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2021.06.02

“Brave New Normal ニューノーマルに挑む” ウェビナーレポート - Part.4 個人、個人情報とAI

「Brave New Normal: Creative Trends 2021ニューノーマルに挑む」では、事例を交え、世界各国の電通のグローバルネットワーク(Isobar、dentsumcgarrybowen、360iなど)のイノベーションチームによる見地をまとめまています。またそのレポートをベースに、Dentsu Creative Global Chief Solution OfficerのPatricia McDonaldとIsober Senior Vice President, Chief Innovation OfficerのDave Meekerがプレゼンターを努めウェビナーが開催されました。本稿はウェビナーの内容を一部抜粋し、クリエイティビティとテクノロジーの未来を形作るために共存し、結合し、組み換わる5つのテーマを全5回に分けて紹介します。2020年を教訓とし2021年のニューノーマルに適応するため、果敢に業務改革を遂行し、未来に向けて前進するための着想にお役立てください。ここではその際に取り上げられた第4のテーマ「個人、個人情報とAI」について引き続き掘り下げていきます。


「個人情報」の問題は、ここ数年重要性を増しており、特に企業やブランドがどの程度までアクセスできるか、そして消費者にパーソナライズされた体験を提供するためにどのように使用されているかが注目されています。昨年だけでも、世界中でコロナ感染防止に向けた規制が求められるようになった中、感染拡大抑止のため政府や保健機関で個人データの利用が大幅に進みました。また、ブランドが顧客にリーチするためデジタルエクスペリエンスに次々と多額の投資を行った結果、個人データがどれほど重要か、そして個人データをどう活用すれば公共の利益を図れるかという、一連のトレンドが生まれました。上述のウェビナーでは、次の3つの分野について説明しました。まず、より洗練されたビッグデータによって、リモートでの体調診断が普及し大規模に行えるようになったこと。次にトラッキングデータの普及が人々の幸福に貢献できること。そして最後に、デジタルフットプリントを認識することで、ユーザーの行動とそれが周辺に及ぼす影響がよりよく理解できるようになったことです。

体調に関するデータ:高度な生体認証データでリモート診断が容易に

今日の健康やフィットネスのプラットフォームは、その人自身や体調など、多くのことを明らかにし、私たちのクオリティ・オブ・ライフを大幅に向上させます。たとえばAmazonのフィットネスバンドHaloは、人の身体のアバターを構築するヘルストラッカーで、薬局やAlexaのエコシステムに接続されており、睡眠、体温、心拍数を分析するセンサーや、声のトーンから気分を判断するマイクなどがついています。これは、Apple Watch、FitBitや他のトラッカーなどがあるウェアラブルのカテゴリにおいて、Amazonが初めて提供したデバイスですが、こういったデバイスが生成する大量のデータによって、私たち自身について多くのことが明らかになりました。一人の人間から得られるデータを使うことで、AppleやAmazonなどの企業はヘルスケアにアプローチするためのまったく新しい方法を構築する道を開きました。世界中の企業が、このテクノロジーを活用し、私たちの生活をサポートするための更なる方法を模索しています。日本政府はイノベーション・プログラムの一環として、これらの技術を推進しています。AIを使用した生体認証システムは、すでにセキュリティの目的である程度、人々の生活に組み込まれており、全国の国際空港での人の移動をスピードアップさせることや、マイナンバーカードによる地方自治体の行政手続きにおける取引の円滑化や日常の利便性の向上、といったところまで適用されています。1,350人以上のグローバルCMOを対象に、コロナ時代におけるCX(顧客体験)についてのIsobarの調査レポート結果によると、2020年には世界のCMO(最高マーケティング責任者)の29%が音声技術を、28%がチャットベースの技術を採用しました。2020年第3四半期だけで遠隔医療に28億ドル、ヘルスケアAI企業に20億ドル相当の投資が行われるなど、この流れはメガトレンドとなって広がりを見せています。

