2022.02.10

Amazonならではのメディア活用と協業事例

コロナの影響もありユーザー行動が激変するなか、月間ユニーク訪問者数約5,000万を誇るAmazonは、さらに利用者数を増やしながら影響力を増しています。電通デジタルでは、ECだけでなくさまざまなサービスを行うAmazonと協業し、人々のライフスタイルの変化に合わせた取り組みを行ってきました。今回は、電通デジタルコマースメディア第2事業部 Amazonコンサルタント/プランナー 岸本貴久、瀬尾祐介、酒井優太の3名がAmazonとの協業事例を紹介します。

 

※この記事は、10月25日〜10月29日に開催した「Commerce Week 2021」のセッションの採録です。

※所属・役職は記事公開当時のものです。

電通デジタル コマース部門 コマースメディア第2事業部
Amazonコンサルタント/プランナー

岸本 貴久

電通デジタル コマース部門 コマースメディア第2事業部
Amazonコンサルタント/プランナー

瀬尾 祐介

電通デジタル コマース部門 コマースメディア第2事業部
Amazonコンサルタント/プランナー

酒井 優太

Amazon広告の種類と特徴

事例紹介に入る前に、岸本はまずAmazon広告の種類と特徴について解説しました。
 

Amazonの3つのプロダクト

Amazon広告には、Amazon内検索連動型広告である「スポンサー広告」と、ディスプレイ広告である「Amazon DSP広告」「予約型広告」の3つがあります。
 

  • スポンサー広告
    • Amazonの中で商品を検索しているユーザーに対し、キーワードターゲティングなどを使用して広告が配信できるAmazon内検索連動型広告。Amazonに出品している企業が利用できる。

  • Amazon DSP広告
    • Amazonの中だけでなく、ほかのWebサイトやアプリなどにも広告配信が可能なディスプレイ広告。特徴は、Amazonが保有しているオーディエンスデータを活用して配信できること。Amazonに出品しているか否かに関わらず利用できる。

  • 予約型広告
    • Amazonサイト内やAmazonが所有するサービスに配信可能なディスプレイ広告。Amazon DSP広告同様、Amazonのオーディエンスデータを活用でき、またAmazonに出品しているか否かに関わらず利用できる。

 

Amazon広告の特徴

Amazon広告ならではの特徴として、次の3点を挙げることができます。
 

  1. 潜在層へのアプローチに有効なAmazonのターゲティング
    • 一般的なメディアでは、ユーザーの検索行動やコンテンツ閲覧といった自主的な行動を伴うデータによってターゲティングしている。一方、Amazonには、ユーザーの自主的な行動だけでなく、特定のブランドや決まった商品をいつも購入している顧客層のデータが存在する。こうした“潜在的なニーズに密着したデータ”を所有しているAmazonのターゲティングは、潜在層へのアピールに有効である。

  2. Amazonのメディアパワー
    • Amazonの月間ユニーク訪問者数は約5,000万。多くの人がさまざまな目的で訪れることで、膨大なデータが保有されている。これを利用していくことが、さらなる認知拡大などの施策に活きる。

  3. 多岐にわたるAmazonサービス
    • ECにとどまらず、Amazonにはさまざまなサービスがあり、そこから得られる独自のデータを保有している。また、次図の“Google/Yahoo!とのユーザー重複率”でもわかるように、Amazonでしかリーチできないユーザーがたくさん存在している。Amazonを単純なECモールと捉えず、独自のチャネルとしてフル活用することが望ましい。
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以上のことから、岸本は「Amazonが保有する莫大な独自データを活用することは、今後のデジタルマーケティングでは必須になる」と、その重要性を語りました。


Amazonフルファネルアプローチ

では、具体的な事例を見ていきましょう。岸本は、「Amazonフルファネルアプローチ」の事例として、アサヒ飲料のラベルレスボトルシリーズでの取り組みを紹介。ブランド認知・興味喚起の施策で潜在顧客の発掘・育成に取り組む「宣伝部の領域」と、購買促進の施策に取り組む「営業部の領域」との一気通貫した施策を説明しました。

商材には、次の3点の課題がありました。

  • 認知に課題があり、新規獲得に苦戦している。
  • ラベルレスといえば「アサヒ飲料」とすぐに想起できるカスタマーを増やしたい。
  • 競合各社のラベルレスラインナップがAmazon内でほぼ出揃い、競争が激化している。

 

施策1:ブランディング用の動画広告をAmazon ADで配信(宣伝部領域)


