2020.10.07

オンラインならではのカスタマージャーニーを描くには? 〜ニューノーマルのCXではフェーズの固定概念を超えることもあり得る〜

新型コロナに端を発する生活者の外出控えやeコマース利用頻度の高まりは、オフライン主導でマーケティング施策を展開してきた業界に大きな変革を迫っています。
これを受け、認知から顧客のロイヤル化をオフライン主導で捉え、豪華さや豊かさを体感することでそれを達成してきたファッション・コスメブランドは、いち早くウィズコロナ、アフターコロナに照準を当てた新たな施策を展開し始めました。

オフラインで認知〜顧客のロイヤル化までを完結するには?有名ブランドの施策から見るCXのニューノーマル」で紹介した有名ブランド各社の事例からは、オフラインの施策をオンラインに置き換えるだけではないクリエイティブな発想が感じ取れたことでしょう。また、「ソーシャルコマースは従来の認知から顧客のロイヤル化のフェーズを“順番通り”に体験しないケースが増える」との示唆も得られたかと思います。

では、オフラインでの知見や経験という“枠”を越えて、オンラインならではのカスタマージャーニーを描き、優れたCXを実現するにはどうすればいいのでしょうか? 本稿ではそのことを深掘りしていきます。

オンラインならではの良さに着目してみよう

電通アイソバー(現 電通デジタル) エクスペリエンスデザイン本部 シニアヴァイスプレジデント 潮田 健一郎は、「まず、オンラインの良さは物理的な距離をショートカットできることにある。これまでオフラインでは、認知から上顧客になるまで、どうしても時間がかかることがあった。コスメなら、店頭に行って美容部員の方とコミュニケーションし、それでも決められないから試供品もらって帰り、自宅で試して、気に入ったら再び店舗を訪れて購入する、という流れは“当たり前のこと”と捉えられていたはずだ」と指摘した上で、「オンラインでは、美容部員の方が解説したコンテンツだけでなく、『自分が気に入っているインフルエンサーが“代わりに試してくれて”おすすめだと言っているから買ってみよう』という流れでオフラインの時よりも検討フェーズに時間をかけずに購入フェーズにエスコートする可能性もある。しかも、ソーシャルコマースの仕組みが導入されていれば、購入の手間をグッと短くすることも可能だ。ソーシャルメディアという生活者の接点にコマースの機能を追加するなどしてプラットフォーム化すれば、オンラインだからこそ実現できることはかなり増える」とし、「生活者にとってどれだけ便利でスムーズなコマース体験を達成できるかという発想が重要になる」と、オンラインならではの顧客体験(CX)のポイントを述べました。

ソーシャルメディア上で興味関心が湧くものを見付け、「いいな」と思ったらすぐにバーチャル体験で試せて買える、というオンラインならではの行動は、時間的・物理的な障壁(Friction)を越えることになるでしょう。

このような認知から顧客のロイヤル化のフェーズを飛び越える現象について、潮田は、
「インフルエンサーがきっかけで購買フェーズからカスタマージャーニーが始まることも、オンラインならではだと言える。ただしその場合、インフルエンサーのファンであってブランドの顧客ではないと考えられるので、自社の顧客(ファン)になってもらうにはどうするべきか? を考える必要がある。
これまで考えられてきた認知・検討・購買・顧客のロイヤル化のうちどこかのフェーズをショートカットしたり、逆戻りすることも含めてカスタマージャーニーを考え、テクノロジーを生かして疑似体験のような施策を組み入れつつオンラインならではの顧客体験(CX)をカスタマージャーニー目線でやっていくことが重要だ」としました。


プラットフォームを活用したこれからのCX全体像を描くためのアプローチ

ソーシャルメディアというタッチポイントを基点に、商品とユーザーが偶然出会える機会を促進してワンクリックでそのまま購入できる究極にストレスフリーで一貫した購買体験は、「フリクションレスな顧客体験」であり、オンラインだからこそ可能な施策だと言えます。

