CX(=Customer Experience)は ”顧客体験” や "顧客経験価値" と訳されることも多いですが、この顧客体験とはどのようなことを指すのでしょうか??少し自身の体験も交えて書いてみたいと思います。
自身の体験から顧客体験について考えてみる
少し前にはなりますが、趣味である楽器を購入した時のこと。自身が体験したジャーニーを絵に起こすと下記のようになりました。購入をぼんやりと考えている時期から、候補を絞って具体的に検討していく過程において、オンライン/オフラインを問わず、実に様々な顧客タッチポイントに接していることがわかります。
このジャーニーを経験する中で、いくつか特徴的に感じたことがありました。
- 楽器メーカーのHPでは、楽器の特徴やスペックに関する情報は提供されているものの、「自分にあった楽器を探す」という文脈においては、参考になる情報は少なかった。
- 楽器メーカーよりも、楽器店(小売店)のHPの方が情報が充実していた。
- 音色や吹奏感(吹き心地)などは、YouTubeなどのレビュー動画が参考になった。
- 一連の経験において、重要な役割を持ったのは「店舗」であった。
これらのタッチポイントはそれぞれ別々に存在/提供されており、顧客側からの視点では連動性がないことに気付きました。これは顧客が経験するジャーニーの中で、点としてのタッチポイントは存在するものの、線としてつながっていないことを意味しているように思えます。それぞれで ”情報収集" という目的は達しているものの、断片的であるがゆえに探し回らねばならず、顧客視点では違和感を感じてしまいます。
また、これだけデジタルタッチポイントが充実している中で、なぜ店舗が重要な意味を持ったのでしょうか?それは金管楽器という特殊な商材にて、試奏をしてみないと最終的に判断ができないことや、トラブル時のアフターサービスが信頼できるかどうかの見極めが重要だからです。(自動車選びと似ています。)そして「この店舗でこそ買いたい」と決めたきっかけは、その店の店員さんが、私の試奏を聞いていた感想や楽器選びのアドバイスを手紙にしたためて送ってくださったことでした。いくつも店舗を回りましたが、そのようなパーソナルな対応を取ってくれたのは唯一で、間違いなく信頼できる店舗だと思いました。
つまり、ここで言いたいことは、見込客の楽器探しというジャーニーを顧客視点で捉え、重要な意味をもつ「来店/試奏」を促すようにコミュニケーションの方法/内容を検討することが重要である、ということです。これは当社のフィロソフィーでもありますが、顧客体験を描くこと、それは「顧客に対する深い共感から始まる」と考えています。
CXとは、企業と市場の境界線を溶かすもの
上述のように、自社のビジネスを顧客視点で振り返った時、点と点がつながっていない箇所や、足りないタッチポイントなどが浮かびあがってきます。企業と市場の間には、意図せずこのような境界線が多数存在してしまっているもので、CXとはこの境界線を溶かす活動のこと全般を指す、と私は解釈しています。企業が提供できる情報と顧客が欲している情報の距離を縮めてあげる、WEBだけでは伝わらないことを店舗で体験させてあげる、店舗まで出かけるのが面倒なことをモバイルでできるようにしてあげる、そのような市場に対する企業側の気付きと歩み寄りが、最終的には良いCXを形成するのだと思います。
「気持ちのスイッチを入れること」と「気持ちのハードルを下げること」
デジタル界隈では、CXを検討することが、パーソナライズをはじめとしたデジタルマーケティングのテクニック論やWEBの改善業務と同義のように会話されることがあります。もちろんそれらも顧客体験を高めていくために必要な要素のひとつではあるのですが、それだけでもありません。まずは具体的な施策に至るまでに大きな視点で、行うべきことを整理することが大切であると考えています。
当社では様々な学びの中から、シンプルな2つの矢印としてCXを表現しています。
Motivation(気持ちのスイッチを入れること)
人の心を動かすもの、それはクリエイティブやコンテンツであると考えます。
先の楽器探しの例でいうと、店員さんからいただいた手紙がこれに当たります。
クリエイティビティのある発想で、心を動かすことが必要です。
Frictionless(気持ちのハードルを下げること)
顧客が経験するジャーニーの中での摩擦を減らし、目的を達成しやすいユーザー体験を描くことがこれに当たります。目当ての情報への辿り着きやすさや、WEBの見やすさ、楽器店への来店予約など、顧客がシンプルかつ簡易に目的を達成するための環境作り、仕組み作りが大切です。
CXへのアプローチ
当社では下記の "4つのD" を元に、CXへのアプローチを行っています。
- Discover 調査/発見のフェーズ。定量/定性調査などから現状や顧客を理解するフェーズ。
- Define あるべき姿を定義し、そこに辿り着くためのロードマップを検討するフェーズ。
- Design プロジェクトや体制を形成し、より具体的な手法/プロセスを検討するフェーズ。
- Deliver 実プロジェクトの進行や評価、運用を行うフェーズ。
これらに対し、様々な専門性を有したプロジェクトメンバーをアサインし、クライアント企業様の ご支援を行っております。
CX Design Firmとして
電通アイソバー(現 電通デジタル)は、”CX Design Firm” をビジョンとし、CX(顧客体験)を形作るご支援を行っております。顧客とのタッチポイントを整理し、データを用いて顧客を理解する、またそれらをつなぐテクノロジーの導入を、One Stopでご提供するユニークな活動を行っています。CXのご検討の際には是非ご相談ください。
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