上記の課題に対して行った施策の1つが「ブランディング用の動画広告をAmazon ADで配信」することです。その施策ポイントが以下になります。

  • 情報量が多い動画広告で認知獲得・興味喚起を行った。内容は、バリューをわかりやすく示した3タイプの動画とした。
  • Amazon独自のセグメントデータを活用して、ターゲットを主婦層や、家事・掃除の興味関心層などとし、より購買に近いユーザーへの認知度向上を図った。
  • Amazon内TOP面にも配信し、巨大ECモールAmazonをプロモーションの場として有効活用した。


「商品の購入や比較検討に近いユーザーへの認知施策の場として、YouTubeなどの動画配信プラットフォームではなく、あえて売り場に近いAmazonのTOP面を活用したことがポイントです。月間5,000万人の来訪者を誇るAmazonのTOP面に配信するだけでもかなりのリーチがとれるので、プロモーションの場として非常に有効な場だったと言えます」(岸本)
 

施策2:広告の遷移先をクーポンページに設定(営業部領域)


2点目は、広告の遷移先をクーポンページに設定した施策です。興味を持ったユーザーに、購買までのスムーズな導線を提供しています。

  • Amazonリテール側で実施している販促企画と同時期に広告を実施した。
  • 動画広告の誘導先に販促企画であるクーポンページを設置することで、即座に購買意向を促進し、購買への導線の確保を図った。


「動画広告で興味関心がリフトしたところで、さらにクリックアクションを起こした関心の強いユーザーへは、クーポン企画で購買意向を促進。ブランディングだけでなく、購買までを狙った施策となっています」(岸本)
 

施策3:動画接触ユーザーへのリターゲティング(営業部領域)


3点目の施策は、動画接触ユーザーへのリターゲティングです。

  • 認知が進んだユーザーに対し、獲得目的の静止画によるバナー広告をAmazon DSPで配信し、刈り取りを実行した。


「動画広告にはあらかじめリターゲティングタグを設置し、購買までの導線を複数に巡らせました」(岸本)
 

まとめ:Amazonにおけるフルファネルアプローチ


岸本は、「Amazonにおけるフルファネルアプローチ」のまとめとして次図を示し、認知から購買までの一貫した導線を引いておくことがポイントだと強調しました。

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TV×Amazon連動企画

瀬尾は、電通と電通デジタルが実現した独自企画として、「TV×Amazonの連動企画」を紹介しました。MBS/TBS系全国ネットで放送している番組「日曜日の初耳学」のインフォマーシャル内に、Amazonに遷移するQRコードを表示することで、認知から購買までを一気通貫させた新しい取り組みです。

  • 番組「日曜日の初耳学」(毎週日曜22時からMBS/TBS系全国ネット)と連動させたインフォマーシャルを制作し、番組のCM枠を使って60秒×3回放送した。
  • インフォマーシャル内にAmazon特設ページへ遷移するQRコードを設置。TVがもっている高いコンテンツ力と認知力を活かしつつ商品の理解促進を図り、さらにAmazonへの遷移によって購入までをシームレスに誘導した。


「今までTVのCMだけでは難しかった購入への導線、ECだけではなし得なかった高い認知、そしてインフォマーシャルによる動的な理解を促進できました。実は、TV番組のインフォマーシャル内でAmazonページに遷移させるQRコードの掲出は、本事例で初めて実現したこと。電通グループならではの施策だと言えます」(瀬尾)

なお、この番組が放送されているのは、ネットショッピングに利用されやすい時間帯。そのため、「単純な高い認知の獲得だけでなく、より購買につながりやすいモーメントだ」と、瀬尾は時間帯の重要性にも言及しました。
 

インフォマーシャル以外の導線も設置


また、TVからAmazonという導線だけでなく、次のような複数の導線も設置し、TVの影響で増加したトラフィックや興味関心をとりこぼさない仕組みをつくりました。
 

  • Amazon DSPを活用して、QRコードから遷移してきたユーザーへリターゲティングを実施した。
  • テレビで紹介されたという要素を含むバナー広告によって、インフォマーシャルを見ていない、あるいは見たがQRコードから遷移しなかったユーザーに向けての興味喚起を行った。

 

インフォマーシャル放映後、検索数が増加


以上の施策によって、瀬尾は「インフォマーシャル放映時には通常日対比で売上、PV数ともに伸び、放映後も売上、PV数がリフトアップしました」と紹介。Amazon内でも商品に関連するワードの検索頻度が上がり、インフォマーシャルの実施が、Amazonでの売上に影響を及ぼしていることがわかりました。

 

