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2021.06.09

“Brave New Normal ニューノーマルに挑む” ウェビナーレポート - Part.5 「アライシップ(Allyship)」の迅速な構築

Brave New Normal: Creative Trends 2021ニューノーマルに挑む」では、事例を交え、世界各国の電通のグローバルネットワーク(Isobar、dentsumcgarrybowen、360iなど)のイノベーションチームによる見地をまとめまています。またそのレポートをベースに、Dentsu Creative Global Chief Solution OfficerのPatricia McDonaldとIsober Senior Vice President, Chief Innovation OfficerのDave Meekerがプレゼンターを努めウェビナーが開催されました。本稿はウェビナーの内容を一部抜粋し、クリエイティビティとテクノロジーの未来を形作るために共存し、結合し、組み換わる5つのテーマを全5回に分けて紹介します。2020年を教訓とし2021年のニューノーマルに適応するため、果敢に業務改革を遂行し、未来に向けて前進するための着想にお役立てください。ここではその際に取り上げられた第5のテーマ「アライシップ(Allyship)」の迅速な構築 について、引き続き掘り下げていきます。


差別的な扱いを受けている人々の社会的正義、インクルージョン(多様性の受け入れ)、アドボカシー(権利の擁護)を支持するグループのサポートや連携を意味する「アライシップ」が、単なるトレンド以上のものとなっていることは疑いようがありません。パンデミックの最中、世界中で急速に大きな牽引力のあるムーブメントに成長しつつあります。この傾向は、消費者が重要と考える「社会的大義」のためにブランドがアライシップをどのように構築しているか、インクルージョンを意識したデザインが以前よりどれほど重要になっているか、サステナビリティやサプライチェーンの変化がどれほど重要であるか、ということの裏付けです。

アドボカシーからアクションへ:デザインチームが無意識に抱える偏見を排除し、インクルージョンの重要性を強調

崇高な目的に対するブランドの支持をソーシャルメディアで知らせるだけでは、もはや十分ではありません。支援を「実行せずに語る」だけの時代は終わったといえるでしょう。今日ブランドがハッシュタグ・アクティビズムの標的となるのを防ぎつつプラットフォームを使用し、消費者に影響を与え、リーチするための最良の方法は、本当に必要としている人々が使用するのを歓迎することです。昨年だけでも、世界で人種的不平等やジェンダー格差が原因で、ブランドのアライシップが悪化しました。この間、ブラック・ライヴズ・マター(BLM)運動は勢いを増し、各ブランドはこの差し迫った問題に対する立場を表明し、反人種差別運動の積極的なアライとして地位を確立するようになりました。
BLMに応じて、アメリカのオーディオ製品ブランドBeats by Dreは、映画製作者のMelina Matsoukasと組んで映画「You Love Me」を作成しました。文化や芸術的貢献やその他の功績も含めて黒人が愛され、尊敬されている世界を描いたこの作品は、Beatsによる一連のブランドイニシアチブの一環で、黒人コミュニティの内外で起こるストーリーにスポットライトを当てています。このクリエイティブなアクティビズムの核には、BLMを支持するという意図だけでなく、利益を受ける黒人コミュニティの直接的な関与がありました。作品を鑑賞する消費者や観客には知られていませんが、この例では黒人監督が選ばれました。また、黒人コミュニティでのロケ撮影や、その地域ならではの思い出や文化的背景がストーリーにリアリティを与え、映画制作に関わる人々を元気づけました。これらはすべて、アライシップの機会となります。

