2021.03.17

CX (顧客体験)がビジネスを危機から救う

優れたCXには、消費者の購買動機(モチベーション)を高め、負荷となる「フリクション(障壁)」を減らすことが重要です。顧客体験を構築する際、エクスペリエンスの最適化と価値を向上させ、差別化をすることに重点が置かれることが多く、ソリューションを掲示したり、テクノロジー分野での企業間やブランド間のコラボレーション強化、システムインフラを向上することと比較し、フリクションを減らすことは、優先度が低い傾向にありました。しかし、新型コロナウイルス感染症により、社会が変化し、実店舗や各種イベント会場等へ足を運ぶ人が大幅に減少。時短営業やデジタル化対応、インフラへの負担、従業員の疲労、さらには顧客の不安感や懸念など、顧客とビジネスの間に新たな障壁が数々発生しました。そのため、今日ではフリクションレスな顧客体験を提供することが益々重要となっています。 世界各地で新型コロナのワクチンの予防接種が開始されましたが、ここで昨年までのことを振り返ってみましょう。新薬やワクチンの開発と承認、治療薬の供給方法は、サービスや商品の市場供給プロセスのフリクションを取り除く参考になります。ワクチン開発の各段階を参考に、今日のビジネス市場におけるフリクションの減少と、コロナ禍に対応したプロセスデザインをご紹介します。

電通デジタル CXストラテジー本部付
シニアエグゼクティブストラテジープランニングディレクター

カーダー ジェネッサ Jenessa Carder

※所属・役職は記事公開当時のものです。

既存の専門知識を評価する

コロナの影響で、タイムラインと予算の両面で逼迫され、企業やブランドは「効率性」を考慮することが必要になりました。ワクチンを開発する際には、既存の技術や知識を新しい課題に適用することが不可欠でした。ワクチン開発に取り組んだ製薬会社は、まったく新たなソリューションを開発したのではなく、既存の研究と投薬のシステムから別の異なる療法を構築し、特定することからコロナワクチンの開発を開始しました。調査研究では、AIを駆使して大量のデータをすばやく検索、利用可能な治療薬や投与方法の特定に役立てました。AIがワクチン開発プロセスを加速させましたが、企業やブランドはAIを活用しなくても、SWOT分析手法をもとに簡単なブレインストーミングを行うことで、適切なソリューションを見出すことができます。つまり、「強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)」を特定し、御社の市場での立ち位置を明確にすることで、市場機会や事業課題を発見することができます。


多様性を重視したチーム編成

イノベーションを起こすためには、各分野のエキスパートと斬新なアイデアが必要だと専門家は指摘します。言い換えれば、実現可能かつ現実的なアイデアと、新しいアプローチを見出すためには、多様性のあるチーム編成が非常に重要であるということです。世界の医療界から複数の臨床試験の結果が発表される中、医療専門家が、イノベーション分野の専門家の考えをどのようにワクチン開発に取り入れたのかが明らかになりました。バイエルやファイザーなどの大手製薬会社は、いずれも必要最低限の量の薬剤を、効率よく疾患部位に届ける技術「ドラッグデリバリーシステム」の新たなプラットフォームを開発したスタートアップと提携しています。多様性のあるチームこそ、ワクチン開発の成功のカギでした。多様性あふれるチームをつくる際には、パートナー会社、顧客、事業部門の代表をそれぞれ明白にし、その役割を再確認することが重要です。チームのメンバー一人一人役割と責任があり、それぞれがやるべきことを果たすことで課題を解決することができます。電通アイソバー(現 電通デジタル)では、迅速な対応と、革新的な思考を保証できるようプロジェクトチームを編成しています。


短期・長期的な対策を同時並行で進める

危機に直面した時、差しせまるニーズに対応すると同時に、長期的なニーズも見据えて、経済的なダメージから回復することも必要です。同時並行で短期・長期的な課題に取り組み、企業業績に対する打撃を最小限に抑えて、タイムリーかつ効率的に回復に向かうことが重要なのです。予防接種の実施計画がその具体例です。ワクチン開発チームは、ワクチンの有効性が確認される前から、その普及を見据えて、インフラを構築しました。そのため最終的には、ワクチンを世界中に広めるための準備と、ワクチン接種の需要をまかなえる体制が整いました。このように危機時には、短期的な策を練るチームと、経済的な回復を見据えて長期的な対策を立てるチームが必要です。短期的な問題にとらわれるあまり、長期的な問題解決がおろそかになることが多くなります。しかし、長期的なニーズに対応しなければ、長期目標達成はもちろん、回復が遅れ、回復鈍いほど状況は悪化してしまいます。電通アイソバー(現 電通デジタル)が提供するソリューションは、このことを配慮し設計し、長期目標を達成するために必要なインフラ・エクスペリエンスを構築すると同時に、ビジネスが直面する課題に対応するソリューションを掲示いたします。


MVP(Minimum Viable Product)の展開

世界中で、まず、特定のターゲット集団にワクチンの優先接種を行うことが検討されていました。多くの国では、新型コロナウイルス感染症患者や多くの疑い患者と頻繁に接する業務を行う医療従事者、重症化・死亡のリスク因子である高齢者や基礎疾患を有する方、そして、高齢者施設等の従事者、教師、フルフィルメント・インフラの従事者に早期に接種を行っています。しかし、一部の国や専門家は、優先接種のターゲットになっている層が新型コロナ感染症の蔓延の主因ではなく、むしろ、付き合いが多く、職場、家庭、私生活で多くの人々と関わっている人が、ウイルスを拡散している可能性が高いと指摘しています。そのため、多くの人と接触する層にワクチンを早く打つことが喫緊の課題であるという主張もあります。優先接種の対象がどちらにしろ、標的を絞り込むためには、一定の制約が生じることは明らかです。一方、回復に向けた取り組みは、すべての人や問題に完璧に対処することではありません。むしろ、危機に対応するために必要最小限の努力をし、最大の効果を見出すことが重要です。MVP(Minimum Viable Product)=対象に価値提供できる最小限の機能をもった試作品(またはソリューション)をつくり、打撃克服対策を立てるには、労力対効果を考慮したSWOT分析を実施することが必要です。電通アイソバー(現 電通デジタル)では、クライアントのビジネスを変革するために、プロジェクトを成功する際に必要な労力とそのインパクトを考慮しながら解決すべき課題に優先順位を付け、ソリューションを提案できるように、定期的にオンライン・オフラインワークショップを開催しています。

2020年から始まったコロナ危機は、多くの企業やブランドの業績を急激に悪化させました。しかし、企業やブランドは、常に予期しない出来事に対応しなければなりません。災害が起こったときに備えて、個人が家族の集合場所、連絡方法、災害時の行動を決めるように、企業やブランドは予期せぬ事態に備えなければなりません。つまり、短期的・長期的な経営・戦略プランを持つことが不可欠です。御社は、短期的・長期的な戦略をお持ちですか?新型コロナウイルスのワクチン開発プロセスからの教訓を、あなたのビジネスに取り入れる方法、当社サービス詳細やCXのシナリオ・プランニングにご興味がある⽅は、こちらよりお問い合わせください
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Dentsu Isobarの実践する​ シナリオ・プランニング​

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