まとめ:TV×Amazon連動企画


瀬尾は、TV×Amazon連動企画での施策事例のまとめとして、次図を紹介。インフォマーシャル内のQRコードからAmazonに遷移させ、認知から購買まで一気通貫した導線を引き、さらに、Amazon DSPを活用して放映時のみならず放映後のユーザーの刈り取りも促進する仕組みをつくった重要性を語りました。

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FireTV広告事例

次は、「FireTVを活用した広告」の事例です。酒井は、本田技研工業VEZELでの事例を紹介する前に、まずはFireTVとは何かから解説しました。
 

FireTVとは

  • FireTVは、テレビのHDMI端子にさしてインターネットにつなぐだけで、Amazonプライムはもちろん、YouTube、TVer、Netflixなどの動画配信サービスを視聴できるデバイスである。
  • 月間アクティブユーザー数はグローバルで5,000万超、日本でも500万といわれ、今後も普及が加速すると見込まれている。
  • FireTVは、現在のストリーミングデバイスの中で唯一広告配信ができるプラットフォームである。


「コロナ下での巣ごもり需要として、サブスクリプションによる動画配信サービスを利用する人が増加しました。ユーザー数は地上波に迫る勢いになり、FireTVの利用者も増加しています。VEZELのCMはすでにTVで放映されていましたが、動画配信サービス需要が伸びているため、FireTVでの広告の実施が決定しました」(酒井)

企画概要


VEZEL施策での配信イメージは次のとおりです。

  1. FireTVの画面を開くと、トップ面にスポンサーの横長のバナーが出てくるので、ここをクリック。
  2. すると、全画面で約60秒の動画が配信される。 
  3. 配信が終了すると、続いて4つのバナーが横に並ぶのでいずれかのバナーをクリック。 
  4. 全画面で、クリックしたバナー先の動画が配信される。

 

広告視点から見たストリーミングメディアデバイス市場


では、広告市場として見た場合、ストリーミングメディアデバイス市場の規模はどの位置にあるのでしょうか? 酒井は、「確かに需要は高まっていますが、TVに比べると規模は小さいのが現状です」と言います。

「テレビの年間広告出稿額は、1兆円以上。一方で、ストリーミングデバイスの市場は約10億円なので、まだ広告規模ではこれからです」(酒井)

 

まとめ:FireTV広告事例


そして、次図を示しながら、「今後はFireTVをテレビCMの補完の一手段として考えていくことが重要になってきます」と実施ポイントをまとめました。

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Amazon内ライブコマース

酒井が紹介した「Amazon内ライブコマース施策」は、Amazonとして世界初の施策です。動画のライブ配信と物販を組み合わせたライブコマースは、今後、さらなる市場拡大が期待されています。

企画概要


ライブ番組「Amazon Pet Dayパンサーと、わんにゃんショッピング」の概要は以下になります。

  • Amazonとして世界初となるライブコマースの第一弾として、ペットカテゴリーに限定した施策を展開。
  • Amazon上の特設オンライン会場でライブ番組を配信。
  • 生配信中に紹介される商品を、LP内で番組を見ながら購入することも可能。


メインイベントとして芸人のパンサーを起用し、動物を紹介しながらペットの商品を紹介する内容で、企画ポイントは次の2点です。

  • ペット愛に溢れるスタッフで番組を盛り上げる。
  • 商品サポーターが飼い主目線で応援する。


「ペット好きのメンバーが、クイズなどをしながら商品を紹介する内容。犬猫好きによる、犬猫好きのための通販番組。犬猫ワールド全開で、新感覚のライブコマースをお届けする内容としました」(酒井)

なお、番組内ではスポンサーコーナーを設けて、訴求する商品の魅力についてポイントを絞ってしっかり解説しました。

ライブ配信前後もLPを活用


ライブ配信の有効性を高めるための施策も行いました。

  • ライブ配信当日は、AmazonのTOP面をジャック。Hero1(H1)広告を実施した。
  • Amazonのページに集客をするために、Amazon内外での広告をAmazonDSP経由で配信した。 
  • ライブ配信前からLPを公開。LPでは、ライブ配信後もアーカイブ配信を実施した。 
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今後のライブコマース市場


今後のライブコマース市場について、次のような数字を挙げました。


最後に酒井は「現在の日本のライブコマース市場は、中国と比べると若干遅れをとっています。一方でEC需要は年々拡大しているので、今後のライブコマース市場は拡大すると予想されます。電通グループでは、Amazon社と協業してライブコマース施策を拡大し、第2弾も予定しています」とまとめました。

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