。検討フェーズが非常に長くなり、商談フェーズは短縮されました。オンライン商談時に必要な情報がそろっていれば、もはや対面営業は必要ない状況も生まれています。

d-f-p-c-b-i-c_01コロナ禍以降、訪問営業よりリモート営業を好む顧客が増えました[1]。リモート営業を好む理由で多かったのは「できないことを明確に伝えてくれるから」。知りたいことはWebサイトで調べればいい、という顧客心理が分かります。ここで押さえていただきたいのは、顧客は検討段階で必要になったときに、「Webサイトに行って自分で調べる」ということです。こうした状況を踏まえ、MR活動もオンラインに移行しています。4つの傾向に注目しておきましょう。

1.処方変更の情報源が、ネット講演会などオンラインへ移行
2.スマートフォンアプリを導入し、医療従事者の都合に合わせて連絡
3.訪問規制によりMRの医師カバー率が半減
4.会員ポータルサイトなどオンラインによる情報提供が増加

これらの傾向から、MRの顧客情報取得の手段としては、対面や電話に代わり、ネット講演会やデジタルコミュニケーションツールがさらに広まっていくことは確かでしょう。

MR活動のオンラインシフトを実現する6つの施策

こうしたオンラインシフト、すなわちDXに対応するには、6つの施策が必要です。

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医療従事者向けサイトの利用拡大
まずやるべきは、医療従事者向けのWebサイトで検索性を高め、提供内容を充実させ、価値を上げて利用者を増やすことです。また、サイト分析によるサイト改善のPDCA運用も必須です。

患者向けサイトの利用拡大
患者向けのWebサイトは、認知を促進する活動、信頼感を高めるための施策が欠かせません。例えばお悩み相談、予防・受診情報、専門情報を分かりやすくし、正しい知識を提供することなどが必須です。

外部チャネルからの流入強化
流入強化で見込み顧客の母集団を増やします。広告運用、SEO、ブランディング、Webメディアへの出稿、取材協力による露出など、全方向で取り組みます。

潜在ユーザーを新規顧客化する施策
医療従事者にはMA(マーケティングオートメーション)を利用し、見込み顧客として育成します。一般ユーザーには、疾病への関心、体調不良などの悩みを顕在化させるコンテンツで気づきを与え、新規顧客になるきっかけを作ります。

システム、チャネル間の有機的な連携
複数サイトを運用していても、顧客データは裏側で一元化できます。例えば医療従事者向けサイトから患者・ご家族向けのサイトに遷移させて、患者指導に活用してもらうなど、サイト間連携も有効です。

MR主導のチャネル活用
顧客行動データを把握することで、MR活動のヒントにし、MRが率先して最適なチャネルでアプローチする戦略を取ります。

以上、6つの施策をコミュニケーションマップに落とし込んだのが以下の図です。

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自社メディアは、「医療従事者向けサイト」と「患者・ご家族向けサイト」(図の下段)。この2つから、自社MR、外部媒体、ペイドメディアなど(図の中段)を利用して、対象顧客(図の上段)へ情報を発信します。

医療従事者向けサイトには、製品情報、カタログ、問い合わせフォーム、講習動画といったコンテンツを掲載し、ユーザーの行動データを集計します。データは自社MRに還元するというサイクルを回すことで、顧客の満足度向上とマーケティング効率向上を目指します。

デジタル施策設計は、顧客理解を基軸に

医療機器・製薬企業がDXを実現するにあたり、担当者はどこから手をつければ良いでしょうか。私はまず、「カスタマージャーニーマップを使った既存顧客の理解」から始めることを勧めています。

BtoBにおいては、取引関係の有無で状況が大きく異なるため、カスタマージャーニーは、「デマンドプロセス」(成約前)と「グロースプロセス」(成約後)で分けて作ります。これにより顧客属性や顧客理解に合わせた施策が考えやすくなります。


d-f-p-c-b-i-c_04そして先々は、顧客データを統合することによって2つのプロセスを統合し、マーケティング、インサイドセールス、営業にも受注後のデータを活用することが望ましいでしょう(下図)。受注後のカスタマーサクセスやABM(Account-Based Marketing)に展開するには、顧客の状態を管理するデータ収集も重要となります。このような施策設計を自社の顧客をイメージしながら進めていただければと思います[注1]