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Copyright: Beats by Dre

大義を支持するだけでなく、成長をサポートする運動に従事することも当たり前になってきています。その例としては、黒人が経営する中小企業をプロモートするためテレビでPRしたり、黒人企業を支援する情報を見つけられるよう障壁を取り除いたり、成長のための資金を割り当てたりなどがあります。美容ブランドのGlossierは、人種差別と闘う組織や黒人が運営する米国の美容ビジネスに100万米ドルを拠出しています。一方、米Netflixは、黒人たちの強烈かつ苦難に満ちた体験に焦点を当てるため、黒人差別などを扱った映画やドキュメンタリーなど、45を超える作品からなる「Black Lives Matterコレクション」を発表しました。日本でも、サービス設計におけるジェンダーバイアスを認識する方向に進んでいます。日本航空は2020年10月より、乗客への挨拶の言葉を変更すると発表し、よりジェンダー・ニュートラルでインクルーシブな顧客サービスのアプローチとして、「Ladies and Gentlemen」から「Attention all passengers」や「Good morning everyone」(エブリワン)などに表現を変えました。

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Copyright: Glossier

数値的な面では、2020年6月にEdelmanが発表したレポートによると、英国の一般市民の52%は、人種差別問題にどのように対応しているかが、そのブランドを購入するかボイコットするかに影響を与えるとしました。南アジア、東アジア、東南アジアでは、この割合は75%に増加しました。日本では、37%が、ブランドがこれまで以上に大きな社会問題に取り組んでいるとし、このうち24%は、ブランドは好ましい態度や行為について影響を与え、他の人を勇気づけ社会に変化を生み出せる力を持った人を称賛することで、行動様式を変えることができる前向きな力を持っているとしています。日本の数値は他の調査実施10か国と比較すると小さいように思われるかもしれませんが、全体として、全消費者の61%が、ブランドにはパンデミック後に社会問題についてもっと取り組んでもらいたいと望んでおり、消費者のブランドに対する期待が急速に大きく変わってきていることがうかがえます。ブラック・ライヴズ・マターズ、ストップ・アジアン・ヘイト、そしてパンデミックの時代には、ブランドが価値観を反映させ、ハッシュタグ・アクティビズムを超えたインクルージョンの文化を育む取り組みを通じて、消費者との信頼関係を築くことが不可欠です。

ダイバーシティ(多様性)のためのデザイン:ブランドはチームのダイバーシティを図ることの重要性を認識し、商品とサービスのデザインをインクルージョンの力として使用し始めました。

人工知能(AI)は、プロセスを改善しアウトプットを最大化するため、世界中で採用されている最先端のテクノロジーの1つです。AIの導入がビジネスや経済に大きな利益をもたらし、主な社会的課題の解決に一役買う可能性が非常に大きいですが、AIが「何を」「どう」学ぶかについては、中立的ではないことが確認されています。AIバイアスについては以前にも実証されていますが、2020年には以前見られたバイアスの兆候が減少しました。今後、イノベーションを望むブランドは、より幅広い顧客層や文化的感受性を念頭に置いて製品とサービスを設計することができるよう、より確固たる措置を講じる必要があります。つい最近、高級ファッションブランドのValentinoは、モデルが着物の帯をヒールで踏んでいるように見える広告を打ち出したことによって日本国内から痛烈な批判が起こり、消費者の反感を招いた結果、公式の謝罪を行ったうえでキャンペーンを打ち切りました。特定の地域に対するより大きな視点からの配慮を見落としているにもかかわらず、ブランドが消費者にアピールしようとして思わぬ反感を買うこともありますが、これはブランドの将来的なイニチアチブを厳しい目で見直したり、ブランドのメッセージが固定観念に縛られていないか、ある地域にとっては重要であるものを無視していないか、慎重に検討したりするように学ぶ機会でもあるのです。インクルージョンへのアプローチの例は、GilletteがデジタルデザイナーのNicole Cuddihy及びゲームの「どうぶつの森」シリーズと提携した「スキンクルーシブ(skinclusive)」です。このコラボレーションにより、ゲームのアバター上でより幅広い肌のタイプや色調、にきびや湿疹といったさまざまな状態まで表現でき、顧客はアバターで自分をより正確に認識できるようになりました。

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Copyright: Gillette, Animal Crossing

