ここ数年、日本国内におけるEC化率は右肩上がりに伸び続けてきました*。また、コロナ禍による外出自粛等の影響でこの勢いはさらに加速し、「BOPIS(Buy Online Pick-up In Store)」モデルなど新しいコマースの実現を目指す企業も非常に増えています。
しかし、企業やブランドによる“売り方”が進化する一方で、「顧客視点で考えた時、eコマースの購買機能そのものは顧客にとって便利に変化したのだろうか?」と、疑問を投げかけるのは、電通アイソバー(現 電通デジタル) ビジネスディベロップメント部 エグゼクティブソリューションディレクターの船井宏樹です。
ここでは、電通アイソバー(現 電通デジタル)とアクイアジャパン合同会社が共催したウェビナーにて船井が語った内容をもとに、顧客視点でeコマースを捉え直した時、どのような機能や仕組みが求められ、それを現実にするためになぜヘッドレスソリューションの導入を検討するべきなのか? についてお伝えします。
eコマースで「実現できたら嬉しいこと」はたくさんある!
冒頭にも触れたように、eコマースを“買う側”である顧客の視点で捉えた時、今日ではどのような利用スタイルが考えられるのでしょうか?
船井は自身の経験を交え、次のようなシチュエーションが考えられると例を挙げました。
「今日、ソーシャルメディア上でのみの付き合いというのは珍しくない。また、そうした、本名や住所、電話番号を知らない友達に対して、日頃の感謝やお祝いとして何かプレゼントを贈りたいと思うこともあるだろう。
しかし、そう思ったとしても、一般的なeコマースの“常識”では、カートに商品を入れ、お届け先住所を入力し、決済方法を入力して完了というステップを踏まないと注文を確定できない。つまり、個人情報を知らない相手にはプレゼントを贈れない、というわけだ。これは、顧客の側からすると残念に感じる体験だと言えるし、昔から変わらないeコマースの常識では今日の顧客のニーズを満たせない場合がある、ということを教えてくれてもいる」。
もしこうした時、カートに贈りたい商品を追加して決済入力まで手元で済ませ、あとは贈る相手に通知を飛ばしてその相手が自分で住所入力すれば完了となる、という機能があれば、顧客にとってはニーズが満たされ、同時に、企業にとっても機会損失を避けることにつながるかもしれません。
また、今までできなかった購買フローが選べるようになることで、新たな利用モデルを顧客が“発見”してくれる可能性も出てくるでしょう。
他方、eコマースで避けたい状況のひとつである「アクセスが混雑していてつながらない」という問題についても、顧客視点で考えたなら「エラー画面を出す」以外の発想が生まれる、と船井は指摘し、次のように述べました。
「店舗で行列を待つように『ただいま混み合っております。あなたの前には300人が待っていて、およそ待ち時間は15分です』と待ち時間を可視化できたら顧客はどう思うだろうか?
そして、その間に未公開のCMを流すなどしてプレミア感を味わってもらいながら、時間を置いて再来訪するかこのまま待つか、顧客自身が判断できるようになれば、きっと『待ち時間』に対して感じる気持ちを変えることができるはずだ」。
優れた顧客体験(CX)を叶えるには?
上述の通り、顧客視点でeコマースを捉え直すと、ECツールの選定などの場面でも考え方が変わってくるはずです。
例えば、今まではeコマースを始めるにあたって「ECツールのパッケージに、マーケティング機能やコンテンツ管理機能、商品管理機能等は揃っているか?」が重視されてきましたが、むしろ、「顧客が真に求める体験はどんなことかを先に考えて、それに見合うツールを導入する必要がある」という発想になるというわけです。
では、そもそも優れた顧客体験(CX)とはどのように検討し、施策につなげていけばいいのでしょうか?
この問いに対し、電通アイソバー(現 電通デジタル)では下図を示し、「優れたCXはいつも、心を動かしゴールに導くMotivationと、ゴールに向かう際の障壁を排除して徹底してつまずきを無くすFrictionlessの2つの矢印でできている」とお伝えしています。
前者の「Motivation」は広告が得意とするコミュニケーションの領域であり、後者の「Frictionless」はマーケティングテクノロジーの領域だと言い表せます。eコマースの成功を目指すには、この2つがしなやかに関係しあっていることが求められると言えるでしょう。
CXを向上させるためにヘッドレスアーキテクトが必要
企業ごとの「優れたCX」がどのような姿か見えてきた上で、次のステップとして「本名も住所も知らない友達に贈り物をする時」あるいは、「アクセス混雑でエラー画面が出るような状況になった時にプレミアムな体験を実現したいと思った時」といった新しい取り組みに向かうにあたり、注目したいのが現状の理解です。
多くの場合、コマース領域全体を俯瞰すると、各システムがそれぞれ個々に機能している(下図左)状態であると想像できます。
この状態の場合、個々の機能は確かに果たせているでしょうが、新しい施策に取り組むことが技術的に難しかったり、コストがかかりすぎたり、となってしまうケースが多々見受けられます。
その解決方法として、近年、ヘッドレスアーキテクトによって柔軟かつ一貫性のある対応が叶う環境を整えよう、という議論が活発になってきました。
ヘッドレスアーキテクト(上図右)とは、フロントエンドとバックエンドが分離された構造(アーキテクチャ)をもつシステムのことを指します。
「上図右では、様々なツールからヘッドレスソリューションに向けて矢印が伸びているが、このようにAPIでいろいろ繋がることにより、お客様に提供する情報の間を取り持つ役割を果たすのがヘッドレスソリューションだ」と、船井。
例えば、「コンテンツそのものをデバイスと分離して持つことで、それぞれのデバイスに適したUXをAPIを通じて柔軟に提供することができるといったメリットが挙げられる」というヘッドレスの利点を解説しました。
そして、「より良い顧客体験を提供するために、柔軟なシステム構成を実現する。こういった点で、ヘッドレスソリューションの導入は非常に有効な考え方だ」としました。
「Kirimori」がフロントとバックエンドをスマートにつなぐ
前述のような利点をもたらすヘッドレスソリューションは、今日eコマースを実践する企業から非常に関心をもって見られているものです。そうした流れを受けて、クライアント企業様が柔軟な顧客体験を実現できるよう、電通アイソバー(現 電通デジタル)では「Kirimori」というヘッドレスソリューションを開発しました。
この「Kirimori」というソリューション名には、企業の情報が詰まったバックエンドとフロントとをうまく“切り盛り”できるように、という思いが込められています。
船井は、大規模な開発をせず企業の成長に合わせて少しずつ拡張ができる点のほか、「様々な接客ツールとも、もちろん連携しながら素早い速度でコンテンツを返すというパフォーマンス面でもメリットが期待できるものだ。
アクイアが提供するCMSやShopifyのようなeコマースの製品と連結させることにより、柔軟な購買体験の構築といったことを可能にする」と、「Kirimori」の特性を紹介しました。
そして最後に、「お客様と企業との間でどのようなコミュニケーションを行なって関係性を構築していくかという考え方と、それを実現するためのマーケティングテクノロジーの2つが混ざり合ったところに優れた顧客体験(CX)がある。
我々電通アイソバー(現 電通デジタル)はそのようなCXをデザインする『CX Design Firm』として、マーケティングコミュニケーションやそれを実現するための『Kirimori』のようなマーケティングテクノロジーの両方を一気通貫で提供していく」としました。
「Kirimori」の紹介サイトやヘッドレスソリューション関連記事では、その詳しい特性や「eコマースを顧客視点で捉え直した時に実現するとより便利だと想像できるアイディア」などについて触れています。こちらもぜひご高覧ください。
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