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DXを実現するための3ステップ

実際にWebサイトを構築するには、時間も労力もかかります。そこで、電通デジタルでは、DXを段階的に実現する3ステップ方式をお勧めしています。

ステップ1:外部サイト統合基盤の構築
まずCMSで「医療従事者向けサイト」と「患者・ご家族向けサイト」を作ります。オンラインの顧客接点を強化するとともに、統合基盤によって、業務の効率化やコストの削減、顧客データの一元管理を実現します。

ステップ2:デジタルマーケティングの活性化
2つのサイトから収集したデータを活用し、コンテンツのパーソナライズや、MAによるOne to Oneメッセージなどで、顧客へ的確にアプローチします。

ステップ3:マルチチャネル対応
CDP(顧客データ統合基盤)の構築や、機械学習の活用によりマルチチャネル対応を進め、さらに効率が良いマーケティングシステムを構築します。

d-f-p-c-b-i-c_06図にある「Acquia(アクイア)」とは、CMS機能とマーケティングテクノロジー機能を備えた製品で、弊社で提供できるCMSの一つです。ステップ1ではCMS機能のみ、ステップ2以降ではマーケティングテクノロジー機能が必要です。

医師の新薬採用をサポートするDX事例

Acquiaを使い、医師の新薬採用をサポートするマーケティング施策を行った事例を紹介します。

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「認知」「情報収集」「購入検討」というカスタマージャーニーの中で、オフラインとオンラインを使い分け、温度感を探りながら営業支援を行い、成約につなげる、という施策です。

初月にオフラインからWeb講演会のイベント案内をお伝えします。医師が参加した場合は、Web視聴履歴が残ります。

後日、CMSのマーケティング機能を使い、お礼メールを送ります。医師がメールの論文リンクをクリックしたら、クリック履歴を確認の上、MRが感想をヒアリングしたり、オンラインで順次情報を提供したりします。

このようにオフラインのMR活動とオンラインのアプローチを使い分け、徐々に新しい薬への興味・関心を持ってもらい、最終的に成約に結びつけるという流れです。

One to Oneマーケティング基盤の構築事例

もう1つ、医療機器メーカーにて、医療従事者向け会員サイトをリニューアルし、顧客管理機能を改善するとともに、コストダウンにも成功した事例もあります。

この会社ではオンプレミスでWebサイトを運用しており、セキュリティコスト、運用コストなどの負荷がかかっており、Webサイトのデザインも古くなっているといった課題がありました。

そこでわれわれは、あるべき姿として、トレンドを押さえたデザイン、システムの刷新、セキュリティ担保と同時にコストダウンが図れるSaaSでのシステム運用の一本化、顧客データの統合を提案しました。

まず1つの診療科でサイトを構築、検証を進めることで、構築時の負担を回避。段階的に診療科を追加し、運用を一本化することで、最終的にはCMSの運用コストを下げ、デザインの統一を実現しました。

このクライアントでは、データ統合によりパーソナライズした施策が打てるようになったことで購買率が向上し、投資対効果も改善されました。


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ツールを活用するのは人

どんなツールでも、活用するのは人であり、営業担当のMRです。営業活動においてどのようにオンラインとオフラインを連携し、活用するかを見据えながら、それに合わせて最適な環境整備を進めなくてはなりません。医療機器・製薬業界のDXに関して必要なご支援、ご相談がありましたら、ぜひお気軽にお声がけください。

脚注

注釈
1. ^ BtoBマーケティングでのカスタマージャーニー活用に関しては、「BtoBマーケティングのDXは、なぜ進まないのか?成功のための打ち手をCX視点から完全解説」も参照してください。

出典
1.^  "日本の営業に関する意識・実態調査2021". HubSpot.(2021年2月8日)2022/02/20閲覧。

髙田 拓之  Hiroyuki Takada

アカウントイノベーション部門 アカウントディベロップメント部
ソリューションディレクター

眼鏡業界にて10年以上にわたり小売り・営業・ECサイト運営を経験後、ECプラットフォームおよび支援企業にて8年以上にわたりEC構築・運用支援に従事。長年のECサイト運営の経験から、Web広告はもとよりCRMを起点としたフロント施策、カスタマー、フルフィルメント、また自身のバイヤー経験からサプライチェーンマネジメントの実績も持つ。2021年より現職。

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