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2021.05.12

“Brave New Normal ニューノーマルに挑む” ウェビナーレポート - Part.1 バーチャルエクスペリエンス・エコノミー

2020年、私たちの生活は大きく変化し、世界の二極化が進みました。多くの企業は、一致団結して経済・社会課題の解決を迫られました。また、顧客体験(CX)の創造に多種多様なテクノロジーが駆使され、外出への制約を機に、新たな試みが多く見られました。様々な分野でテクノロジーの導入・活用が進む一方、基本に立ち返って伝統や「ハンドメイド」を大切にするという対照的なトレンドもありました。

「Brave New Normal: Creative Trends 2021ニューノーマルに挑む」では、事例を交え、世界各国の電通のグローバルネットワーク(Isobar、dentsumcgarrybowen、360iなど)のイノベーションチームによる見地をまとめまています。またそのレポートをベースに、Dentsu Creative Global Chief Solution OfficerのPatricia McDonaldとIsober Senior Vice President, Chief Innovation OfficerのDave Meekerがプレゼンターを努めウェビナーが開催されました。本稿はウェビナーの内容を一部抜粋し、クリエイティビティとテクノロジーの未来を形作るために共存し、結合し、組み換わる5つのテーマを全5回に分けて紹介します。2020年を教訓とし2021年のニューノーマルに適応するため、果敢に業務改革を遂行し、未来に向けて前進するための着想にお役立てください。


2021年のニューノーマルに適応するためには、テクノロジーに「人間らしさ」を加えることが重要です。例えば、Eスポーツに、一流スポーツ選手が登場、チャットボットに値引きを交渉、とれたての食材をその場でライブストリームし直売する時の驚きや興奮など、テクノロジーと「人間味」を融合することでこれまでにない驚異的なクリエイティビティ(創造性)、オリジナリティ(信憑性)、リアリティー(現実性)がもたらされます。
10年の歳月をかけて開発され、進歩してきた仮想体験(VR)は、人との接触を抑制しなければならない中、VRは再定義され、リアルのイベントより深い刺激・感動を生むことさえあります。また、データとテクノロジーを顧客体験(CX)の設計に活用することも可能になり、その中でバーチャルコマース(Vコマース)という新たな領域が急成長しました。同時にアバターの住む仮想現実(VR)環境とリアル環境との区別が難しくなっています。

リアルよりも深い

新型コロナウィルスの流行でイベントのキャンセルが相次ぐ前から、仮想現実(VR)は注目されていました。たとえば、米国のミュージシャン、トラビス・スコットは人気ゲーム「フォートナイト」内でライブ演奏を行い、1200万人以上が鑑賞しました。招待制の音声SNS、Clubhouseでは、テスラのイーロンマスクとFacebookのマークザッカーバーグの会話を聞くために、数千人が「ルーム」に参加しました。従来のイベントは場所や開催時間など物理的な制約がありましたが、オンライン上のイベントはそれらの障壁をなくし、新たな試みを可能にしました。たとえば、5Gを使って実施されるリモート・イベントに、観衆がアバターとして参加することで、「リアルよりも深い」体験を楽しむことができます。つまり、データとテクノロジーにより、観客はVR空間でも、リアル空間に負けない刺激・感動を味わうことが可能になりました。

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2020年4月、トラビス・スコットがオンラインゲームプラットフォーム「フォートナイト」でライブ公演を実施
Copyright: Travis Scott, Fortnite

中国ではバーチャルアイドルが、有力なインフルエンサーとして活躍しています。実在の人物ではないにもかかわらず、ファンの心を揺さぶり、独自の世界観へといざないます。これは、2005-2006年に膨大な数のファンを集めた日本のボーカロイド「初音ミク」に端を発する現象です。バーチャルアイドルは、ブランドと提携して「アンバサダー」として活躍、コンサートの収益性も高く、多くのフォロワーを持つため、商業的・文化的な影響力を強めています。ゲームイベントでは、ビデオ会議機能を使って参加者が観衆として表示されますが、スポーツ・トーナメントでも同じ機能が導入されるようになりました。Microsoftの職場向け協業アプリ、Teamsにも同様の機能があります。これは、ゲーム用に開発された機能がエンターテインメント業界の枠を超えて、企業のビジネスシーンで転用されている例です。