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Copyright: Amazon Halo

感情知能(EI):気分のトラッキング・向上機能の発展とメンタルヘルスの重視

外出や人との交流が制限されているため、メンタルヘルスがセルフケアの重要な分野として脚光を浴びています。日本政府は、コロナ禍で生じた社会的交流や他者との接触ができないこと、失業による先行きの不透明さといった問題が、自殺の増加を招く要因になったと考えています。警察庁と厚労省の予備データによると、2020年に自殺で亡くなった人の数は2019年から750人増の2万919人となり、パンデミックの心理面への影響にもっと注目すべきであるとしています。また内閣官房に孤独・孤立対策担当室を立ち上げ、自殺率上昇に歯止めをかけようとしています。今日のテクノロジーは、ある程度気分を理解・監視できるようになっており、今後、企業やブランドに対する幸せの知覚価値に対する新たな基準となりそうです。
たとえば、AlexaとHaloはどちらもユーザーの声から感情の変化を検出でき、音楽ストリーミング配信サービスのSpotifyは視聴データを使用して全国のリスナーの気分をトラッキングしています。また、米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究グループ、Affective Computing Groupは、人間の感情をよく理解することを研究しており、電話とウェアラブルからのデータを使用し、うつ病を予測・予防するための技術を開発しています。より高度で用途の広いセンサーが私たちの日常の活動をトラッキングできるようになったことで、個人データを実行可能なソースに変え、私たちの健全な精神状態をゆるく管理することが可能になりました。たとえば米国では、瞑想とリラクゼーションアプリの使用がロックダウンで劇的に加速したことで、消費者の関心の高まりや、ストレス時代における人間関係への渇望が見られました。瞑想アプリのCalmは、2020年4月だけで390万ダウンロードを記録し、年間合計9,000万ダウンロードを記録。一方、瞑想アプリHeadspaceは150万ダウンロードを記録し、同時期に合計で6,500万ダウンロードを達成しました。Headspaceは、StarbucksEricssonなどの大手企業と提携し、従業員の標準的な福利厚生パッケージにそのサービスが組み込まれるようになりました。

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Copyright: Calm

瞑想アプリと感情をトラッキングする技術により、データをもっと効率的に読み取ることが可能となり、人々の健康問題を迅速に予測できるようになりました。例として、AIを使用してユーザーの心理状態を分析するプラットフォーム、Affectivaがあります。Affectivaのような企業は、最終消費者にサービスを提供するだけでなく、自動車、メディア、および研究などの分野でカスタマイズされたソリューションを提供し、消費者の状態をリアルタイムで深く理解することを通じて、これらの業界のブランドが偏りのないインサイトを収集し、さまざまなシナリオで実行してエクスペリエンスを学習・改善できるようにします。EI、そして組織や企業でのEIの有効活用は、将来的な予防医療の開発におけるデータや諸機能の最適な使用法を明らかにする上で、最先端の技術です。デジタルメンタルヘルス市場は2026年までに市場価値が46億ドルに達すると推測されており、企業にとっては重要なビジネスチャンスで、進出すれば大きな成功が見込まれるでしょう。

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Copyright: Affectiva

個人のフットプリント:新しいデータソースが、私たちが周囲に対して及ぼすことのできる影響力を新たに理解することができます。

私たちは常に自分自身に関するデータを生み出していますが、それは今後さらに大きな影響力を持つようになります。消費と購入についてより慎重に考えるため、個人データは重要かつ不可欠となるでしょう。ブランドが商品・サービスの創出と実現のために消費者データを重視するようになった一方、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が強調するように、企業にとっては、持続可能性やその他の差し迫った社会問題に対して取り組むことが緊急課題となっています。
この一例がBank of AlandとテクノロジースタートアップのDoconomyが共同開発した Aland Indexです。このインデックスソリューションによって、銀行、決済プロバイダー、および金融機関は、すべての顧客に取引ベースでの影響を計算が可能です。Aland Indexは、消費者の日常消費をより持続可能な選択肢に導く、二酸化炭素排出量計算のためのグローバルインデックスソリューションです。このテクノロジーは、世界中の多くの銀行で広く採用されており、約4,000万人の顧客に影響を与えています。

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Copyright: The Bank of Aland, The Aland Index

消費者は、データサービスを使用することで情報へのアクセスが増え、自分の二酸化炭素排出量について理解できるようになります。デンマークのブランドAsketのインパクトレシートは、個別の買い物が環境に及ぼした影響に関する情報を明らかにし「あなたの行動が環境に及ぼす影響を知りましょう。買うのでなく、長く使い続けましょう」と行動を呼びかけています。持続可能な生活を維持するため、特定のサービスや商品を利用するために必要なエネルギーを理解することは、世界に広がりつつあります。またブランドは、消費者が購入する商品の各種コストを知るためのテクノロジー強化を通じて持続の可能性を提唱します。自分の消費が環境に及ぼす影響を理解し測定したいと考える消費者をサポートするには、ブランドに対して発行する「Climate Neutral」という証明書があります。これはカーボンニュートラルな商品やサービスを提供しているという証しになります。企業に二酸化炭素排出量を理解させることで、二酸化炭素排出量の相殺または削減に投資し、環境への影響に責任を持つことができます。