画材ブランドのCrayolaは、商品にダイバーシティを反映させるため、世界中の人々の肌の色を表現することを目的とした、より幅広い肌色のセットを備えた製品パッケージ「Colors of the World」を開発しました。米国のCitibankは、インクルージョン推進のために、クレジットカード会員がカード上に記載される名前を選択できるようにするMastercardの「True Name」への参加を発表しました。これは、LGBTQ+コミュニティのメンバーが、自分で選んだ名で金融商品にアクセスできるようにすることを目的としたイニシアチブで、クレジットカードで購入する際の差別を減らすのが目的です。今こそブランドは社会問題に対する提唱を行い、顧客の共感を呼び起こし、真の信頼を築くときです。顧客に長期的な影響を与えるようなイニシアチブを通じて会話を行動に移し、より幅広い層の消費者に向けたブランドを構築しましょう。

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Copyright: Crayola

 

リコマース(中古商品のオンライン販売)の台頭:ファッション業界の見直しがされている中、ブランドは商品に「第二の生」を与えるためにリコマースに目を向けています。

世界で最も課税の多い産業の1つ、ファッションブランドは、世界的な二酸化炭素排出量の増加に対処するための「カギ」となっています。2020年は持続可能なソリューションへの投資を増大した年で、3R(リデュース・リユース・リサイクル)モデルに沿った、より良い慣行を採用する傾向が依然として強い一方、商品に関して言えば、変化には複雑なロジスティックの問題が伴います。PatagoniaWorn WareTroveなどのリコマースプラットフォームは、機械学習と人の手を介した商品検査、在庫管理、価格設定に機械学習と人手を活用するという新たな基準を設定し、他の企業のオンボーディングを支援しています。

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Copyright: Trove

H&Mは、スウェーデンで「Looop」というリサイクルシステムを立ち上げ、リサイクル運動の分野でリードしています。Looopは香港のThe Hong Kong Research Institute of Textiles and Apparelとの提携で行われており、古い衣服を分解して新しいものに仕立てる技術を使用し、衣服をゼロから製造する場合に比べて環境への影響を大幅に低減しています。Levi’sは現在、Levi’s Second Handというeコマースプラットフォームを通じ、ヴィンテージ商品の大規模なリユースを推進しています。日本のグローバルブランドであるユニクロもまた、自社商品のリサイクルに取り組んでおり、長年にわたり世界中の被災者、難民、その他の困窮している人々に衣服を供出するためのリサイクル・スキームを掲げてきました。2020年9月には、サステナビリティ(持続可能性)の3Rに基づいたプログラム「Re.Uniqlo」を拡大し、必要な人に自社製品を再配布するだけでなく、断熱材、燃料などとして再利用し、製品に使用されていたダウンを新しいアイテムに再利用しています。

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Copyright: H&M
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Copyright: Levi’s

この分野では、電通グループの360iが米スーパー大手Krogerと協力し、Chefbotを作成しました。これは冷蔵庫にある残り物を最大限に活用する方法をユーザーに教え、ユーザーが簡単なレシピでそれらを最大限に活用できるようにすることで、環境への影響を軽減し埋め立てごみを削減するアプリです。2,000の材料を認識できるAIを活用し、ユーザーは画像を@KrogerChefbotにツイートするだけで、材料に基づいた推奨レシピのリストを得られます。