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初音ミクバーチャルコンサート公演
Copyright: SCMP Via Jane Zheng

ゲーム動画配信ツールTwitchやボイスチャットツールDiscordなど、特定のコミュニティや目的のために設計された通信プラットフォームが、今ではゲーム環境以外でも利用されています。Discordの創業者兼最高経営責任者(CEO)のJason Citronは、「オンラインで過ごす時間が増えるにつれ、人々がその空間で本当の人間性や帰属意識を見つけられる居場所を求め始めるのは明らかです」と述べています。
Discordには、1億人を超えるアクティブユーザー(前年比47%増)がいます。ゲームのために設計されたプラットフォームが、他の分野に浸透し活かされています。また、IsobarはCiscoのVirtual Experience Hubの設計と展開をサポートし、イベントをVR環境に移行させることで、従来のやり方を覆しました。IsobarグループのVeryStar(中国の有力モバイルeコマースマーケティング専門会社)は、CGI Movie Studioと提携し、没入型仮想ストリーミング用のプラットフォームを構築しました。また、同社は中国の若年層を開拓したいという思いから、仮想アイドルでブランドマスコットのKiraを開発しました。

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Copyright: National Basketball Association (NBA)

 

バーチャルコマース(Vコマース)VR

仮想体験のおかげで、バーチャルコマース(Vコマース)も急速に広がりました。ブランドは既存のラインナップに加えてダウンロードが可能な無形の商品、「バーチャル製品」を販売するようになりました。バーチャル製品は、ブランドや企業が提供できる商品・サービスの幅を拡大し、リアル商品と同等の価値を生んでいます。2019年、デジタルファッションハウスのThe Fabricantのバーチャルドレス「Iridescence」は、ビットコインを使ったオークションにて、9,500ドル(約988万円)で落札されました。同社は、「今やサプライチェーン、店舗、サンプルに縛られる必要はなくなり、3Dレンダリングなどを通じて、創造的・実験的なファッションデザインへの道が開かれた」と主張しました。クリエイティビティを使って、物理的な制約をなくすことで、顧客の価値観を変えるようなインパクトのある作品作りが可能になり、かつては野心的なビジョンに過ぎなかったものを、顧客にも届けられるようになりました。
ラグジュアリー・ブランドは、「ステータス」を使って、ゲーム世界に参入。たとえば、スニーカー愛好者がポイントや実際の通貨と引き換えに仮想スニーカーを収集できるロケーションベースゲームAgletや、ユーザーがランウェイ・コレクションの仮想レプリカのスタイリストを演じることができるゲームDrestなどが発表・発売され、ラグジュアリー・ブランドがVR世界でファッションへの関心を醸成する機会が増えています。また、ラグジュアリーファッションVコマースのNet-A-Porterは「どうぶつの森」と提携し、仮想の島「ネッタポルテ島」を公開。ファッションデザイナーIsabel Marantの独占コレクションを揃えました。Vコマースの牽引力は非常に大きく、VR商品の年間売り上げは約13兆円、中国のZ世代はバーチャルアイドルに6,198億円を注ぎ込み、また同国では1人以上のバーチャルアイドルをフォローしている者が約3億9000万人にものぼります。ゲーム環境は、ブランドや企業のマーケティング活動を行う新しい媒体として注目され、ゲーム市場規模が拡大し続ける中、顧客のニーズもその影響を受けることでしょう。

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Copyright: Net-a-Porter, Animal Crossing,Isabel Marant

 