日本では、電通がマグロ目利き職人と提携してTuna Scopeというアプリを開発しました。目利きの技術は、通常習得に10年はかかるといわれますが、このアプリではマグロの鮮度がわかるAIを使用しています。IsobarはIsobar Goodという、ブランドおよび非営利組織の測定可能な社会的影響に向けて培ったスキル、専門知識、および方法論の活用を目的とするイニシアチブを立ち上げました。また、国連による持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指して企業やブランドと協力し、マーケティングの知見、体験コマース、商品・サービスを提供しています。

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Copyright: Asket

ブランドへの影響は何か

消費者がどれくらいこれまでの基準を受け入れ、また変更しているか。このことがブランドに及ぼす影響は甚大です。
膨大な量の個人データは、実社会で物理的にも、またデジタルの側面でも、十分なインパクトのあるエクスペリエンスをデザインする方法の模索に役立ちます。私たちが何者なのか、どう感じているかをより理解できるだけでなく、私たちのライフスタイルにおける選択が、この世界にどう影響を与えているかについても理解することが可能となります。ブランドにとって、自分の選択が環境に及ぼす影響について消費者を啓蒙することは、サプライチェーンに必要な変化もたらし、その変化がなぜ重要なのかを理解してもらう上で非常に重要です。今日の社会的責任は、コミュニティに貢献し、より良い世界を作ろうというブランドにとっては、差し迫った課題であり続けるでしょう。

今こそ、私たちが生み出すブランドとデータが私たちの身体や幸福度にどのように影響するかを考える時です。私たち消費者がより大きなデータの所有者になることで、「低データ」、「低炭素」、「低脂肪」を売りにするブランドが誕生し、価格を超えたところにある消費者の様々な要求にブランドが寄り添えるような、多様性のある市場が構築されるでしょう。ブランドは今後も進化を続け、利用可能な情報を使用してエクスペリエンスをデザインします。データ所有者である消費者は、個人データについてもっとよく理解し、自分がどれだけの情報を生じさせ、保持し、保護するのかについて把握している必要があります。また、デザインチームとプロダクトマネージャーが、プロセスの中に「データ倫理」を確実に取り入れていることも重要です。

これからは、ビジネスにおけるデータ収集を「常時オン」にしておくというアプローチによって、監視ベース、診断ベース、感情ベースの大規模なターゲティングがはるかに大きな役割を果たすようになり、幸福の予測や先取りができるようなアプローチも取られるようになるでしょう。消費者に関する深い知識を必要とするサービスにおいては、膨大な量のデータを活用することにより、個々人の「個性・特性」にもっと大きな価値が置かれるようになります。またこれらのシナジー効果により、人々の関係が良好になり、企業内ではより良い人間関係やより強力なチームを構築し、優秀な人材に居続けてもらえるための投資を行うことも可能になるでしょう。次のステップに向けて飛躍するために必要なツール、戦略、準備についてのご相談は、弊社までお問い合わせください。

カーダー ジェネッサ Jenessa Carder

CXストラテジー本部付 シニアエグゼクティブストラテジープランニングディレクター
電通アイソバーにて、消費者体験(CX)戦略担当バイスプレジデント。美容、CPG、ハイテク、ヘルスケア、フィットネスなど様々な業界の世界中のクライアントに対して、キャンペーン、製品発売、デジタルエクスペリエンス、トランスフォーメーションプロジェクトにおいて10年以上のコンサルティング経験を持つ。

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菅原アンディ Andy Sugawara

コーポレート部門 / コーポレートコミュニケーション部 ジュニアパブリックリレーションオフィサー
日本の大学を卒業し、2016年電通アイソバーに入社。2017年より、国内外のアワード向けコンテンツを作成、応募支援しているほか、ソーシャルメディアプロジェクトや世界中のグループオフィスとのグローバルコミュニケーションに従事し、ローカルでの知識とグローバルなニーズをつないでいる。

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