H&Mグループによると、同社の衣服収集プログラムは、2019年に2万9,000トンの衣料を収集しました。これは、1億4,500万枚のTシャツに相当します。今のところ業界の規模では大した数字のようには思えないかもしれませんが、こうした循環型経済は今後も拡大し続けるでしょう。米Cowen Investment Bankによる予測では、リセール市場は米国だけで2022年までに220億ドルの価値があるとされています。循環型経済は新しい収入源を生み出すだけでなく環境にもプラスの影響を与え、消費者にとって重要な理念を支持できることから、ブランドは今こそ循環型経済のポテンシャルについて考える時です。現在、世界中のコミュニティの利益が重要視されています。特に欧州連合(EU)は循環型経済への取り組みを強化し、資源がEUに留まり、全体として二酸化炭素排出量が最小になるようにしています。2030年までにEU域内に循環型経済を積極的に取り入れる戦略を策定することで、持続可能な商品をEU全体の標準にし、消費者にその利点について情報を提供し、循環型経済を推進するべきセクターを優先付け、廃棄物を二次エネルギー源に変換してゴミを最小限に抑えることを目指しています。この取り組みは、国際連合の持続可能な開発(SDG)の4つの目標(経済成長、技術革新の基盤、使う責任、パートナーシップ)もサポートしています。

ブランドへの影響は何か

ブランドにとって、その影響は明らかです。
まず、害を及ぼすようなことをしない。ブランドは世界に向けて大胆な発言をすることよりも、社内を見渡し、まずは社内で社会的課題に取り組んでいるかを確認する必要があります。男女賃金格差、インクルージョン、社会的地位などの既存の問題は、かつては組織内部の問題として処理されていましたが、適切に対処して、外部に対しても適切な透明性を確保しつつ伝えなくてはなりません。ブランドは、社会問題をサポートするパートナーとして、アクティビズムやアライシップに参加したいという意欲を持つ消費者を歓迎する用意を整える必要があります。そうすれば、ブランドと消費者の間に長期的な価値と信頼をもたらすことができるでしょう。
「違い」をデザインする。つまり、デザインチームに消費者セグメントの一部を含めるだけでなく、特定の地域の消費者の独自性をより広く理解している多様性に富んだチームを組織して無意識の偏見に取り組み、デザインの決定において意図しない結果になった場合は、その原因について真剣に考える、ということです。Isobarは、サービスデザインへの知見を活かして、その地域の消費者の特性を慎重に検討し、顧客が気付かないほど小さなエクスペリエンスを含む、独自のカスタマージャーニーを特定することができます。アライシップは、オーケストレーション・プロセス全体を網羅する力を持っているために、早い段階から組み込むことが重要です。
現在の状況下で、信念や使命、目的を超えて行動する。ブランドとエクスペリエンスの戦略を策定する際、ブランドは組織の中心に強力な行動プラットフォームを置き、ブランドの「発言」を「行動」でバックアップすることができるようにする必要があります。これについて、IsobarはIsobar Goodを開発しました。これは、Isobarのスキル、専門知識、および方法論を駆使し、ブランド、ビジネス、および非営利組織などに測定可能な社会的影響をもたらし、ビジネスの強みを伸ばすことができるソーシャル・インパクト・イニシアチブで、長期的な視点と長期的な価値を保持する新たなイニシアチブを推進します。電通アイソバー(現 電通デジタル)へのお問合せはこちらから。お気軽にお問い合わせ、ご相談ください。

カーダー ジェネッサ Jenessa Carder

CXストラテジー本部付 シニアエグゼクティブストラテジープランニングディレクター
電通アイソバーにて、消費者体験(CX)戦略担当バイスプレジデント。美容、CPG、ハイテク、ヘルスケア、フィットネスなど様々な業界の世界中のクライアントに対して、キャンペーン、製品発売、デジタルエクスペリエンス、トランスフォーメーションプロジェクトにおいて10年以上のコンサルティング経験を持つ。

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菅原アンディ Andy Sugawara

コーポレート部門 / コーポレートコミュニケーション部 ジュニアパブリックリレーションオフィサー
日本の大学を卒業し、2016年電通アイソバーに入社。2017年より、国内外のアワード向けコンテンツを作成、応募支援しているほか、ソーシャルメディアプロジェクトや世界中のグループオフィスとのグローバルコミュニケーションに従事し、ローカルでの知識とグローバルなニーズをつないでいる。

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