「仮想現実(VR)」の希望とリスク

テクノロジーの導入で処理能力も向上したため、CGI(コモン・ゲートウェイ・インタフェース)もより詳細まで作り込めるようになりました。5Gの導入により、VRでハイパーリアリズムの実現も可能になりましたが、虚実の区別ができないレベルになると、顧客ロイヤルティへの悪影響を及ぼすことも考えられます。2020年11月、ニューヨークタイムズは「存在しない架空の人物を販売する企業が出現した。Generated.photosというWebサイトでは、『実際には存在せず、安心な』架空の人物の顔写真を一人分2.99ドル、または1,000人分を1,000ドルで購入できる。」と報じています。
このサイトではニューラルネットワークを使って、ブランドや企業がマーケティング資料で使用する架空の人物を目の色から表情、年齢、特徴など、ユーザーが設定・変更して作成できます。このようなツールは、ブランドや企業のコストを削減する一方、何が現実で、何がそうでないかを区別する必要性も生じます。VRを不適切に扱うと、企業やブランドの価値や顧客満足度に悪影響を与える可能性があることを、十分留意すべきです。これからは、こういったツールの悪用を暴き、偽物か本物かを検証するデジタルフォレンジックビジネスが台頭してくるでしょう。またソーシャルプラットフォームでは、ユーザーのプライバシー保護ツールが導入されていくでしょう。英国で実施された調査によると、フェイクと本物を見分けられる子供は2%に過ぎませんでした。ロイターが各国で実施した調査では、回答者の38%がニュースを信じる一方で、ソーシャルメディアのニュースを信頼している人は22%でした。「フェイクニュース」という言葉を世界的に耳にするようになっていますが、Isobarではブランドや企業がこの脅威に対抗するような戦略策定のサポートも行っています。

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人物の顔写真をカスタマイズ
Copyright: The New York Times

 

ブランドや企業への影響

CXの設計やクリエイティブチームの潜在力を最大限に引き出すためには、エクスペリエンスやテクノロジーについて理解を深めることが重要です。今後、5Gによって様々な可能性が開かれ、進化がさらに加速することが予想されます。パーソナライズされたCXを構築する際に、テクノロジーを駆使することでエネルギーを効率的に使うことはもちろん、環境にも考慮することができ、企業やブランドの持続可能な成長にもつながります。IsobarのNowLabでは、ブランドがもつ可能性を引き出し、新しい「きっかけ」を⽣み出していくテクノロジー・ラボとして、⾰新的なビジネスソリューションの創造、分析・実験、プロトタイプの作成などが⾏えるワークショップを提供しています。

次世代の商品・サービスのパーソナライゼーションが既に到来しています。企業やブランドにはデータ戦略が不可欠です。私たちが有するデータ量は今後5年で約5倍に増えると言われている中、ブランドのAIエクスペリエンスの中枢が顧客データです。AIを利用したパーソナライゼーションでは、それぞれの顧客が好む複数のメディアに、リアルタイムでエクスペリエンスをレンダリングします。そのため、優れたテクノロジーがあっても、それを支えるデータインフラが整っていなければ、パーソナライゼーションで遅れをとる可能性があります。

これからは「ライブよりも感動する」イベントが新基準です。リアルでのイベント開催が当たり前ではなくなった今、デジタルの力であらゆる要素を取り込みつつ、拡張性のある・心に残るハイブリッド型のVRイベントを構築・提供しなければなりません。

ブランドや企業が顧客との間に信頼関係を構築するためには、CXに「嘘がない」と納得してもらうことが重要です。VRサービスが生身の人間の感情を呼び起こすことで、より人間味のあるサービスが可能となり、「ラグジュアリー」が再定義され、VR空間のストーリーテリングが構築されます。私たちはCXの観点から顧客とのコミュニケーションのプランニングを行い、テクノロジー・イノベーション・インキュベーターNowLabの知見を生かしてオンラインとオフラインを融合し、VR体験と実体験を比較検証し、企業が物理的な場所の制約を超えて顧客にリーチする支援をしています。私たちは、グローバルなチームをつなぐバーチャル・コミュニティでもあります。新しいテクノロジー・デバイスの開発だけではなく、アイデアとグローバル・ネットワークでお客様のニーズに訴え、課題を解決していきます。なお、DXの推進支援の詳細については弊社にお問い合わせください。

 

カーダー ジェネッサ Jenessa Carder

CXストラテジー本部付 シニアエグゼクティブストラテジープランニングディレクター
電通アイソバーにて、消費者体験(CX)戦略担当バイスプレジデント。美容、CPG、ハイテク、ヘルスケア、フィットネスなど様々な業界の世界中のクライアントに対して、キャンペーン、製品発売、デジタルエクスペリエンス、トランスフォーメーションプロジェクトにおいて10年以上のコンサルティング経験を持つ。

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