しかし、そうした理想的なCXをデザインするには、ソーシャルメディアの機能はもちろん、AIやVRなどのテクノロジーの活用方法だけでなく、MAツールとソーシャルメディアを連携させ、あらゆる顧客接点でデータを活用することで1to1のエクスクルーシブな体験やコミュニケーションを実現できるように環境を整える知見と技術も欠かせません。
また、その前段階として、顧客に向き合い、自分たちの顧客はどのような顧客体験(CX)を望んでいるのか? 改めて明らかにすることも必須です。

潮田は、「ニューノーマルのCX実現に向けたアプローチとして各社にとってどのような姿が最適か考えることは非常に重要だ。電通アイソバー(現 電通デジタル)では『4つのD』を用いてクライアント企業のCX開発・設計をサポートしている」とも指摘しています。

Discover・Define・Design・Deliverの頭文字をとった「4Dアプローチ」は、それぞれ次のステップを意味します。

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・Discover:ヒアリングや行動分析、リスニング、あらゆるデータ分析のほか、顧客の観察など多角的なアプローチで徹底的にエンドユーザーのインサイトを明らかにしていきます。同時に、マーケティングや営業、広報や製品企画など、部署の垣根を越えて、クライアント企業の幅広い従業員からヒアリングを行ない、現状を把握します。また、当然、競合企業やブランドの現状について深く調査を行ないます。
 
 ・Define:Discoverで得られた情報を受け、目指すべきCXの全体像を定義していきます。例えば、エンドユーザーに対してどのタッチポイントを手厚くしていくか、必要なプラットフォーム何か、新たに加えるべきか、取り組みの優先順位を明確にします。これにより、より早く充実したCXを提供することができます。

・Design:Defineの結果を受けて、あらゆるデザインを行ないます。ここは、電通アイソバー(現 電通デジタル)の強みである、クリエイティビティとデータ、プラットフォーム、テクノロジーが持つ力をしなやかに繋げ、ひとつひとつの体験へと具現化する重要なフェーズでもあります。
タッチポイント別エクスペリエンス設計やクリエィティブ開発、チャネルミックスプランほか、多角的な検討を重ね、プロトタイプ検証やユーザー検証に至るまでを行ない、取り組みの輪郭を明確にして計画をプロジェクトとして前進できるようにします。

・Deliver:Discoverから始まった一連のCX Designを実行に移し、KPIに基づいて「自分たちの顧客にとって最良のCXが提供できているか?」を評価します。結果を検証し、自ら課題を抽出してプロジェクトをさらにブラッシュアップしていきます。

他方、ニューノーマルに向けて課題が山積する中で、「オンラインの重要性は理解しているけれど、どこからどう手を付けるか? そう長く時間をかけられそうにない」と悩まれる企業や担当者は少なくないと考えられます。

これについて潮田は、
「最初から大掛かりな転換をするのではなく、『安定化とリカバー、そして成長』という大きく3つのフェーズに分けて対応してみるのはどうだろうか? ひとつ目は、新型コロナによる影響からの立ち上がり、感染回避や社員・スタッフのケアをするタイミング。ここにはテクノロジーも必要となるだろう。2つ目は、成長のための取り組みであり、展開できなくなったリアルでの施策をどうデジタルでリカバーするか? を検討し、ブランドを従来の水準に戻す期間だ。そして、最後に中長期を見通してニューノーマルにふさわしい新たなCXのための対応を行なう、という流れが考えられるだろう」としました。

Zoom

ニューノーマルにおいて、ソーシャルメディア領域は、認知フェーズだけでなく購買やロイヤル化までを見据えた重要なプラットフォームになると考えられます。もちろん、そこにはCRMやコマース、MAツールとの連携も欠かせません。

このようなクライアント企業が抱える課題に対し、電通アイソバー(現 電通デジタル)は「CX Design Firm」として、クリエイティビティ領域が得意とする「Motivation」とテクノロジー領域が得意とする「Frictionless」の両軸でCXをデザインし、優れた成果をもたらしてきました。

数多くの実績にもとづいたソーシャルメディアにおける生活者の行動に関する知識と、進化・拡張し続けるソーシャルプラットフォームへの知見を活用した統合的なCXデザインで難度の高い課題解決に向けて伴奏支援いたします。

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